先のエントリで、
将也が過去の硝子いじめに対して明確に謝罪することが、将也の再生のためのもっとも重要な一歩だ、ということを書きました。
ここでは、そう考える理由について書いていきたいと思います。
1)将也にとって、硝子と向き合うために不可欠。将也はこれまで、「硝子をいじめた過去」からずっと逃げてきていました。
それは、
過去の自分を思い出すたびに、耐えがたい自己嫌悪にさいなまれ、「過去の自分を殺してしまいたい」とすら感じてしまうからです。
第3巻第23話でも、せっかく「あなたのことがもっと知りたい」とまで硝子に言われたのに、実際にはまったく会話することができず、硝子渾身の「うきぃ」も聞き逃してしまいますが、それも、その瞬間に将也が「過去の自分への自己嫌悪」に襲われていたからでした。
だからこそ、将也は硝子にしっかりと過去の行いを謝罪し、それに対する硝子の「聲」を受け止めて、過去を清算したうえで硝子との「これからの関係」を築いていかなければならないわけです。
第43話で、
転落中の将也が心のなかで硝子に謝罪したら、すぐにそのあと、素直に自身のなかにある硝子への恋心を自覚できたことからしても、「硝子への率直な謝罪」が、結果として二人の関係を大きく前進させることは間違いありません。
2)島田らとの和解のためにも不可欠。第50話でも植野の回想として出てきましたが、島田らが将也をいじめることを決めた最大の理由の1つは、学級裁判で、明らかに将也が主犯であるにも関わらず、自分は非を認めずに周囲の人間を名指しまでして巻き込もうとした、将也の身勝手な態度です。
そのロジックは、島田サイドから見れば非常に明確だったのでしょうが、将也の側からは「なぜ島田らが手のひらを返したように冷たくなりいじめを始めたのか」が理解できなかったようです。
恐らくですが、将也にとっての「正義」とは、いじめを断罪されるならいじめに参加した全員が断罪されるべきであり、もし自分だけが断罪されるとしたらそれは不公正である、といったものなのでしょう。
ですから、学級裁判で「自分だけが断罪される」ことは「不公正」なことだから、ちゃんと一緒にいじめに参加していた人を指摘して、みんなが「公正に」断罪されるべきだと主張した(そうならないなら、自分だけでも謝罪すべきだ、という発想にそもそもいきつかない)のであり、将也にとっては「正義を主張した」つもりだったのだと思います。
でも、それは島田らの側からは、「ありえないほどの不正義」に映っていたわけです。
この分かちがたい溝こそが、将也と島田らを引き裂いた最大の要因の1つだったのではないかと思います。
ですから、
将也が改めて過去に向き合い、自分の非を認めること、さらには「島田らが将也を許せないと思った理由」を将也が知り、「自分はなぜあのとき島田らにあれほどまでに冷たく突き放されたのか」の理由を知ること、そういった一連の「過去の洗い直し」が、島田らとの和解のために不可欠だろうと思うのです。
「和解」は、関係修復とイコールではありませんが、過去を清算し、未来に向かうために必要なことです。
3)将也がとりつかれている人間不信を克服するためにも不可欠。学級裁判以降、島田らにあっさりと手のひらを返されて友情が崩壊したことは、将也にとってとてつもなくショッキングなできごとだったと思います。
そして、そこから将也が立ち直ることができず、高校で回りの人間全員に×印をつけてしまうほどに「病んで」いってしまったのは、簡単にいってしまうと
「なぜ自分が信じていた友情があっさりと壊れてしまったのか、その理由がわからないから」ということが最大の理由だと思います。
理由がわからないから、失ってしまったものをどうやれば取り戻せるかもわからず、やがて将也は、当たり前の友情や暖かい人間関係ですら「自分には永遠に手に入らない、諦めなければならないもの」と考え、極端な孤立状態に追い込まれていってしまうわけです。
ですから、
硝子への謝罪をつうじて将也が過去と向き合い、その態度を島田らにも示すことで島田らと和解し、「島田らが将也を突き放した心情、理由」を知ることができれば、将也をさいなむ人間不信の根本原因を癒すことができるはずだ、と思うのです。
いかがでしょうか。
つまり、
「まず過去の行いを謝罪すること」ができれば、硝子との関係、かつての仲間たちとの関係を修復・和解に導くきっかけとなるだけでなく、将也の人間不信を克服するきっかけにもなる可能性が高いわけです。
ですから、「将也が謝罪すること」、これこそが将也にとっての「再生」の第一歩になるだろう、と思うのです。
第50話時点で昏睡中の将也ですが、目覚めたあとは、何よりこの「謝罪がいつできるか」が、最大の伏線回収だと思っています。