第57話の最後で、将也は、橋メンバーだけでなく、クラスメートや担任の先生のバッテンを次々と外していきます。
中学のとき、勇気を出して限定盤CDの話題で島田に話しかけたにも関わらず、心ないことばを返されて傷ついて以降、将也は心を閉ざし、人の顔を見ず、人の声を聞かない人間になってしまいました。
それを象徴的に表したのが、周りの人間の顔につけられたバッテンだったわけです。
今回、久しぶりに学校に来た将也は「ぜんぶ見る ぜんぶ聞く」と決意し、勇気をもって橋メンバーと対話し、全員のバッテンをとり、そして文化祭で出会うクラスメートともしっかり向き合い、バッテンを1つずつ取っていくわけです。
そんななか、将也の耳に飛び込んできた声。
「よく 学校 来れるよなぁ」

第57話、15ページ。
これまで将也がずっと恐れていた(であろう)、ネガティブな「声」でした。
でも、将也はここでこのことばをしっかりと受け止めます。
それはちょうど、前半の橋メンバーとの対話の際、小競り合いを始めてしまった川井、植野、佐原とのやりとりを見て、佐原から「変わってなくてごめん」と言われたときの将也の様子に、よく似ています。

第57話、11ページ。
前半のこのやりとりのとき、将也はそれを「変われないこともある」と受け止め、そして一気に残りの橋メンバーのバッテンをすべて外しました。
そして後半、どこからともなく聞こえてきた、このネガティブな声を聞いて、将也は、同じようにこう思ったのでしょう。
俺のことを悪く思う奴もいる。
と。
そしてそれを、当たり前のこととして(これまでは逃げ続けてきましたが)今度こそ受け止めることができたのだ、と思います。
「変われないこともある」ということを自然に受け止められたことで、橋メンバー全員のバッテンをはずすことができたように、「俺のことをネガティブに思う奴もいる」ということを自然に受け止められたことで、将也は、クラスメート全員にバッテンをつけて守らなければならないものがなくなったことになります。
だから、ここでバッテンをすべて外すことができたのだ、と思います。
この場面でのクラスメートとのやりとりで、将也を歓迎する声だけでなく、「ネガティブな声」もしっかり将也に届いたことは、とてもよかったですね。
「ネガティブな声」を聞いて、それでも動じなかったからこそ、もう大丈夫、今後多少の逆境に陥ったとしても、バッテンをつけてしまうところには戻らないだろう、と、将也自身も読者も確信できるようになったと思います。
将也は、ようやく過去の呪縛から解放され、自由になった、と言えると思います。
ラベル:第57話
