それは、
神の視点での描写
です。
花火が上がっているのを、第39話でバラバラになってしまったかつての橋メンバーがそれぞれ眺めて(眺めてない人が約1名いますが)いるところが描写されていますが、このようなシーンが同時に見える、というのは、「神の目」からでしかありえない話です。

(第41話、16ページ)
あえて別の言い方をするなら、「花火からの視点」とはいえるかもしれませんが…。
もともと、「聲の形」の連載版では、作者自身がインタビューで語っているとおり、視点をあえて将也からのものに絞り込むことで「他人の気持ちがいかに分からないか」という側面を強調しています。
「クロノ・トリガー」のマンガを描いていました「週刊少年マガジン」で新連載『聲の形』大今良時に聞く2
───『聲の形』の連載にあたり、読切と何か大きく変えたところはありますか。
大今 読切ではとにかく必要最低限の要素──それぞれの登場人物の感情がどう動き、何がどうなったという“情報”を作品の時間軸に合わせてひとつひとつ描きこんだり、コンパクトに情報を伝えるために、聴覚障害者の西宮硝子視点のシーンも描かなければならなかった。連載では視点をなるべく主人公の石田将也にしぼって、理解できない相手との間でどうやって理解を深めていくかということに焦点を当てるつもりです。“読み味”は読切と少し違うかもしれません。
───視点を固定した狙いはなんでしょう。
大今 これまで読んでいない人をどう引き入れるかということを考えた結果です。読切で描き上げたものを連載にするというのも、リメイクといえばリメイクですし、同じことを描きながら、いままで興味を持ってもらえなかった人を引き込みたい。それでいて読切で知ってくれたたくさんの読者にもオトク感というか、新鮮な印象で読んでもらえたらいいですね。
とはいえ、これでは硝子サイドの物語が十分に語りきれない、ということで、結絃だけは「(まんがのメタレベルでの)特権キャラ」として扱われ、結絃視点の描写がときどきはさまれていたのですが、それでもこの2人以外の視点から何かが描かれるということはこれまでは原則ありませんでした。
(そのやり方でかなり無理が出たのが「葬式編」でした。ここは手紙を使った文字での説明のオンパレードで、西宮祖母視点や母視点が使えない苦しさがにじみ出ていましたね。)
ところがここへきて、突然の「神の視点」。
将也、結絃以外の人物の視点どころか、超人的視点がいきなり登場しました。
作者の意図は分かりませんが、この1ページで一気に将也の存在が(第一人称的な存在から)第三人称化、相対化されたように感じます。
つまり読者には、「その花火大会の場に島田がいるぞ」とか「真柴は花火見てないぞ」とか「もしかすると植野に遭遇するぞ」みたいな「世界のこと」が分かってしまって、その「世界」のなかに、将也もたくさんの人の一人として存在している(だけ)、という見え方になってしまっているわけです。
これで、例えば次の41話で植野か島田に出会った将也がびっくりしても、読者は「神の視点」を既に得ているためにびっくりしないわけで、今回の「神の視点描写」のインパクトは結構大きいように個人的には感じますね。
ラベル:第41話

植野の父か兄?顔のつくりが石田にちょっと似てる?
だから石田があれだけ好きなのか?と想像力を掻き立てられますね。
川井や植野の家族構成がわかったり(どちらも父親らしき人物が描かれ、想像以上に良好そうな家庭ですね)、一人寂しそうに花火を見つめる永束や佐原は一人っ子ではないかと想像できたり、島田は本格的にたこ焼き屋さんになりそうだったり、真柴だけは花火を見ていないのが気になったり…。
でも、この一連のコマ、将也がみんなどうしているか想像しているコマともとれませんか?
植野や川井は幼なじみなので家庭のことも大体知っていての想像、永束は寂しがっているだろうという想像、佐原は真剣に悩んでいるため一人だろうという想像、島田はたこ焼き屋さんのイメージが強すぎて思い浮かべ(この解釈が一番無理あるのは承知の上です)、真柴が一人うつむいて歩いている姿なのは、将也にとって一番わからない人が彼であるという象徴かなあ…と、私は思いました。
コメントありがとうございます。
今回の描写は、葬式編でものすごくめんどくさかった、将也・結絃以外の人間の描写を、たった1ページで一気にまとめてやってしまった、というページでもあるのかなと思っています。
これで、一応植野の家族編とか川井の家族編、佐原や永束のプライベートみたいな話を(乱暴ですが)やらなくても、何となくそのあたりが伝わってしまいましたから。
そういう目的もあって使われた「禁じ手」だったのかもしれませんね。
ところで、これが将也の心象風景だという説は、私は違うと思います。
なぜから、そうだとすると、それぞれのメンバーの顔には×がついていないとおかしいからです。
ご指摘ありがとうございます。