これ、エントリとして書くかどうか迷ったのですが、たぶん第51話から53話くらいの展開について議論していく際に、この部分について私がどう考えてエントリを書いているのかを示しておかないと、個々のエントリごとに微妙に火種がくすぶりそうなので、独立エントリとして自分なりの立ち位置を示しておくことにしました。
端的にいって、第53話で、
1)将也が硝子と同じ夢を見たこと。
2)将也が橋で泣いている硝子を夢で「透視した」こと。
3)その泣いている硝子の服装が、将也が見ていないはずのものだったこと。などは、どれも「超能力的」であるように見えます。
こういった展開をみると、聲の形はオカルトまんがになってしまったのか、だとすればなんでもありだから「考察」しても仕方ないんじゃないか、といった意見も、まああると思います。
一方、これらの一見オカルト的な展開も、さまざまな考察を重ねることで、(多少強引になるでしょうが)オカルト的な前提をおかずに、「リアル路線+偶然」で説明することも不可能ではないと思います。
でも、そういった態度は、「オカルト的展開を無理に否定してリアル路線で読むという苦しい態度」に見えるということもあると思います。
ただ、この点について、私のポジションははっきりしています。
フィクションなんだからまずは全肯定。
オカルト要素があってもなくても構わないし、それも含め純粋に「作品の要素」として楽しみたい。
そのうえで、最終的にはそれによって表現されたものに対する「好き嫌い」の問題。(ただし「読み解き」は好き嫌いとは別)少し前から書いていましたが、
もともと、このまんがでは「リアル路線」とはちょっと違うセカイが描かれている、と思ってきました。
具体的には、ものすごく少ない人数で物語が回っていき(将也転落を救出したのが島田と広瀬、とか)、「偶然の出来事」が割と当たり前に発生する、私たちが生きている世界とは微妙に違うパラレルワールドが舞台の物語だという認識です。(ゴールデンウィークもありませんでしたし、まだ肌寒い春でも平気で川に飛び込んだりもしていました)
ですから、ある場面で超能力っぽい展開が出てきたとして、それをそのまま「超能力」として受け止めてもいいですし、そうではなく「偶然の出来事が当たり前に起こるパラレルワールドで、また素晴らしい偶然が起こった」と読んでも、どちらでもいい、と思っています。
考察についても、
1)オカルトを前提として素直に読む。
2)オカルトは前提にしないが、「偶然の出来事がよく起こる」という「聲の形的パラレルワールド世界観」を前提にして深読みする。
3)あえてリアル世界観を前提にして「こんなこと起こらねーよ」と笑い飛ばす。上記の1)から3)を組み合わせたり使い分けたりして、考察という営みそのものを楽しんでいきたい、というのが当ブログでの私の考え方です。
つまり、「この場面をオカルト的に読むなら素直に○○だけど、理屈をつけて読むなら××と考えれば説明がつけられる、でもまあどっちも強引だよなあ(笑)」みたいな読み方をするのが、私なりのこの作品の「オカルト的展開」の楽しみかたになります。
オカルト的展開を否定することもしませんし、オカルト的に見える場面にあえて理屈をつける、という読み解きを楽しむことも否定しません。「さすがにここでオカルトになっちゃうのは強引だ」と笑うこともしますが、それは作品叩きとしてではなく、しっかり「読み解き」をやった後でのツッコミとして語りたいと思います。
ちなみに
第53話についてですが、大今先生は基本的に「オカルトでない前提でも読みきれる」ラインをぎりぎり走っているように見えますし、むしろそれを楽しんでいるように見えます。
そもそも将也自身に「グーゼン会えるなんて出来過ぎだし?」とかまんがの中なのにメタ的なことを言わせてますし、硝子を何話も使って「ユーレイ風」に演出し、将也を白装束で登場させて二人を会わせる、なんてのも、オカルトオチを嗤うギャグにしか見えません。
第53話、15ページ。
また、今回の展開は、ふたりの出会いをドラマチックかつスピーディ(かつコミカル)に演出するために選択されており、翌朝普通に病室で出会うという(合理的だけれども恐らく退屈な)展開と、本質的には何も変わらないものでもあると思います。
ですから、第53話についていえば、納得できる形で「奇跡」が演出された、そう素直に思っています。
なお、このブログは、「読み解き」をメインとしてやっている「ファン」ブログです。(読み解き=作者がそれぞれの場面で何を表現しているのかを、作品内の情報から推理していくことです)
作品の好き嫌いの議論を否定するものではありませんが、例えばオカルト的であることを理由とする「作品叩き」「作者叩き」「キャラクター叩き」は、当ブログではご遠慮いただいていますので、ご了解いただいたうえで、楽しく皆さんと議論していければと思っています。
よろしくお願いします。