2014年05月01日

第21話・大事なことなので2回聞いた植野

「聲の形」の表現で、極めて特徴的なのが「呼応」「対応」「相似」「対称」とでもいうべきもので、「同じような描写が、登場人物や人間関係、意味を変えて繰り返し登場する」というものです。

ちょっと思い出してみただけでも、

・硝子と将也の時をこえた「友達に…なれるか?」
・第2巻冒頭と巻末の結絃の「オレはこいつが嫌いだ」
・さらに、その内側にはさまれる、将也の(巻頭と巻末の)「俺は俺が嫌いだ」
・硝子の過去を取り戻したい将也と将也の過去を取り戻したい植野


などなど、いくつも思い当たります(たぶんもっとたくさんあるはず)。

そんな中でも、「植野回」といわれる第3巻第21話に、非常に興味深い「相似・呼応」関係がありますので、今回はそれについてとりあげたいと思います。

第21話で、(それまでの何度かの再会の試みが失敗した後)川井と結託して、強引に将也との再会を果たした植野は、これまた無理やり乗り込んだ自転車の荷台から、こんなことを将也に聞きます。(第3巻119ページ、第21話)



「石田さ 私のこと嫌い?」

そして、硝子と遭遇し、修羅場があって、そのあと自宅まで将也に自転車で送ってもらった植野は、別れ際にふたたびまったく同じことを聞きます。(第3巻140-141ページ、第21話)





「石田 私のこと嫌い?」

同じ人間が、同じ人間に対して、同じ日に、まったく同じことを聞いています。
ところが、それに対する返事がまったく違います。

(最初の問いに対して)「……まあ別に…なんとも…」
(2回目の問いに対して)「嫌い」

なぜ答えが変わったのか、それはもう明らかですね。
将也にとって、再会したときの植野は「ただの過去の人(まあ相当気にはしていますが)」で、特段の感情をいまさら持つような相手ではありませんでした。
それに対して2回目に聞かれたときには、まさに「いま」、将也にとって大切な人である硝子に対してひどいことをし、将也の人間関係まで笑い飛ばした、そして「顔も見るだけで頭痛くなる」(第3巻136ページ)存在に変わってバッテンがついた(ちなみに、バッテンがついてなかったのに後からついたのは現時点で植野が最初で最後と島田だけ)植野は、「いままさにネガティブな感情を持っている相手」に変わった、ということです。

ここで面白いのは、対する植野のそれぞれの答えに対するリアクションですね。

最初の答えには「ふーん…私の知ってる石田は はっきりと「嫌い」って言っちゃう奴なんだけどなー」と、将也の答えに満足できない様子を示している一方で、2回目の答えにはとても嬉しそうな微笑みを返しているのです。

これはなぜでしょうか?

もちろん、最初の植野の返答からわかるように、2回目の将也の答えを「自分の知っている石田が戻ってきた」と感じた、ということもあるでしょう。
植野にとっての「石田」とは、裏表や遠慮のない、思ったことをストレートにぶつけストレートに行動する痛快な人物であり、それこそが魅力だと感じていたのでしょうから。

そして、それとは別のもう一つの「解」として、「将也にとって、自分が『過去の存在』から『現在の存在』に変わった」と実感できたから、ということがあると思います。
将也の最初の返答からは、目の前にいる自分に対し、積極的な感情をもっているとは思えない、もはや「過去の人間」として取り扱われているという印象しかもてません。
それに対して、目をしっかり見据えて「嫌い」と言い切った(2回目の)将也からは、あらためて、高校生となったいまの将也にとっての「現在そこにいる人間」としての感情をぶつけてもらえた(ネガティブなものであっても)という印象を持つことができます。

「相手にされていない」よりは、それがたとえネガティブなものであっても「相手にされている」ほうが関係再構築への距離が近いことは間違いのないことです。
植野は、この「大事な質問」を2回することで、また2回目に期待どおりの答えを得られたことで(ライバルになりそうな硝子との関係もまだ「恋人」ではなさそうだと分かったこともあり)、「昔好きだった石田」との関係をふたたび作れるかもしれない、という前向きな気持ちにいたったのだと思います。

なお、この第21話のやりとりによって植野が得たであろう「将也に対する認識」こそが、「植野がなぜ再会後、こりずに将也を熱心に追いかけているのか」という「なぞ」を解く鍵になると思うので、改めてエントリ書きたいと思います。

ついでに言っておくと、久しぶりに再開して、いきなり最初の問いかけが「私のこと嫌い?」なんていうものだ、という時点で、植野の将也に対する恋心はすでにものすごくはっきり透けて見えていますね。
このあたりの描写も実に心憎いところです。
ラベル:第21話
posted by sora at 10:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする

2014年05月02日

第23話・硝子のお返しのプレゼントは何?

これは非常にポピュラーな「謎」のようですので、ほんとうは5巻が出るまで待とうかと思ったのですが、早めに取り上げたいと思います。

第23話で、硝子が「猫ポーチ」へのお返しとして、将也にプレゼントを渡すシーンがあります。(第3巻172~173ページ、第23話)



将也は「いやあ 気に入ったよ ありがとう」とか言いながら、実際にはこれが何なのかがまったく分かっていません。
読者も、このお返しが何なのか、そのうち本編で明かされるんだろうと思って読んでいると思いますし、本編でも将也はこれが何なのか硝子に聞こうとしたりするのですが結局かなわず、なんと現時点の第35話までの間で、この謎は明かされずにここまできています。

で、これが何なのかということですが、「ガーデンピック」「プランターピック」と呼ばれる、庭やプランターに挿して彩りをそえる、ガーデニングアクセサリーです。

いくつか売っているのを見かけましたので、せっかくなのでご紹介。






まあ、「分かりにくいプレゼント」であることは間違いありませんね。
なぜこんな「分かりにくいプレゼント」を送ったのか、ということについては、こちらの記事でも少し触れていますが、改めて別エントリで書こうと思います。

ちなみに、このガーデンピック、なぜか永束が食いついていて、第24話では「かんざしだろ?」とか言いながら自身のうんこ頭に挿していますし、第33話では、映画のプロットのなかで、敵を倒す武器として使っています(笑)。(第33話、2ページ)



まあ、この「武器」で、植野とおぼしき「キャットガール」とその取り巻きを倒そうとしているわけで、ある意味「正しい使い方」になっているような気もします(笑)。
ラベル:第23話
posted by sora at 09:29| Comment(5) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする

2014年05月04日

今夜は、「うきぃ」の日と同じ月が見られる日です!

月ネタを引っ張ります(笑)。

6月3日と推定される「うきぃ」の日、実際には将也が見あげた月の月齢は5.3だと解析しましたが、本日5月4日の月は、東京で月齢5.2、つまり「うきぃ」の日とほぼ同じ月が見られる日ということになります!

さっそく撮ってみました。


クリックで拡大できます。

「うきぃ」の日に将也が見あげるであろう月はこんな月なんだな、と思いをはせながら空を見あげてみるのはいかがでしょうか。

私のほうも、先日のコラでさらに遊んでみました。(上記の月の写真に差し替えてみました。)



ちなみに、月の入りが22時48分ということで、もうすぐ見えなくなりますから、見たい方は急いで下さい(笑)。(逆にいうと、夕方6時ぐらいならとても高いところに見ることができました。)

また、今回の月の写真撮影には天体望遠鏡とコンデジを使い、「コリメート法」という撮影方法で撮影しています。こちらについてもし興味がある方がいらっしゃったら、私が別のブログで書いた、こちらの記事もご覧ください。
ラベル:第23話
posted by sora at 20:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする

2014年05月07日

植野の取り巻き「健脚コンビ」の正体は?

植野についてはものすごく謎が多いですが、そのなかの1つで、まだ伏線回収されていないものがこれですね。
第3巻109ページ、第20話で、将也のメアドを渡すよう植野から脅されている永束の前に現れる、ガラの悪そうな2人組、「健脚コンビ」です。



そもそも、こんなあからさまに勉強してません的なキャラクターが「健脚」なんていう古めかしい単語をいきなり発すること自体が「なぞ」と言えますし、植野を下の名前で呼び捨てにするところからはかなりの親しさを感じさせます。

ところで、この「健脚コンビ」ですが、実は小学生時代のデラックスの取り巻き(というか仲間)と同一人物じゃないか、という説が根強くあったりします。
彼らは第2巻118ページ、第11話の結絃の回想に登場します。



この「結絃の回想」は、時系列的にみると将也のいた小学校に転校してくる直前の、硝子が「第二小学校」にいた時期のことと思われます。
デラックスの「取り巻き」とよく言われますが、実際にはデラックスはかばん持ちをやってるのでこの3人の中では一番カーストが下だと思われます。(なので、デラックス事件もそういう意味では微妙な感じになるわけですね。)

そして、驚くべきことは、この小学時代のデラックスの仲間2人の服装と、高校時代の「健脚コンビ」の服装が非常によく似ているということです。
これが、「健脚コンビ=デラックスの取り巻き」説の最大の根拠だと思います。

それと、もう1つ根拠があって、植野のバイト先の「にゃんにゃん倶楽部」、永束と結絃が気軽に行ける場所にあるということから、将也や硝子の地元側のエリアにある場所で、植野の高校側のエリアではない、ということが推測されます。

だとすると、「デラックスの仲間」と「健脚コンビ」も、住んでいるエリアが同じということになって矛盾はなくなるわけですが…

こんどは逆に、植野と健脚コンビはどこでどうしりあったどういう関係なんだ、ということが謎になってきますね。(まあ、真面目に考えれば、もし本当に同一人物なら「中学時代に知り合った」ということなのでしょう。)

まあ、とはいえ、私はこの「健脚コンビ=デラックス仲間説」については、正直、懐疑的ではあります。(そこまでご都合主義に作らなくてもいいだろう、という。)
ラベル:第11話 第20話
posted by sora at 07:52| Comment(1) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする

2014年05月17日

硝子の食べ物の好物はなに?

さて、私のカレンダーによると、明日は将也と永束が佐原に誘われて硝子とカラオケに行く大切な日ですが、それに関連するネタです。

硝子が好きな食べ物はなんでしょうか?

答えは「ハンバーガー」らしいですよ。

最大のヒントは、まさに先に掲げたカラオケの日に、佐原が直接硝子に聞いています。
第3巻47ページ、第17話で、カラオケに向かう途中の会話です。



佐原「あっ そういえば お昼 何食べたい?」
硝子(パ)
佐原「私も好き~~~!!」

硝子の手話、後ろからのアングルで微妙に見えませんが、どうやらこちらでも紹介されているとおり、「ハンバーガー」の手話のようです。
http://www.syuwabenkyokai.jp/syuwa_words/2008/02/post-c42d.html#heading6

これ以外には、第2巻108-109ページ、第11話で硝子と結絃が入浴しているお風呂のおもちゃにハンバーガーらしきものがあったり、



第4巻収録予定の第30話「支え」で、結絃がハンバーガーを持って帰っている(最後のコマで硝子に渡しているようにも見えますが、これはどうか分かりません)、など、ハンバーガーと硝子のつながりを示唆するこまがあちこちに散りばめられています。

天使とか聖人とか称される硝子ですが、食べ物の好みは意外にも庶民的ですね。

ちなみに、聖地巡礼隊の皆さんの調査によると、カラオケとバーガーショップは同じ場所にあるようですよ。



posted by sora at 15:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする
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