はい、これは絶対に1つの結論にまとまらないネタだということは覚悟してます(炎上系?(笑))。

第3巻103ページ、第20話冒頭、勘違いした永束が見せびらかす「ずっと好きでした。」
ですので、ここでの結論はあくまでも個人的な私見ということで。(まあ、他のすべてのエントリもそうですが)
植野に対する疑問として、何よりも最初に出てくるのは、
小学、中学、高校と、5年もほったらかしにしておきながら、なぜ高校3年になって急に将也を熱心に追いかけ始めたのか、そしてそもそも、「ずっと好きでした。」というのは本当なのか、という点、つまり「植野の将也への恋心とは、実際のところどういう経緯をたどったどういうものなのか、ということに尽きるでしょう。
この疑問には、植野と島田との関係や、永束が罵倒されたときに登場するガラの悪そうな「健脚コンビ」は何者なのか、といった別の謎もからんでくるのですが、ここではその辺りはいったん議論の対象から外し、将也と植野の関係だけに話題をしぼって考えたいと思います。
ただ、1つ考えていることとして、
植野が中学・高校時代に将也を想って他の男性との交際を絶っていた、ということはないと思います。
植野にとって将也は、高校3年で再会しなければそれっきりの「苦い初恋の想い出」で終わっていた、そういう対象だったはずです。
まず、確実な前提として、
植野が小学校時代から将也のことを好きだったこと、これは間違いないですね。
わざわざ将也の理髪店に通ったり、席替えのときに佐原と席を交換して将也の隣に座ったり、これはもう明らかすぎるくらい明らかです。
そして、将也がスクールカースト最低辺に転落し、いじめられるようになったあとも、よく読むと植野だけは将也いじめの輪に入ることに躊躇ないし抵抗しています。
だから、再会後に植野が言った「小学・中学時代にハブられてたときに声をかけられなくてコーカイ?」というセリフも信じていいものだと思います。
さらに、
植野は川井と連絡を密に取り合う仲であること、これも明らかです。
これらを総合すると、私はこういう「物語」があったのではないか、と推測します。
植野は、小学校の頃から将也のことが好きだった。
でも、将也がいじめられるようになってからは、それをかばうだけの勇気はなく、消極的ながらも将也をいじめ、無視する側に身をおかざるを得なくなった。
そのことを植野はずっと後悔し、後ろめたく思っていたので、中学卒業後も会いに行く勇気もきっかけも作れなかった。
3年以上も将也へのいじめを黙認し、将也が壊れていくのを見ていた植野にとって、これは自然な感情だった。
いじめを受け続けた将也が、かつての「自分が好きだった」頃の元気な様子をすっかり失ってしまったまま、中学を卒業していったことも、その後会いに行こうと思えなくなってしまった理由のひとつだった。
そんなとき川井から、将也が川への飛び込みで停学処分を食らったこと、佐原と連絡をとろうとしていたことを知る。
それとなく佐原に聞いてみると、将也と実際に会ったということ、そして元気だったという話も聞いた。
植野は、高校3年になって、ようやく将也が元気になり、かつての「自分が好きだった」頃の姿を取り戻したんだと確信した。
とはいえ、最初からいきなり会いに行くのはきっかけもなくて話題に困りそうなので、ネコミミと尻尾を用意して、将也の通りそうな道で待ち伏せしてわざと近くをすれちがった…
ところが、そのときの反応が「好きだった頃の将也」ではなくむしろ「壊れてしまった将也」のままだったので、そこではあえてそれ以上踏み込まず、割引券だけ渡して立ち去ることにした。
そうしたらバイト先にも来てくれたので、やっぱり何だかんだ言っても「行動力のある将也」が戻ってきていると感じた。
ところが、将也は会員登録せず立ち去ってしまおうとしたことから、連絡先を手に入れようと思っていたのに失敗した植野は、想いがあふれて思わず「ずっと好きでした」のメモを書いてから、追いかけてきて猫ポーチを渡した…

この、第3巻99ページ、第19話での描写にあるとおり、猫ポーチを渡すのに走って汗だくでおいかけてきていることから、あのメモはあらかじめ用意していたものとは思えません。
慌てて書いて、それから追いかけてきたから距離が離れてしまっていたと考えるほうが自然ですね。
ともあれ、植野の将也への気持ちは、そんな「ずっと燃え続けていた」といったようなものではないと思いますが、消えない気持ちとして植野の中にずっとあり、そして、再会後は一気に盛り上がって現在に至る、そういうものだと思います。