2014年07月10日

第44話、結絃について回収された悲しい伏線とは?

第44話、植野の大暴ればかりが目立ちますが、その影でこっそり回収された大きな伏線があります。
それは、

結絃が筆談ノートを見てずっと知りたいと思っていた、「小学校のころのねーちゃん」の姿

です。

第4巻の冒頭、第24話は、一見、第3話最後の硝子の告白の後日談という位置付けに見えますが、実際には、将也の再会から始まり、硝子の小学校時代のつながりが少しずつ復元されていく(同時に硝子が生き生きとした感情を取り戻していく)過程で、結絃を過去に引き留めている「小学校時代の硝子へのいじめへの恨み」を清算し、未来に目を向けられるようになるための最初の歩みが始まる回でもありました。

そういった、結絃の過去からの脱却のあがきは、第29話でも改めて描かれています。

祖母「…ゆづはまだ 姉ちゃんいじめとった奴 蹴とばしたりたいんか」
結絃「痛い目あわせてやりたいとは今でも思ってるけど …思うだけだよ キリないしね」
祖母「んでも 姉ちゃんのノート 見とったのは…」
結絃「知りたいだけ 姉ちゃんが どーいった人達の中にいて どんな空気を感じてたか 知りたいだけ 知らなかったら いつか後悔するかもしれないから」
祖母「ばーちゃんは ゆづが心配だよ 姉ちゃんのことばっかで 自分のことは知ろうとせん」



第4巻112ページ、第29話。

なぜこんなに結絃は硝子の筆談ノートと小学校時代にこだわったのでしょうか。
それは、どんなにいじめられても作り笑いをしていた小学校時代の硝子が、たった1度だけ見せた本音が(恐らく)「自殺したい」であったこと、そのきっかけが「筆談ノート」を捨てられたことだったこと、そして恐らく、この「自殺したい」以降は、硝子が感情を殺して「諦めて生きている」ことを察していたこと。

硝子を「守る」ために、結絃は髪を切り、自ら男子のように振る舞い、学校にも行かずに「硝子の世話係」として生きる選択をしてきました。

そんな硝子が、将也との再会以降、感情を取り戻して告白までやらかしたわけです。
結絃としてはこれで姉のことは心配するのをやめて、今度は「自分のこと」をやり直す段階に入ってもいいはずですが、そのためにも必要だったのが「姉が小学校のころ、どんな空気のなかでどんなことを感じて過ごしていたか」を知ることだったのだと思います。

そして、「知らなかったら いつか後悔するかもしれないから」という結絃の不安は当たりそうになりました。
もしも硝子があのまま自殺していたら、結絃はきっと「ちゃんと知っておくべきだった」と後悔したことでしょう。

でも、硝子は辛うじて助かりました。
そして、硝子自身が書いた手紙によって、「姉ちゃんが どーいった人達の中にいて どんな空気を感じてたか」が明らかになりました。

その内容は、結絃にとっては衝撃的なものだったでしょう。
硝子は、端的に「妹を守るために」、「普通」を目指して周りと同じようにクラスに溶けこもうと頑張って空回りし、迷惑をかけて、作り笑いしかできなくなって、いじめを受けて、最終的に「自殺したい」となって「諦めた」わけですから。

花火大会で、硝子のことを守れなかったこともショックだったと思いますが、結絃は「カントクフユキトドキ」なんてことを言っており、無意識のうちにいまだ硝子の保護者を自認していることが伺えます。
でも、自分の存在こそが、姉を追い込む原因の1つとなっていて、守っているつもりが守られていた、ということを知り、「硝子の保護者」などという結絃の自己イメージは、自殺阻止失敗と今回の手紙によって完全に破壊されたといっていいでしょう。

だからこそ、手紙朗読時に硝子以上に結絃がショッキングな顔をし、その後の植野の髪つかみビンタを見ても、止めることもできずにひとり号泣して固まっていたわけです。


第44話、17ページ。

結絃がいまだに中性的なルックスを続けているのは、「自分で断髪したあの日」から時計が止まっていて、まだ「過去にとらわれている」ということの現れです。不登校とか「死骸の写真ばかり撮ってる」とかも、同様の話ですね。
ですから、今回、結絃が知りたかった硝子の過去が明らかになり、同時に結絃の現在のアイデンティティが否定されたことは、これから結絃が大きく変わっていく契機にまちがいなくなっていくでしょう。
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第44話:定例 伏線回収ウォッチング

今後、話がある程度動いたときはこのエントリを更新していきたいと思います。
先日、第43話が終わった時点で残っていると思われる、主な伏線についてリストアップしました。
これらの伏線のうち、どれが回収されたのかを定期的にチェックしていこうと思います。

1)特A級
1a)硝子の将也への恋心は届くのか。将也の硝子への恋心は自覚され届くのか。
1b)将也、硝子双方が持つ自己嫌悪は克服されるのか。
1c)島田の中学での将也迫害の理由、島田が将也に考えている(いた)こと
1d)小学校時代の硝子がなぜ将也と友達になろうとしたか
1e)硝子が自殺を決意するに至る(小学校からの)心情的経緯 → 小学校時代については第44話の手紙である程度明らかに
1f)橋メンバーとの和解。誰と和解し、誰と和解しないのか。
1g)将也がクラスメート全般につけている×は外れるのか
1h)硝子が「諦めていたもの」とは何だったのか
1i)将也は、いつ硝子に過去の行い(いじめ)を謝罪するのか

2)A級
2a)硝子が植野に出した手紙の中身 → 第44話で明らかになりました。
2b)硝子の補聴器が片方になった理由
2c)水門小から転校後の硝子の学校生活、交友関係
2d)なぜ島田はテキ屋になっているのか、ただのバイトなのか
2e)結絃カメラのゴクヒ映像はもう使われないのか
2f)結絃の不登校は解消されるのか、自称「硝子の世話係」を卒業するのか → 第44話で「世話係」の自己像が否定されました。

3)Aマイナス級
3a)真柴の正体、真柴の「同級生」
3b)結絃が死体写真ばかり撮っていた理由
3c)ガーデンピックはいつ聞くんだ
3d)佐原のメール「成長を証明する」方法 → 第44話で少し成長した佐原が見れました。
3e)竹内がなぜ手話を知っているのか
3f)ペドロはどこへ行った?
3g)広瀬のいま、島田・植野との関係
3h)将也が中学時代も孤立していたことを硝子は知ることになるのか
3i)映画はどうなるの?

4)B級
4a)喜多先生の結婚相手、喜多はいま何をやっているのか
4b)小学校時代、将也以外のクラスメートの硝子いじめの実態
4c)石田母の「優しさの中の厳しさ」はもう表現されないのか
4d)健脚コンビとは何だったのか
4e)デラックスってなぜ登場したんだろう、再登場はある?
4f)石田姉の顔出しはある?
4g)花火大会の「あれ 西宮さんじゃね?」の発言者は?


第44話で、以下の伏線回収が完了、または始まりました。

2a)硝子が植野に出した手紙の中身
 第44話で植野が内容を朗読しました。
 内容は、小学校のころの硝子が何を考えていたか、でした。
 同時に、1e)についても、小学校時代になぜ絶望していったのか、は半分くらいは明らかになった感じですね。もしかすると、小学校時代の硝子の心情については、明文的に語られるのはこれで終わりかもしれません。
 また、1d)、1h)とも関連してきますが、これらについて踏み込んだ詳細が分かるような内容ではなかったので、とりあえずこれらについては「伏線回収開始」とはみなしていません。

2f)結絃の不登校は解消されるのか、自称「硝子の世話係」を卒業するのか
 第44話で、硝子が結局自殺を実行してしまったことや、植野が朗読した手紙によって、自分が姉を世話していたつもりが、実際には姉が自分のことを心配して水門小で無理していたことを知り、結絃にとっての「世話係」というアイデンティティはほぼ否定されました。
 ここから、結絃がどう立ち直っていくのか、姉からの「自立」、そして学校生活への復帰などは実現するのかが注目されます。

3d)佐原のメール「成長を証明する」方法
 第44話での植野とのバトル、前回の橋のときは逃げてしまいましたが、今回は逃げませんでした。
 そういう意味で、少しでも佐原は「成長した姿」を見せることができたのではないかと思います。
 (まあ、「ドン」とどつかれてあっという間に「ペチャ」とひっくり返って硝子を守るどころではなくなってしまっていて、「中身は弱いまま」ということも同時に表現されていることも見逃せませんが…)

全体的に、いよいよ第44話からは、起承転結の「転」の段階が終わり、「結」の始まりっぽくなってきたな、という印象を受けました。
そして今後も、短い話の中でもかなり多くの伏線が一挙に回収されそうだという印象も持ちます。

終盤になっても弛緩することなくたたみかける展開が続く聲の形、ますます目が離せなくなってきました。
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2014年07月12日

植野の行動をパーフェクトに説明する行動原理とは?

さて、第44話で修羅と化した植野ですが、これまでの行動パターンなどをよくよく読んでいくと、ものすごくはっきりしたキャラクター付けがされていることに気づきました。

植野の行動原理とは、

1)「嫌い」という感情は常にストレートに表し、行動に移すことができる。
2)「好き」という感情はどうしてもストレートに表現できず、行動に移すことがものすごく苦手で下手くそ。


これだけです。


実は、これだけで植野のこれまでの行動はほとんどすべて説明できることに気づきました。

小学校時代、植野が喜多の手話提案を潰そうとしたり、それを受け入れた佐原を不登校に追い込んだり、硝子の筆談ノートに悪口を書いたりしたのは、硝子のことや硝子を「世話すること」、さらに自分の面子をつぶした佐原を「嫌い」という感情をストレートに行動に移した結果です。

一方で、将也のことを「好き」という感情は、小学校を通じて一度もちゃんと表現することができず、悪口ばかりで将也には伝わりませんでした。
加えて、将也転落後も将也を救うことができず、「お前童貞だろ」なんていう言葉しかかけられなかったのも、これまた将也を「好き」という感情に基づく行動が徹底して苦手・下手だったからだと言えます。

高校での再会時も同じです。
植野にとって、将也に対するアプローチは「好き」という感情に基づく行動になるので、いきなり下手くそになるわけです。

猫ポーチ事件で、「なんであれほどストレートな性格の植野が手紙なんて書くんだ」「なんで身柄を明かさずにこっそり猫ポーチを渡すんだ」みたいな話がありますが、彼女にとって「嫌い」ではなく「好き」に基づいて行動することは、とんでもなく難しくて勇気のいること(しかも下手くそなこと)だったんだと考えれば説明がつきます。
それで、わざわざ手の込んだ「作戦」を立てたわけです。実際、猫ポーチを渡すときも汗だくですしね。
一方で、永束が勘違いして口説きに来たときの反応は「嫌い」に基づいているため、ものすごく明快で行動も迅速です(笑)。

そう考えると、将也との再会に成功したとき、2回も「私のこと嫌い?」と聞いて、2回目に「嫌い」と答えてもらって満足した場面も、本当は「私のこと好き?(もしくは、私はあなたのことが好き)」と聞くべきなのに「嫌い」に置き換えてしまっていますし、「嫌い」と返してもらって妙に満足してもいます。
また、硝子を見かけていきなり悪態をつき始めたり、補聴器を奪ったりしたのも、硝子のことを「嫌い」という感情を共有することで将也との距離を縮めたい、という植野の屈折した愛情表現だと考えられますね。

そして、遊園地編の観覧車で「西宮さんとちゃんと話す」の内容が、私はあんたのことが「嫌い」だったのも、自己否定の殻に閉じ籠る硝子をいきなりビンタしたのも、降りてきて将也に話しかけられたときに「嫌いなものが同じ」と「嫌い」ネタで返しているのも、植野の行動原理がすべて「嫌い」という感情によってたっていることを示しています。


第4巻75ページ、第27話。

そして、植野の事実上2回目の将也への「告白」は、川井に過去のいじめを暴露されたあと、植野が橋につれていこうとしたときです。
このときも、やっぱり植野は「好き」とは言えなくて、「一応 「見てるだけ」は もう嫌って 思ってるから」と、「嫌い」のほうに話を寄せて、さらに「一応」と逃げを打ちながら、真っ赤に赤面しています。って、どんだけ「好き」の側の原理で行動するのが苦手なんだか(笑)。


第38話、17ページ。

さらに、この橋での植野の挑戦が失敗したときも「そのリクツはキライ」と、ここでも「嫌い」の論理を見せ、最後に「自分がやんなる」と言って去っていきます。

そして第44話。「好き」な将也を奪われ、傷つけた「嫌い」な硝子に対して、植野が修羅となったのは、こうやって考えてみればまったく自然なことだということになります。

これで、植野が将也からの信頼を再度かちとることは極めて厳しくなったのではないかと思いますが、植野の3回目の「超不器用な「好き」のメッセージ」が発せられることはあるのでしょうか?
posted by sora at 09:47| Comment(7) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする

2014年07月13日

聲の形・フリー雑談用エントリ

個々のエントリで取り扱っているテーマと無関係に、コメント欄で雑談できるエントリを立ててみましたので、活用ください。

続きがあります…
posted by sora at 15:00| Comment(262) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする

フリーテーマの雑談用エントリを作りました。

さて、当ブログでは、エントリごとにかなり細かいポイントに絞って書かせていただいているので、それぞれのエントリでは、コメント欄の議論で、できるだけそのポイントについて深い議論をさせていただきたいと思っています。

一方で、連載中のまんがでどんどん新しい話題が登場するということもあり、エントリだけでそれら全ての内容をカバーできるわけでもないので、そういった新しい/エントリで取り上げていない話題を議論する場もあったほうがいいだろうとも思います。

というわけで、実験的に、フリーテーマの雑談専用のエントリを作ってみました。

こちらです。

今後は、個々のエントリの内容とは離れた、「聲の形」に関するフリートーク的なコメントは、こちらの雑談専用エントリを活用いただければと思います。

なお、こちらの雑談エントリでは、実験的に、作品・登場人物等に対する、いわゆるネガティブコメントも解禁してみることにしました
うまくいくかどうか分かりませんが、作品や登場人物等について特に厳しい意見を述べたい場合も、こちらの雑談エントリを活用ください。

こちらのエントリは、コメント欄を削除しておきます。
「雑談エントリ」そのものについてのご意見も、「雑談エントリ」のほうに書き込んでいただければ幸いです。
posted by sora at 15:42 | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする
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