2015年06月17日

「聲の形」が道徳教材として実写ドラマ化!

サッカーのコラボマッチに続き、驚きの話題が届きました。
以前から話題に出ている「劇場アニメ」のほうの新しい情報がほとんど出てこないなか、なんとそれより先に、聲の形が「実写ドラマ化」しました



http://www.toei.co.jp/release/edu/1205822_977.html
道徳教材DVD「聲の形」(こえのかたち)好評発売中!!
「このマンガがすごい!2015 オトコ編」第1位を受賞した感動作「聲の形」(講談社『週刊少年マガジン』)が道徳・人権学習用教材ドラマとして生まれ変わりました!!「いじめ」や「障がい者との共生」などの難しいテーマを、視聴者が自然に考えることができる視聴覚教材です。


なんと、いつの間に!
しかももう売ってるし!

ただし、業務用なので66,000円(税別)と非常にお高いようです。
一般の個人が買う値段ではないですね。ビデオトレーラーの最後に、個人向けには販売していないとも書いてありますしね。

ドラマの雰囲気は、YouTubeにあげられているトレーラームービーで見ることができます。


さらに、あらすじなどを記載したパンフレットもありますので、そちらを見るとストーリーがわかるのですが、どうやら相当アレンジが加えられているようです。

video_toei.jpg

せっかくなので、このパンフレットを読み解きながら、どんな内容になっているのかを想像してみたいと思います。

まず、視聴対象が中学生になっていることもあり、原作でいう「小学校編」に相当するにもかかわらず、舞台が中学校に変わっています。どう見ても小学校ではありません。(この「舞台設定変更」が、ストーリーの細部にじわじわと影響を与えています)

そしてあらすじをみてみると、

1.転校してきた少女
 ここは原作とほぼ同じと思われます。

2.合唱祭
 「将也に口パクを強要された硝子を見かねた合唱部の佐原は、硝子に問いかける。『歌いたい?歌いたくない?』」

 ここはぜんぜん違います。
 まず、将也が口パクしろと言ったのは原作では硝子が一人のときで、その内容を知っていたのは喜多先生だけであったように見えます。
 一方、今回のドラマでは、それが「合唱部」の佐原に変わっています。おそらく、喜多先生の役回りをそのまま佐原に動かしたのではないかと思います。
 ちなみにパンフレットの画像をみると、佐原のこの質問に対する硝子の答えは、原作通り「歌えるようになりたい」になっているようです。

3.いじめの始まり
 ここは原作通りというか、あとの4.を見ると、むしろ最初の入選作バージョンに近い流れのようなので、「繰り返し補聴器を壊す」というのは含まれていないように見えます。

4.学級裁判
 「硝子の怪我の原因を追及する学級会」となっているので、将也が学級裁判で吊るし上げられるのは、硝子が怪我をしたことが理由になっているようで、原作でいうと、最初の投稿作である「オリジナル版」に近い展開になっているようです。

5.硝子の転校
 読み切りでは小学生時代のクライマックスエピソードとも言えますが、一見、かなり忠実に再現されているように見えます。
 ただ、1点、大きな点で変更がありそうです。それは、「物理的な喧嘩」は削除されているだろう、ということです。
 この点は、「舞台変更」の影響を受けていそうです。中学生の男女が取っ組み合いの喧嘩をする「絵」はかなり難しいものになりそうですし、トレーラームービーを見ると、場所も下校口から校舎屋上に変更されているようです。おそらく、このシーンは、単なる言葉だけでのやり取りに変更されている可能性が高いでしょう。

6.残されたノート
 ここは全然違います。

 「ある日、将也は自らが投げ捨てた硝子の筆談ノートを見つける。」

 画像をみると、ノートは綺麗で、水に濡れた様子もないので、将也が奪って投げ捨てたのは同じでも、池ポチャはせずに植え込みの下とかそういう分かりにくい場所に落ちていた、という設定に変わっているようです。そして、そのノートを見つけるのは、硝子が転校した「後」という風に、ストーリーも変わっています。

 「誰もいなくなった教室で一人、ノートを見返す将也。そこには誰も気に留めなかった硝子の”声”が溢れていた。『あの時、アイツの声が聞こえていれば。いやアイツの声を聞こうとしていれば…』将也の頬に一筋の涙が伝う…」

 まずわかることは、原作読み切り版・連載版の「机の落書き消し」のエピソードはごっそり削られていること、将也が硝子を思って涙するのは、「落書き消し」のエピソードによってではなく、「筆談ノート」によってに変えられている、ということです。
 これは、舞台を小学校から中学校に移していることを考えてみても、まあ妥当な設定変更かな、とも思います。
 そして、この流れだと年を経て硝子と再会するという最後の最重要エピソードも省かれている可能性がありますね。「あの時、アイツの声が聞こえていれば」というのを、硝子がいない場面で言ってしまっているようですから。

 最後に、人物相関図を見ると、まず「先生」の存在がほぼ消去されているようです。
 この教材は学校で使われる可能性が最も高いでしょうから、内容について話し合った結論が「先生がダメすぎるのがいじめの原因」とかになってしまうと、教材としては非常に使いにくいでしょうから、これはやむを得ないと思います。

 相関図の記載内容をみると、登場するどのキャラクターも概ね原作の設定に合っていると思いますが(島田が全然イケメンでないのと、植野も…なのが微妙に違和感ですが)、ここで一番気になるのは「佐原」ですね。
 佐原は、このドラマでは合唱部員で合唱祭を引っ張る役目を負わされているようで、「喜多先生パート」をまるごと受け持っているようですが、この相関図には「いじめられる硝子を助けようとするが…」とあるので、どうやら単に喜多先生の役回りが回ってきているだけでなく、「硝子を支えようとして自分がいじめの対象になってしまう」という、原作の役回りも捨てずに残されているようですね。なかなか重たい役割を与えられているように見えます。

 というわけで、全体をみると、原作を題材にしつつも、うまく「道徳教材」として活用できるよう各部がアレンジされ、かつ30分内に収めるためにいろいろな枝葉もカットしているな、という印象を受けました。
 原作とは相当に異なる内容になっているようなので、ぜひ機会があれば見てみたいと思いますが、一般に流通するような作品ではないので、なかなか難しそうですね。
 もし中学生の方、もしくは中学校の先生で、このDVDを見る機会を持った方に、感想を伺いたいところです。
posted by sora at 21:57| Comment(13) | TrackBack(1) | その他・一般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この話題、私もかなり驚きました。
ストーリーに大幅な変更が加えられたことは、『聲の形』ファンとしては複雑な気持ちではありますが、Soraさんも指摘されたように30分の時間枠かつ中学生向け道徳教材という性格を考えると、やむを得ない所なのかもしれませんね。

で、パンフレットのスチール写真等を詳細に見ると、
・机への落書きは硝子の机に対してされている。
・将也は(少なくとも2階以上の高さがある)教室の窓から外へ筆談ノートを投げ捨てている。
・高校生になった将也が硝子に筆談ノートを返すシーンはあるっぽい?

ように思えます。

撮影は愛知県内の中学校でロケを行ったらしいので、原作の舞台からはあまり遠くない(名鉄か東海道線で乗り換えなしで行ける)ですね。

DVDのパッケージ写真も第1巻の表紙を意識していますね。


あと、トレーラームービーの最後に「学校等の教育施設・公共団体」が販売対象と書かれてますので、もしかしたら、ビデオライブラリのある公民館とか図書館等で閲覧できる可能性はあるのではないでしょうか?
Posted by ぽてと at 2015年06月17日 22:59
連投失礼します。

トレーラームービーを見直して、さらに気づいたことがあります。

原作では、硝子の隣の席になった植野が硝子の世話役をしていたが、しだいにそれを負担に感じるようになってきた様子が描かれています。
しかし、ムービーでは硝子の隣の席は将也であり、将也が硝子からの質問などを疎んじるようになってきた様子になっています。

つまり、植野の立場も原作とは異なる設定になっているように思います。

それにしても、本当に佐原の設定変更はすごいですね。ルックスも植野よりもサラ!髪の美少女になっているように見えますし。

こうしてみると、実際のビデオをますます観てみたくなりますね。
Posted by ぽてと at 2015年06月18日 08:32
ぽてとさん、

コメントありがとうございます。

なるほど、たしかにスチル写真を見ると、硝子への机の落書きや、ノートを窓から捨てているように見えるシーン、高校?で筆談ノートを返すシーンなどが盛り込まれているようだということがわかりますね。

パッケージがコミック第1巻を踏襲しているのは気づいていたのですが、エントリに書くのを失念していました。

植野や島田については、時間も短いということで、存在感を下げたんだろうと思います。
そして、登場人物の節約?のために、いろいろな役回りを佐原にまとめて、中心人物の一人に押し上げた、という感じでしょうか。(硝子-将也-佐原あたりの関係で、いじめ問題を考えさせる構成になっているのだと思います。)

ところで、今回の撮影の舞台は、恐らく東京です。
都立の聾学校や、東映の東京撮影所(練馬区にあります)が使われていることが書かれているからです。
「岡崎聾学校」は、教材の制作協力ですね。
Posted by sora at 2015年06月19日 22:46
こんばんは。生まれ故郷の学校が制作協力していた事に驚いています。


35年前は、子供会の行事でしか聾学校の子と接点はなく、地面にチョークで落書き半分の筆談がせいぜいの関わり合いでした。電車を薩摩の守やらかして聾学校を見に行ってこっびどく叱られた事も覚えています。聞こえないご近所さんが遠くの学校に行く意味がわからないでやらかした悪さでした。現在は地域の学校生活の場で関わっていく必要があるからこんなビデオが作られたんだと世の中が変わった事を思い知ります。


娯楽作品が教育目的に使われるようでは世も末という思い半分、学校でみんなが無料で聾の形に触れられる事が喜ばしいのが半分であります。
Posted by あらやん at 2015年07月12日 21:34
あらやんさん、

コメントありがとうございます。
そうでしたか、それは不思議な縁ですね。

「聲の形」それ自体が道徳的な作品か、といわれるとうーんと考えてしまう部分がありますね。どちらかというともっと複雑多層な、正しいとか間違っているとかいった簡単なことばで語りきれない作品ですよね。

ただ、その「ある側面」を切り取って、それを道徳教材にするというのは、それはそれでありなんだろうとは思います。
Posted by sora at 2015年07月13日 23:34
先日、とあるイベントで「『聲の形』映画上映」とあったので行ってみたら、案の定、東映作成の道徳教育教材のでした。
やはり、道徳教材ですし、30分なので、第1巻の背景を中学校に設定しなおして、かなり端折ったような感じでした。
トレーラームービーでも想像はついていましたが、山場は合唱コンテスト惨敗⇒硝子へのいじめ激化⇒硝子負傷⇒学級裁判⇒いじめの対象が将也に⇒硝子再転校あたりで、他に佐原が硝子をサポートしようとして偽善者よばわりされるイベントも盛り込まれてたので、Soraさんが推測されたように「硝子-将也-佐原あたりの関係で、いじめ問題を考えさせる構成になっている」という感じでした。

あまり細かく書くのはネタバレになってしまうのですが、一般の方が観る機会がほとんどない作品なので、敢えてもう少し書きます。
「机の落書き消し」シーンは盛り込まれていたし、将也の「西宮よ、黙ってるだけじゃ現状は打破できんのだよ」(原作ではカタカナ表記でしたが、流石に中学生なので字幕では漢字表記でした)や硝子が将也にビンタして「ほりぇてもかんぱってう!」と叫ぶシーンなどはありました。ただし、ここではSoraさんがおっしゃったように取っ組み合いの喧嘩にはなってなかったですね。

最後に高校生になった将也が硝子にノート返すシーンはありましたが、黙って手渡すだけで「忘れ物」の手話は無し。従って、将也の「友達になれるか」手話シーンもなし。

原作ファンには物足りないでしょうが、道徳教材という性格や時間枠を考えると、やむを得ないところなのかもしれません(それでも読み切り版をなんとか納めたのは評価してもいいのかも)。

余談としては、佐原がクセ毛でない、植野がポニーテール等と、細かい突っ込みどころはいくつかありました(^^;)。

アニメ版の方は、動く絵だとかなりキツそうなシーンもありますが、なるべく原作を活かして欲しいと思いました。
Posted by ぽてと at 2015年11月09日 22:03
ぽてとさん、

コメントありがとうございます。
そして、教材DVDが見れたこと、本当にうらやましいです!

コメントを拝見すると、将也が硝子がいなくなったあと手話を勉強するというところは省かれているようですね。

そうなると、テーマとしてはやはり道徳教材として(いじめはやめましょう的な)シンプルなものになっている印象ですね。

でも、全体としてはちゃんと「聲の形」になっていそうですね。
私も、いつかチャンスがあれば見てみたいです。(^^)
Posted by sora at 2015年11月19日 07:56
Soraさん、返信ありがとうございます。
はい、道徳教材としての色合いがかなり強かったですが[6.残されたノート]で、筆談ノートをめくりながら将也が「あの時、アイツの声が聞こえていれば…」とつぶやくシーン、このモノローグは『聲の形』の重要なテーマの一つであり、純粋な「いじめはやめましょう」的な道徳教材としては、すこし違和感のあるシーンでもあるのですね。
おそらくは、道徳教材化にあたって、大今先生がストーリーにある程度の改変は認めても、このモノローグだけは活かして欲しいとこだわったのではないでしょうか。
Posted by ぽてと at 2015年11月20日 23:34
ぽてとさん、

コメントありがとうございます。

なるほど、そのシーンはこだわって残されていたのかもしれません。
道徳的に読み解くなら、「ちゃんとコミュニケーションすればいじめは防げる」ともいえますが、確かに言っているのが加害者の側なので、ちょっと違和感があるといえはあるようにも思います。

その部分は、「聲の形」という作品が題材になっていることならではのオリジナリティだと言えるのかもしれませんね。
Posted by sora at 2015年11月29日 22:22
連載終了以来しばらくコエカタワールドから離れているうちにこんなものができていたんですねぇ。
個人的には微妙。

うーん、未見なので偉そうなことはいえないのですが、聲の形は確かに良作ですけど道徳の教材って言われると「コレジャナイ」という気がしてしまいます。

第一、勧善懲悪の話でもなければ正しい人がいいって話でもないですしね。
作品自体がポピュラーになることはファンとしては喜ばしいけど、作品に変に説教臭かったり課題図書みたいなイメージがつくのは、個人的にはあまり望ましくないなぁ・・と思ってしまいます。
Posted by レッド・バロン at 2016年09月02日 19:23
先日、人権教材「聲の形」を観る機会があったので観ましたが良い作品でした。

読みきり版を最初に読んだ時の衝撃に近いものが実写版を観た時に感じました。

将也が手話をマスターがバッサリ無いのと担任の先生がゲスじゃないのが物足りないけど(道徳教材で使用するのに先生が悪いとかじゃダメですからね)

道徳の教材で使われるであろう映画でこんなに感動させられるとは思いませんでした。
Posted by keto at 2016年10月08日 00:21
11月13日「TOKYOみみカレッジ」に行って来まして、「聲の形」実写版を観させて頂きました。理由は不純かもしれませんが、この実写版に出演している「佐原さん」役の女の子のファンだからです。
「聲の形」はアニメ映画で初めて知った者として、あまり造詣は深く無いのですが、この実写版は30分の道徳教育用の教材映像として、とてもよく出来ていました。この時の上映会は実際に耳に障害のある方やその関係者ばかりだったわけで、その方達がどういった感想をお持ちなのかが気になりますよね。私の斜め前に鑑賞されている方は涙されていました。
滅多に観る事が出来ないこの作品をまた観たいものです。
Posted by しまちゃん at 2016年11月15日 00:15
しまちゃんさん、

コメントありがとうございます。

私も、この「みみカレッジ」の噂は聞いていて、行ってみてもいいかなと思ったのですが都合がつきませんでした。
でも、あとで情報を聞いてみると、思っていた以上に充実したイベントだったようで、行けなくて残念でした。

どこかでレンタルしてくれるといいんですけどね。
Posted by sora at 2016年11月19日 17:32
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