さて、第53話の難解な「3ページめ」の読み解き、このエントリが最後になります。
残るは5)と6)、
5)4)の登場人物が小さくなり、真っ黒な背景が画面全体を覆っていく。
6)真っ黒な背景に白抜き文字で「死ぬんだろうか」

第53話、3ページ。
ですが、ここまで読み解きを進めてきた後では、割と簡単に思われます。
5a)この5)のコマはどういう意味か。
6a)この6)のコマはどういう意味か。
5)は、4)の続きであると同時に、6)に続く橋渡しをしています。
つまり、3)と4)から、「現実の俺は、中学でも高校でも、そして硝子と出会ってからも、結局いつも上手くいかなかった」という思いから、
5)だんだん気力が薄れ気味になり、イメージが薄くなり、
6)「死の闇」がどんどん大きくなっていって、真っ暗になったときに、「俺は死ぬんだろうか」とふと思った。
そういうシーンである、と素直に読み解くのがいいんじゃないか、そう思われます。
ちなみに、6)については、主語が「自分(将也)」なのか「本当のみんな(4のコマ)」なのか、という問題がありますが、すでに4)で考察のとおり、ここは主語が切り替わって、「自分が」このまま死んでしまうんだろうか、という意味でとるのが適切だろうと思います。
さて、これで1)から6)まで、すべてのコマの読み解きが完了しましたが、全体をまとめる前に、この場面が「夢」という点において、とても複雑な多層構造になっていることを指摘しておきたいと思います。
まず、第53話1ページから続く小学生将也の場面について、モノローグを語っている将也は「夢を見た」と言っているので、「モノローグ将也」に対して「小学生将也」は「夢の中の存在」です。
そして、「モノローグ将也」は、実は目覚めているわけではなく、昏睡している将也の夢の中で語っているわけですから、「リアル世界」に対して「モノローグ将也」は「夢の中の存在」です。
さらに、3ページの冒頭、1)のコマで、「小学生将也」は「眠りについて」いて、どうやら2)の「手を引っ張られる」シーンは、その「眠りについた」夢の中の場面であるように見えます。
つまり、「小学生将也」に対して、「手を引っ張られた将也」はさらに「夢の中の存在」です。
そして、「手を引っ張られた将也」は、そのまま手を引っ張られなければ、どうやら死んでいたようです。
つまり、将也が手を引っ張られた『夢のレイヤー』は、死の世界につながるレイヤーだった、ということになるわけです。
つまり、こういうことになります。
[リアル世界]→夢→[モノローグ将也]→夢→[小学生将也]→夢→[手を引っ張られた将也]=[黄泉の世界]
以上をふまえて、第53話3ページの読み解きを改めて整理しておくと、
1)「夢中夢」の小学生将也がさらに「眠りにつく」。
2)するとそこはすでに黄泉の世界。死の寸前までいった将也だったが、硝子の願いのこもった涙を受け取った鯉がそこに現れ、将也を引き戻す。
3)引き戻された将也は、「何もかも上手くいくと思っていた小学生将也」が「夢」であったことに気づき、実際には硝子と会うまで、孤立の続くひどい人生だったことを思い出す。
4)さらに硝子と会ってからも、いろいろあったけれども結局上手くいかなかったと回想する。
5)そんなことを思い出していたら少し気力が萎えてしまい、だんだん意識が黒く塗りつぶされてきた。
6)すっかり意識が黒く塗りつぶされた暗黒の世界に(また黄泉の世界に近づいている)。将也はふと「自分は死ぬんだろうか」と弱音を吐く。
こういった感じになるのではないか、と思います。
これが正解、というわけではありませんが、ばらばらの場面が集まっただけにも見える、非常に難解な第53話の「第3ページ」の読み方の1つのヒントになればと思います。
ラベル:第53話