2014年12月13日

第53話の超難問、「夢」の終わりをどう読み解くか?(1)

※このエントリは、第53話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

第53話前半の夢は硝子が第51話で見た夢とのシンクロニティが描かれており、単純にロジカルに読むよりも、オカルト的に盛り込まれた「意味」まで読み解いていくことが不可欠になっていると思われますが、そのなかでも屈指の難解な場面が、3ページ目の「夢」の終わり部分だと思います。

ここは、次のようなコマ運びになっています。

1)「そして幸せな気分で眠りにつく」のモノローグと、全裸でベッドに横になる将也。
2)「その時 誰かに手を引っ張られ ハッとした」のモノローグと、水中のような背景、左手を誰かにつかまれる描写。
3)「本当の俺たちは ドコへ行くんだろう」のモノローグと、教室に座る冬服姿の将也を窓の外から俯瞰した描写。
4)「本当のみんなは」のモノローグと、真っ黒な背景、硝子を含む高校編の全登場人物が去っていく後ろ姿の描写。
5)4)の登場人物が小さくなり、真っ黒な背景が画面全体を覆っていく。
6)真っ黒な背景に白抜き文字で「死ぬんだろうか」


全体としては、「将也はこの瞬間、生きるか死ぬかの瀬戸際にあった」ということが描かれていることは間違いないでしょうが、「それ以上」を読み解くのが至難の業です。

まず、それぞれのコマに潜んでいる「謎」を順に整理していくところから始めたいと思います。

1)のコマ


第53話、3ページ。

1a)横になっている将也は小学生?高校生?

このコマの前の2ページのラストでは、「中学でも 高校でも」というモノローグがあり、それぞれのコマの将也は、小学生の格好のままで成長した「中学生の将也」「高校生の将也」に見えないこともありません。
だとすると、1)のコマで横になっている将也は「高校生の将也」ということになります。
実際、第1巻で描かれていた小学生将也より、このコマの将也のほうが歳をとっているようにも見えますが、どうでしょうか…?

ただ、第51話の硝子の夢とシンクロさせるなら、この将也は「小学生」ととったほうがシンクロ率が高まります。(その場合、その前の2ページのラスト2コマでも、将也は小学生のままということになります)

この「謎」については、私は、

このコマの将也は小学生である可能性が高い。

と考えます。

大今先生が、小学生将也と高校生将也をどう描き分けているかをいろいろ比較して考えてみたのですが、どうも「顔の縦方向の長さ」が最も大きな描き分けファクターであるように思われます。
これは、佐原回での硝子の描きわけでも示されましたが、小学生将也の顔が、概ね縦と横が同じ比率に描かれているのに対して、高校生将也では明らかに「縦長」に描かれています。

そういう基準で1)のコマを見てみると、このコマの将也の顔のタテヨコ比率は1:1にかなり近く、この比率で描かれているこのコマの将也は「小学生」である可能性が高い、という結論に至りました。
そうなると、2ページのラスト2コマも、小学生のままの将也が描かれている、ということになります。


1b)なぜこんなに痩せているの?

1)のコマの将也のもう1つの謎は、身体が異様に痩せ細っていることです。
第1巻に登場した小学生時代の将也は中肉中背で、この1)のコマのようなやせぎすではありません。

だとすると、このコマの将也は、

病室のベッドで横たわり、やせ細った将也が見ている「小学生の頃の夢」であるために、顔は小学生に戻っているけれども身体は現状のやせ細った状態になっている。

と読み取るほかないでしょう。
そして、夢のなかの小学生将也がやせ細っているのは、楽しい夢を見ているのだけれども、実際には衰弱して生命の危機が近づいてきている、ということを将也自身が暗に察していて、夢の中でその部分(体格)だけが「現状」を反映してしまったんだ、ということになると思います。


1c)なぜ全裸で寝ていて、ベッドの上にタオルみたいなのがあるのか?

これを考えることは、結果的に1a)の推理を補強することになります。
このシーンで描かれているベッドとゼブラ模様の枕ですが、これは第1巻を見ると分かるとおり、小学生の将也が使っていたものです。


第1巻18ページ、第1話。

そして、自殺を決意したときに全部売り払っており、それ以降は真っ白な布団に寝ています。
つまり、この1)のシーンの将也はやはり小学生で、恐らく、前のページで立っていた橋から川に飛び込んでシャワーを浴びて、タオルで身体を拭いた後そのままベッドに入っている、そういう「設定」なんだろうと思います。

つまり、1)のコマは全体として、仲間と橋から川に飛び込んで盛り上がっていた、小学生の頃の楽しい思い出をさらに「美化」して、耳の聞こえる硝子とも仲間だった、そんな「小学生の頃の夢」のラストを表現しているのだ、と「読み解く」のがもっとも妥当であるように思われます。
ラベル:第53話 第01話
posted by sora at 08:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
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