2014年12月03日

第61話、将也の「読み取りミス」の理由をメタに考える

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話では、植野の話によって、硝子の志望が美容師である、という将也の誤解が解消されました。


第61話、5ページ。

この誤解は、第59話で硝子が将也に示した「理容師を目指している」という手話を、将也が「美容師」と読み取りミスをしたことによって起こったわけですが、では、なぜ将也はこの場面で読み取りミスをすることになったのでしょうか?

KOEKATA_59_009d.jpg
第59話、5ページ。

これは、物語の展開上そうせざるを得なかったという、メタの理由が大きかったんだろうと思います。

作者が将也と硝子の進路というテーマで、盛り込みたかった展開というのは、恐らく次のようなものでしょう。

1)硝子に上京させ、それをめぐって将也に葛藤が生まれる。
2)硝子上京をきっかけに、将也は進路を真面目に考え、実家の店を次ぐことを決意する。
3)硝子と将也の進路を最終的に一致させることで、エンディングで人生を一緒に歩むことを描く。
4)ただし、進路の一致がお互いへの依存の結果だと映るようには描きたくない。


ところがこれ、1)と2)の時点で既にねじれていることがわかります。

1)硝子の上京、を将也に伝えようとすれば、当然硝子が理容師志望だということを伝えなければなりませんが、それを伝えてしまうと、2)で実家を継ぐ選択をしたときには既に硝子の理容師志望を知っていることになり、「硝子の後追い」になって4)の狙いから外れることになります。

だからといって、完全にばらばらに将也と硝子が進路の話をする前から理容師を目指すことを決めていたら、2)の「硝子の上京話をきっかけに、将也がそれまで真剣に考えたことがなかった自分の進路について考える」という展開になりません(上京を知った時には進路が決まっているため)。

だとすると、大変奇妙な形として、

1)硝子の上京話は知っているけれども、硝子の進路は知らない
2)硝子の上京話を聞いてから、将也は進路を真剣に考え、「理容師」という道を選ぶ
3)その後で、将也も硝子も理容師志望だったことを初めて知る


という展開を無理にでも作らなければならないことになるわけです。
そのために採用されたのが、「手話の読み取りミス」という展開だったのですね。

1)の時点では、「上京する」という情報だけ正しく得て、「進路は理容師」のほうは手話誤読によって知らない設定にして、2)が終わったあとで、今回のように植野の話によって「実は進路は理容師」という情報が初めて与えられる、という形になったわけです。

そういう意味では、さらに遡って第55話で、硝子がヘアメイクイシダの店内をみて興奮しているとき、結絃が言った「さすが理容科」というせりふを、将也がききとれずに「いおーか?」と言っているのも、今回の展開につなげるための必然的な伏線だったことになります。


第55話、15ページ。


posted by sora at 07:15| Comment(8) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
元々連載初期から二人して理容師の結末は予想されてはいましたが、あまりにベタすぎてまさかな・・という感じで本当にそうなるとは思いませんでした。

石田の実家が理髪店という伏線はあったものの、
石田が理容師に興味を持ってそうな描写も最終話近くまでなかったし、硝子の高校が理容科という話も終盤近くまで「隠されて」ましたし。まあ、ちょっとズルいな、強引だなって気がしないでも(笑)

といいますか普通、再会して間もない時期に聞きそうな気がしますが・・「ところで、お前高校どこいってんの?」って。相手がよほど嫌いで警戒してるっていうのなら別ですが、そんな感じの描写はないし・・。
話題がなくて困ってるなら尚更で。

それとも、コエカタワールドではベタベタの恋人にならないと通っている高校や進路について聞いてはならない、失礼だ・・ってルールでもあるのかな?(笑)
どうもその辺の人間関係のルールがよくわからなかったりします(笑)。
いえ、別にいいんですけどね、これくらいの辻褄、現実無視ならば。

ちなみに私は石田の進路について外科医説も考えてました(冗談でですけど)。
マンションから転落後、大怪我を負い傷だらけとなった将也。とある名外科医の手術とペドロの皮膚提供(ここでオマエヲマモルの伏線回収)を受け一命を取り留める。
半身不随の危機も囁かれたが血のにじむようなリハビリで復活。自分を治した名外科医に憧れて医学部へ。
十数年後、顔中、全身傷だらけの名外科医の噂が・・

ええ、お気づきになられたでしょうが「ブラックジャック」のパクリですけど(笑)。

Posted by prijon at 2014年12月04日 19:39
prijonさん、

コメントありがとうございます。

私は、硝子=理容師というのは、映画撮影の準備で、硝子が橋で結絃の髪を器用にまとめたシーンが出てくるまでは気づかなかったですね。
後半になってきて、ああなるほど、1巻の番外編というのは実はとても重要なシーンだったんだな、と分かってきました。

2人とも理容師、というのは確かにベタな展開ですが、それを第1話から提示しているというのは、伏線の張り方としてはむしろフェアなんじゃないかとも思います。
この作品は謎や伏線が多いので、ミステリーを読むように読める側面も強かったと感じます。
Posted by sora at 2014年12月04日 21:50
石田がどのくらい手話を学んだかも気になりますね。手話を学んだのはそもそも西宮に謝り自殺するためであって誤るために必要な語彙しか学ばなかった可能性があると思います。以前の考察エントリ通り、第二言語だから石田は専門用語に弱く、読み取りミスをしたと考えれば本当に筋の通る読み取りミスだったのですね。
Posted by モデラ at 2014年12月04日 23:36
うちの子話ばかりですみません。こえかたを持ち込み、すれ違いがちの母子の数少ない共通の趣味、なものですからついお目汚ししてしまいまして…


硝子ちゃんのあこがれは石田ママ、高等部出たらママの御弟子さんになるとばかり思っていたから、東京行きを知ってガッカリしてました。


おかん視点で見ると、他所で修行して、石田ママに追い付け追い越せを通ったあとで水門に帰るんだろよ。


カレシモドキとカノジョモドキから昇格するには、同じ方向見ながら違う道に一度行くって展開が欲しかった。おばやんは、依存とか難しいことわかりませんが、そう思うんです。


お使いたのんだら、あろうことか、こえかた買ってきたスカ娘のはなし、お目汚し失礼いたしました。
Posted by あらやん at 2014年12月05日 03:28
追伸は、おかん視点で行きます。悪銭と独学手話は身に付きませんよ。精々大曽根式の指文字覚えられりゃ御の字。


りよーか、びょーか、いおーか、間違えてあたりまえですね。すれ違い演出もまた楽し。
Posted by あらやん at 2014年12月05日 03:36
皆さん、コメントありがとうございます。

将也が読み取りミスをしたのは、不自然なことではないので、一応展開上の必然性はあったものの、「そういうことが起こっても不思議ではないかな」とは思いました。

まあ、自分ちの実家が理髪店で、理容師を美容師に間違えるというのは(逆ならともなく)、ちょっと無理がある気がしないでもありませんが…。

将也と硝子は、目の前の恋愛感情ではなく、一生、生きていくことを助け合うというビジョンを優先して人生の選択をしていますから、あのシーンで東京行きを選ぶのは必然だったと思います。
私は、こういう将也と硝子の「恋愛関係にならないのに既に一生のパートナー」という距離感にはすごく共感するのですが、なかなか「分かりにくい」関係ではあるのかもしれませんね。
Posted by sora at 2014年12月05日 23:26
>「恋愛関係にならないのに既に一生のパートナー」

この辺の関係が私の乏しい想像力ではなかなかイメージできなかったですねぇ。
いえ、2年も経っているのにやたらと遅い進展っていう話ならあまり違和感ないんですけども。
私も前に話した通り、劇的な告白をしてキスして・・なんてセオリーに沿った恋愛はしてないので、これはわかるかな・・と。

ただ、「恋愛関係ではないけど既に一生のパートナー」となると、さすがにうーむでして。
まあ、様々な恋愛も含めて経験を経て年齢を経てそういう境地に至る・・というのならわかるんですけど、18~20でそんな境地となるとやっぱり想像もつかないですね。私自身のこの年齢時、異性に関してはアホなことばかり考えてたような・・(笑)

友情とも違う?友達以上恋人未満?これまた、私事ですがなんですが、一度そういうこともありましたけどむつかしいような気がします。
いずれ、関係をはっきりせざる得なくなってしまいますしね(そうしないと却って不誠実だし)

何かこう異世界の浮世離れした人(まあ、マンガという異世界なんですが(笑))をみている気分。

もうこの辺りの感想って個人個人の人生経験、恋愛経験、影響を受けたマンガ、映画、小説・・etcがモロに反映されるんでしょうね。
もちろん、いい悪い、正しい間違い・・ではなくて。

まあ、架空のキャラなのにここまで考えさせられるマンガってなかなかないな・・てことで。
Posted by prijon at 2014年12月06日 01:44
prijonさん、

コメントありがとうございます。

恋愛は「これから」やるんだと思いますが、そっちはものすごくのろのろとやってるんだと思います。
でもその一方で、その先の「ゴール」として、一生のパートナーとなることについてはお互い確信している、そんな感じでしょうか。

まあ、でも、これはおっしゃるとおり個人個人の感じ方だとは思います。
Posted by sora at 2014年12月06日 22:20
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。