2014年12月01日

将也だけが罰を受けすぎ? あるいは将也=キリスト仮説(5)

でも、そんな西宮母と西宮家の運命に、小さな、でも決定的な転機が訪れたのは、硝子を水門小の「普通クラス」に転校させるという西宮母の選択の結果、硝子が将也と出会った瞬間でした


第1巻54-55ページ、第1話。

この「水門小普通クラスへの転校」という選択自体は、他の選択と同じく、障害を否定しようとする西宮母の強引な意思によるものであり、そういう意味では本来は事態を好転させるものではありませんでした。
実際、硝子は水門小でもクラスに溶け込めず、将也や植野からひどいいじめを受け、硝子は絶望し、最後は追い出されるように学校を出ていったわけです。

でも、そこに将也がいて、将也と硝子との間に「つながり」が生まれたことが、硝子、西宮母、そして西宮家全体の運命を、5年後に大きく変えることになります

結果的に、「将也と出会った」西宮家の運命は、劇的に好転しました。
西宮母自身は「問題解決をする動きをしていないのに」、将也とかかわったことによって、最後はとても幸せな環境を取り戻すことに成功しています。


第55話、9ページ。
ここでの西宮母のこのせりふは、本考察をふまえると非常に本質を突いています。
「あなたがどんなにあがいても…」のせりふもそうでしたが、西宮母は本作品の宗教的側面について、かなり自覚的なキャラクターだといっていいでしょう。


そしてそれは、硝子にしても結絃にしても同じでしょう。
西宮家の家族は、全員が長い間にいろいろなことをこじらせていて、お互いがお互いに対して悪い影響を与えるような状態になってしまっていました。
もはや、誰がどんな罪を背負っていて、誰がどんな罰をいま受けていて、それらをどうやって償っていけば、もつれた罪と罰の糸を解きほぐして「救い」にいたるのか、まったく分からないような状態だったと言えるのではないでしょうか。

それが、将也がやってきて、それぞれが将也と関わったことで、なぜか全部解きほぐされて、全部解決してしまったわけです。

そしてそのプロセスで「罰」を背負い、贖罪に命を尽くしたのはほとんど将也だけでした
逆に将也はその過程で、結絃にも(バカッター事件等)西宮母にも(ビンタ攻撃)いろいろひどい目に合わされていますが、怒ることも非難することもやり返すこともなく、ただただ淡々とそれらをすべて受け止めていきます。

そして、「西宮家全員の救い」という「結果」を、たったひとりで出しているわけです。

将也は、確かに他の登場人物と比べても極めてバランス悪く、ひとりでものすごい重さの罪を背負わされ、次々と不幸と苦難に見舞われています。

でもそれは、将也の罪だけが重く設定されているというよりはむしろ、

将也が、将也以外の罪まで引き受けて、そしてそれを贖って、将也以外の人間まで救済しているのだ。

と考えたほうが、よほどすっきりとこの物語を理解できるように思う
のです。
タグ:第01話 第55話
posted by sora at 07:08| Comment(2) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。西宮ママのあやまちやゆづちゃんのやらかしは障害児の家族には普通にあること。ことにパッと見は普通の子と変わらない、外見からはわからない子を持っていると特にそうです。だからこそまわりとの関係が拗れていくのを自分もまわりにいるお母さんたちも通ってしまいました。能力以上の負荷をかけて娘を潰す事を自分もやらかしましたから、西宮ママの過ちは見ないようにしてきたフシもあります。


バカッター事件の時に、俺が悪かったんだしな…とゆづちゃんのやらかしを赦して自分が罰を引き受ける事を実際にはできることなの?とか、西宮ママの捨て台詞、それ、自分に言ったら?元はと言えばアンタの選択が起こした娘の悲劇じゃね?と突っ込んじゃうわけです。


西宮ママをすこーしだけ弁護するなら、遠くのろう学校に小学生が一人で電車通学は大変過ぎる、低学年部の付き添いはばあちゃんの負担が大きすぎる、寄宿舎は90分以上の通学時間という縛りがある、通学中に災害が起きたら情報弱者の硝子ちゃん一人ではどうにもできなくなる、養護学校のような広域のシャトルバスがない等の悪条件が揃い踏み。ママの強引さもありますが、小さな障害児の就学環境は今も昔もきついです。

それはさておき、石田君との関わりが西宮家族を変えていったことは確かです。


聾の形を持ち込んだお口のさがないうちの高校生、漫画で位いじめた子がきちんと罪を償ったっていいじゃんと。親が娘に死なせそうになっても目をさませて良かったじゃん、死ぬ選択さえ取れなくて病んだ奴、うちのガッコに山ほどいるわ。だとさ。若い子は石田君の贖罪をニュートラルな成長物語として読み、自殺未遂やらかした硝子ちゃんの心得違いに怒りながら共感し、石田君の救出劇に素直に感動できるようです。
Posted by あらやん at 2014年12月01日 11:09
あらやんさん、

コメントありがとうございます。

私も、このエントリでは深読みしまくっていますが、素直に「いじめっ子といじめられっ子の仲直り、苦労したけど最後に結ばれる希望の物語」という風に読んでも全然構わないと思っています。

西宮家はいろいろこじらせていますが、実際、障害児の家庭にはほんとにいろいろな形がありますよね。
ですから、もちろん私も、西宮母を単純に責めたりはできないと思っています。
Posted by sora at 2014年12月01日 23:01
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