2014年11月23日

最終回、結局登場しなかった島田(2)

既に将也にとっての物語内での役割を終えたと思われていた島田の話題が、第61話から最終話にかけて「蒸し返された」ことには、大きく2つほどの理由があると思います。

まず、第61話で植野が島田の話を持ち出したのは、

「植野にとって」まだ島田と将也(と植野自身)の物語が終わっていなかったから

だったのだ
、と思います。

遊園地回や植野回での植野の行動や思考から分かるとおり、植野はいまだに「将也と島田が親しかった過去」にこだわっていて、それを復元することをなんども試みては失敗しています
それは同時に、植野自身がその「過去」にとらわれてしまって身動きできなくなっていることも示していたのだと思います。

植野は、小学校時代の将也のことが好きでした。
そんな将也を、「島田とともに」裏切って、将也に辛い思いをさせて縁遠くなってしまい、罪の意識を背負い続けていた植野は、高校3年になってようやく意を決して将也に会いに行きます。
でもそこにいたのは、長く続いた疎外によって卑屈ではっきり意見を言わない、「嫌いな方向に変わってしまった」将也、しかも、こともあろうにずっと憎んでいた硝子と親しくなってしまっていた将也でした。


第3巻122ページ、第20話。

植野は、そんな「いまの将也」をある意味否定して、かつての島田と仲が良かったころのやんちゃな将也の亡霊を追いかけ、それを実現するために島田との和解を模索していたんだと思います。

でも、第61話で島田の話をする植野の様子は、それとは違っていました。
第61話の植野は、「島田と将也の和解のため」ではなく、自身が過去を振り切るために、島田による将也救済を語ったのだと思います。和解のために将也救済を利用しようと考えていたのは、植野回の頃まででした。


第61話、6ページ。

それに対して、将也も、いまの率直な島田への気持ちを植野に語ります。
将也のなかで島田が「過去の人」になっているのを確認した植野は「過去を復元すること」が幻想であることをようやく悟ったのでしょう。

このとき植野が同時に、過去のいじめと硝子へのネガティブな感情が消えないことを告白したことも、植野にとってはすべてつながっています。

「過去」を捨てる者は、「現在」に戻ってこなければなりません。
島田の話に続けて植野が語ったことはすべて、「現在」の植野が、「現在」の将也と向き合うために、将也にちゃんと告げなければならないことだったわけです。
それは、佐原カラオケ回で、将也が佐原に硝子いじめを率直に語ったのと、同じ構造です。

そして、将也はそんな「現在の植野」の弱さをぜんぶ当たり前に受け止め、優しい言葉を植野に返しました。
将也はすっかり変わってしまったけれども、そんな「現在の将也」を、この瞬間、改めて植野は惚れ直したのではないか、と思います。


第61話、9ページ。


posted by sora at 07:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
将也が「知らないこと」の3つめは、植野が将也のことを好き“だった”ということになるはずだったと考えることもできますね。
期せずしてそれが事実ではなくなり、したがって口に出すことができなくなってしまったのだとしたら、変わらない・変われないキャラクターとしての植野のコンセプトが、部分的にであれ貫かれているように思われます。
それと同時に、ここ一番で植野が乗り越えられないほどの魅力を放ってみせた将也は、まさしく少年漫画のヒーローですね。
Posted by ジョー at 2014年11月23日 11:27
ジョーさん、

コメントありがとうございます。

はい、私も同意見です。
「2つめ」のときに「あいつらさ あんたのこと好きだったんだよ」と言っています。
当然この流れで言えば、「3つめ」は「私も あんたのこと好きだったんだよ」となるはずで、これは基本的に過去形だったはず。

ところが、「2つめ」に対して、将也が超イケメンなことを言ってしまったものだから、植野にとっては、いまの「変わってしまった」将也のことをうっかりまた好きになってしまいそうになった、だから伝えないで逃げた、そう読み取りたいな、と思っています。
Posted by sora at 2014年11月23日 18:29
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