2014年11月16日

第61話、なんと将也の進路も理容師だった?(3)

さて、将也が第60話ではまだ進路を迷っていたのに、第61話では「理容師」に決めていた、その背景について考察しています。

将也には、もともと漠然と「やがて理容師になる」というイメージはあったようですが、

a)一旦、大学に入ってサラリーマンになるような「モラトリアム」的な進路を選ぶべきだろうか?

b)進路を選ぶときには、立派な理由が必要なんじゃないか?


どうやらこの2つの疑問をずっと持ち続けていた
ように見えます。

そして今回、将也は、上記2つの問いに対していずれも「No」という答えを出し、「今すぐ理容師を目指す」という選択をしたように感じられます。

b)の「立派な理由が必要?」ということについては、1つ前のエントリで触れたとおり、将也は「理由なんて実は本質ではなくて、『目指すものにちゃんと実際になる』ことこそが重要なんだ」という確信にいたったのではないかと思います。
それに、「母親を安心させたい、守りたい」という理由だってちゃんとありますからね。
昏睡から目覚めたとき、そして今回自分の部屋で植野に遭遇したときのリアクションを見れば、実は将也は相当の「お母さんっ子」であることは間違いありません。


第61話、3ページ。

では、なぜ将也はa)の「モラトリアムを選択すべきか?」に対しても「No」という結論を出したのでしょうか?

これについては、前エントリで列挙した「将也の進路選択に影響を与えた要素」のうち、まだ取り上げていない、

2)硝子が東京に出て行くという事実。
6)あまり成績がよくないという現状。


の2つの要素が影響したのではないか、と考えられます。

まず、これまで何度も描写されたとおり、将也の高校3年になってからの成績は良くないです。
夏休みは補習クラスに参加させられる学力水準でしたし、さらに橋崩壊事件、転落、昏睡によって、夏休み後半をほぼすべて棒に振り、2学期についてもしばらく授業に出られませんでした。


第5巻65ページ、第36話。

将也が通う東地高というのは地元の公立高で、竹内の母校でもあってそこそこ偏差値も高いという設定のようですが、それにしても成績がクラスの下位では国公立大学は厳しく、頑張って私立の中堅大学といったところが(進学すると決めた場合の)進学先になるのではないかと思います。
でも、将也は理系でありながら国語も勉強していたことからも分かるとおり、国公立志望でした。
それは、母子家庭である実家の経済状況も影響しているのだろうと思います。

そうなると、非常にカネのかかる私立の理系大学を進路として選べないとすると、国公立にこだわって浪人も辞さないで頑張る、ということになりますが、将也にとっては、そこまでして(親にさらに負担をかけるリスクを犯してまで)「モラトリアム」を得ることにこだわる意味があるのか、ということになっていくでしょう。

また、硝子が2年で資格を取って戻ってくる(だろう)、ということも、モラトリアムを「選ばない」ことに影響した可能性があります

既に高校卒業の時点で硝子は社会人となり、さらにこのままいくと2年で資格を取り、社会人としてさらに自立していくことになるでしょう。
その頃に、自分はまだ大学に入ったばかり、あるいは万が一にもまだ浪人中、みたいな段階に留まっていることだけは避けたい、そんな気持ちが将也のなかにあったとしてもおかしくはないと思います。

さらには、「モラトリアム」を使って会社員などになった場合、その後理容師になるためには、いったん会社員をやめ、また何年か「学生」に戻らなければならないという事実も、硝子が自立していくスピードに対する「遅さ」を感じさせるものだったかもしれません。

そういったことを総合的に考えて、将也は「モラトリアム」を持つことに対しても「No」という答えを出し、「いますぐ理容師を目指す」ことを選択することを決意したのだろう、と思います。

この「職業選択」について、機会があればビジネス的な側面からも改めて書きたいと思いますが、既に店もあり(恐らく初期投資も回収していて)固定客もついている自営業を継ぐ、というのは、決して愚かな選択ではないと私は思います。




ラベル:第36話 第61話
posted by sora at 08:09| Comment(9) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。進学校から職人を選択?と驚きましたが、エントリを見て納得致しました。60話で石田ママが薬を飲んでいた姿を見ましたが、決してゆとりのある事態でないことはわかりました。一巻で想像した石田君自身が見ていた未来図から随分成長したと感慨にふけっております。


硝子ちゃんと再会し、自分と自分の周りを考えるようになれた。ママが築いたサロンのお客も自分の大事な世界のひとつだった。その中には硝子ちゃんもいた。自分の母親との思い出が宝物だったのを知ったら、職人が如何に大事な仕事か思い知ったと思います。


硝子ちゃんが一人前になって、パートナーになったら、シャツの裾だしと襟のタグのひっくり返しはやめてくれますかね。誰にも構われないだらしないバカ男子の象徴的な描写でしたからねえ…薄毛も作れば貫禄を演出できますし。


あと、燃えた170万円の行方が気になります。組合設立の養成施設が格安とは言うものの、決して甘くない学費です。短大行くのとそんなに変わりません。わずかでも燃えカスが換金できていたらママのお金の負担は楽になるでしょうから。
Posted by あらやん at 2014年11月16日 10:42
1ページ目に、将也の手に「杭瀬大理容」といったような文字の書かれたパンフレットがありますので、専門大学へ進むのではないでしょうか。
Posted by アルパッカ at 2014年11月16日 13:02
大学付属の短大や専門学校があることは存じております。試験の結果によっては4大の進学は可能です。いくつかの学校の資料のひとつかも。

石田くん、経営や対税務署のスキルも教わらないとダメでしょうか。硝子ちゃん、税務署からみたら、赤子の手を捻るみたいなもんでしょうしねえ…髪結いの亭主になっちゃう心配もあるけれど…女房働かせて、仕事してるんだかしてないんだかわからない男をバカにして言う言葉ですが、今は死語かな?

Posted by あらやん at 2014年11月16日 13:55
以前から作中に散々出ていた「ハゲ」という単語も、将也が理容師への道を選ぶ為の伏線だった?
将也は自身の頭髪へのコンプレックスを昇華して立派な理容師になってもらいたいものですな(笑)
Posted by 綾野晶 at 2014年11月16日 19:05
皆さん、コメントありがとうございます。

1ページ目で出ている学校名は「杭瀬理容専門学校」だと思います。「大学」ではなさそうです。

これまでの頭髪ネタというと、「ハゲ」のほかに、将也が観覧車回のあとで硝子をほめるときに「髪の毛サラサラだね」と言っているところもありますね。
これらも実は伏線だったのか…と、改めて読むとちょっと思ったりもしますね。
Posted by sora at 2014年11月16日 20:35
正直に言って、将也が教師を目指さなかったことに少しホッとしています。将也は、良くも悪くも一対一の対人関係が得意で、大勢の人の心情を想像するのは苦手な性格なのだと思います。たとえ教師になっても、なんとなく喜多先生と同じ過ちを繰り返してしまいそうな気がしていたので…

逆に、将也が理容師を目指す展開を見てとても安心しました。母親のことは大きかったと思いますが、性格的にもよく合っていると感じます。将也が自分の人生を考えた時に、最も無理なく将来を想像できる選択だったのだと思っています。あとは、将也に器用さとセンスがあることを祈るだけですね!
Posted by alps at 2014年11月16日 21:38
もし将也が理容師になって働きだしそこに硝子も一緒になったら素敵だなと思います。

そんで実家に帰るか何かで植野が髪を切りにきて将也が「駅前のおしゃれなとこにでも行け」っていって硝子に頭をぽこってされるリフレインがあっても面白いなと。

ネガティブ未来予想図で石田母の写真が若いという事は石田母は最近ではなくかなり前から薬を飲んでいたかも知れないですね。そういう背景を考えたら何故悪がきだった将也が進学校に行っていたのかなんとなくわかる気がします。

それにしても将也、結構なんでもお母さんに話しちゃうんですね。かなりのお母さんっ子みたいですね。
Posted by ぽこ at 2014年11月17日 07:09
竹内を見て教師になりたいと思うのか…?
とずっと思っていたのでここにきての理容師志望は嬉しいですね
Posted by 永束体型 at 2014年11月17日 09:19
皆さん、コメントありがとうございます。

皆さん、意外と将也教師説にはネガティブだったんですね。私は悪くないと思っていたんですが…(笑)。

でも、結果が出てしまえば、将也=理容師というのはとてもしっくり来ますね。

ぽこさんがおっしゃるとおり、第1巻の悲惨な未来予想図の母親はかなり若いんですよね。
将也が、母親の持病?を心配していたことが、こういったところからも伺えそうです。
Posted by sora at 2014年11月17日 23:15
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