2014年11月09日

第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(2)

第2巻での登場時から、自殺決行後の病院で石田母に土下座するところまで、結絃は硝子に対して「自分がいなければ何もできない弱い存在」「だからオレが父親的役割を担って守ってやらなきゃいけないんだ」と、「硝子の保護者であること」にアイデンティティと使命感を持っていたと考えられます。

でも、そんな結絃の想いは、その土下座をしたのと同じ第44話の後半、硝子に対する植野の暴行騒動のなかで、決定的に否定されます。

植野は暴行の合間に、以前、遊園地回のあと硝子から送られた手紙を、嫌がらせの目的で朗読します。


第6巻34ページ、第44話。

私のせいで石を投げられてしまう妹のために
 みんなと同じようになりたくて 普通の子達と一緒にいたかった
 でも 同時に クラスのみんなに 迷惑がかかってしまった
 二つの気持ちの間で 葛藤するうちに
 作り笑いを続けることに 精一杯になってしまった」


そこには、硝子の結絃への思いと、その思いがゆえに硝子が追いつめられていった様子が書かれていました。

第51話の硝子回でも描かれましたが、硝子が水門小で「普通になりたい」と願った理由のかなりの部分は、「自分がもし障害者でなかったら当たり前に手に入ったはずの『当たり前の幸せな毎日』を、妹や家族に取り戻したい」という思いが占めていました

だからこそ硝子は無理をしてクラスメートの中に入っていこうとし、無理をして合唱コンクールに参加しようとしたわけですが、結果的にはそれがクラスメートの不興を買って、いじめられるようになってしまったわけです。

つまり、硝子が水門小で無理をしていっぱいいっぱいになり、あげくにいじめられるようになってしまったのは、硝子が障害者で弱いから、なんていう単純な(恐らく結絃が考えていたであろう)理由ではなく、それどころか実は、「妹である結絃が嫌な思いをしないように、今よりも幸せに生きられるように、障害者の妹だとバカにされないように」、そんな妹を思う気持ちがゆえにそういう結末を招いてしまった部分も少なからずあった、そういうことだったわけです。

硝子が植野に送った手紙を聞かされた結絃は、そのことを初めて知らされます。
それを聞いた結絃は、ショックだったことでしょう。

守っているつもりが、守られていた。

このとき、結絃のなかで「自分は硝子の保護者である」というアイデンティティは木っ端微塵に吹き飛んだだろうと思います。
それどころか「オレが、姉を『守る』なんて考えていたことはおこがましかった」と、これまでの自分を積極的に否定せざるを得ないところまで追い込まれただろうと思います。

だからこそ、そのあとの植野の硝子への暴行を、結絃は「(自分が)止めていいのか わからなかった」わけです。


第6巻48ページ、第45話。


posted by sora at 07:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「第51話の硝子回でも描かれましたが~」のところ、『妹』が『弟』になってますよ。


壁の写真を剥がしてる所で、「死骸の写真を張れば死にたくなくなる」と思った自分の考えが間違っていたことに気付いて『守っているつもりが、守れなかった』というのも一因なのかもしれませんね…
Posted by ポプル at 2014年11月09日 08:20
ポプルさん、

コメントありがとうございます。

妹→弟のところは修正しました。

おっしゃるとおり、「守っているつもりが、守られていた」に加えて、「守っていたつもりだったのに、守れなかった」という点も大きかったんだろうと思います。
飛び降りの前にも、不穏な兆候を見破れなかったわけですし。
Posted by sora at 2014年11月09日 08:35
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