2014年11月02日

第59話は第23話のリフレインになっている?(3)

音楽のフーガとかでもそうですが、リフレイン構造には「共通点」と「相違点」があり、この2つがうまく組み合わされることによって美しい音楽が生まれます。

同じように、この第23話と第59話のリフレイン構造についても、ある1つの「相違点」がうまく盛り込まれていて、実にきれいな構成の妙を示していることに気づきます。

第23話で、硝子のメッセージがなぜ伝わらなかったのかといえば、「将也が聞き取りミスをしたから」でした。
なぜ聞き取りミスをしたのかといえば、「硝子が口話で伝えようとしたから」でした。
硝子は障害のために、口話がうまくありません。だから、硝子の口話を将也は聞き取れず、硝子の渾身のメッセージはうまく伝わりませんでした。

一方、第59話で、硝子のメッセージがなぜ伝わらなかったのかといえば、「将也が手話の読み取りミスをしたから」でした。
将也は硝子の「理容師になりたい」という手話を誤読して、「美容師になりたい」と読み取ってしまいました。「美容師」だと、石田母とは違う仕事になってしまいますから、将也も「じゃあうちと同じだ」という風に理解ができず、そこから誤解が広がっていってしまって会話が破綻してしまいました。
このように、なぜ読み取りミスをしたのかといえば、「将也が手話にそこまで習熟していなかったから」でした。
将也は手話については、独学で勉強したとは思えないくらい習熟していますが、それでも「第二言語」であってネイティブではありませんから、一定の確率で誤読が生じるでしょう
「理容師・美容師」というのは、どうやら将也にとってあまり関心のない領域のようですから、詳しく知らなかったようだ、ということが第59話の将也のリアクションで示されています(自宅の仕事ではありますが…)
そんなわけで、硝子の手話を将也は正しく読み取れず、硝子の渾身のメッセージは、やはりうまく伝わりませんでした。(まあ、今回「伝わらなかった」理由は、もちろんそれだけではありませんが…)

つまり、第23話と第59話のリフレイン構造では、数多くの「共通点」と同時に、

第23話では、硝子はメッセージを伝えるために「口話を」選択したが、「硝子の」障害のために将也に正しく伝わらなかった。


第3巻183ページ、第23話。

第59話では、硝子はメッセージを伝えるために「手話を」選択したが、「将也の」手話読解力が完璧ではないために将也に正しく伝わらなかった。

KOEKATA_59_009b.jpg
第59話、9ページ。

という、非常に対照的で興味深い「相違点」が盛り込まれているわけです。

第23話も第59話も、恋愛とか進路といった前向きな話題を使って、将也と硝子のコミュニケーションの断絶を描くという意味では、見た目よりも残酷な構造が内包されていると思いますが、そのコミュニケーションの断絶が本質的に「硝子の障害ゆえに」発生している、ということを、第23話では「硝子の側の問題」として、第59話では「将也の側の問題」として描かれており、実に巧妙なリフレイン構造だと感嘆せずにはいられません。
タグ:第59話 第23話
posted by sora at 07:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする
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