植野の行動原理とは、
1)「嫌い」という感情は常にストレートに表し、行動に移すことができる。
2)「好き」という感情はどうしてもストレートに表現できず、行動に移すことがものすごく苦手で下手くそ。
これだけです。
実は、これだけで植野のこれまでの行動はほとんどすべて説明できることに気づきました。
小学校時代、植野が喜多の手話提案を潰そうとしたり、それを受け入れた佐原を不登校に追い込んだり、硝子の筆談ノートに悪口を書いたりしたのは、硝子のことや硝子を「世話すること」、さらに自分の面子をつぶした佐原を「嫌い」という感情をストレートに行動に移した結果です。
一方で、将也のことを「好き」という感情は、小学校を通じて一度もちゃんと表現することができず、悪口ばかりで将也には伝わりませんでした。
加えて、将也転落後も将也を救うことができず、「お前童貞だろ」なんていう言葉しかかけられなかったのも、これまた将也を「好き」という感情に基づく行動が徹底して苦手・下手だったからだと言えます。
高校での再会時も同じです。
植野にとって、将也に対するアプローチは「好き」という感情に基づく行動になるので、いきなり下手くそになるわけです。
猫ポーチ事件で、「なんであれほどストレートな性格の植野が手紙なんて書くんだ」「なんで身柄を明かさずにこっそり猫ポーチを渡すんだ」みたいな話がありますが、彼女にとって「嫌い」ではなく「好き」に基づいて行動することは、とんでもなく難しくて勇気のいること(しかも下手くそなこと)だったんだと考えれば説明がつきます。
それで、わざわざ手の込んだ「作戦」を立てたわけです。実際、猫ポーチを渡すときも汗だくですしね。
一方で、永束が勘違いして口説きに来たときの反応は「嫌い」に基づいているため、ものすごく明快で行動も迅速です(笑)。
そう考えると、将也との再会に成功したとき、2回も「私のこと嫌い?」と聞いて、2回目に「嫌い」と答えてもらって満足した場面も、本当は「私のこと好き?(もしくは、私はあなたのことが好き)」と聞くべきなのに「嫌い」に置き換えてしまっていますし、「嫌い」と返してもらって妙に満足してもいます。
また、硝子を見かけていきなり悪態をつき始めたり、補聴器を奪ったりしたのも、硝子のことを「嫌い」という感情を共有することで将也との距離を縮めたい、という植野の屈折した愛情表現だと考えられますね。
そして、遊園地編の観覧車で「西宮さんとちゃんと話す」の内容が、私はあんたのことが「嫌い」だったのも、自己否定の殻に閉じ籠る硝子をいきなりビンタしたのも、降りてきて将也に話しかけられたときに「嫌いなものが同じ」と「嫌い」ネタで返しているのも、植野の行動原理がすべて「嫌い」という感情によってたっていることを示しています。

第4巻75ページ、第27話。
そして、植野の事実上2回目の将也への「告白」は、川井に過去のいじめを暴露されたあと、植野が橋につれていこうとしたときです。
このときも、やっぱり植野は「好き」とは言えなくて、「一応 「見てるだけ」は もう嫌って 思ってるから」と、「嫌い」のほうに話を寄せて、さらに「一応」と逃げを打ちながら、真っ赤に赤面しています。って、どんだけ「好き」の側の原理で行動するのが苦手なんだか(笑)。

第38話、17ページ。
さらに、この橋での植野の挑戦が失敗したときも「そのリクツはキライ」と、ここでも「嫌い」の論理を見せ、最後に「自分がやんなる」と言って去っていきます。
そして第44話。「好き」な将也を奪われ、傷つけた「嫌い」な硝子に対して、植野が修羅となったのは、こうやって考えてみればまったく自然なことだということになります。
これで、植野が将也からの信頼を再度かちとることは極めて厳しくなったのではないかと思いますが、植野の3回目の「超不器用な「好き」のメッセージ」が発せられることはあるのでしょうか?

逆に硝子は嫌いという感情を極端に表に出さない(そもそも持っていない?)ので、植野としてはそんなわけないだろと思ってあそこまで攻撃的になってしまうのかもしれません。
唯一救いになりそうなのは、そんな自分のことも「嫌い」ということでしょうか。
それから、猫ポーチ事件に関連して気になったのですが、この時植野は「猫は何を考えているかわからないからそこが好き」と、すごく自然に「好き」という感情を表明していますよね。あれは本心だったのでしょうか?
普通に考えれば、この時の植野は猫をかぶっていて、このセリフも客としてきた将也たちへのリップサービスに過ぎないのでしょうが(そもそも普段の植野は本心を明かさない相手を嫌っているようですし)、植野の性格からして好きでもない猫の店でバイトをするとは思えないので、このセリフはやっぱり本心だとも考えられます。だとすると、あのバイト先は植野が唯一「好き」という感情に基づいて行動できる場所で、だからこそ告白の舞台に選んだのかも・・・。
猫ポーチ事件はその後何の伏線にもなっておらず、植野の思惑は謎のままですが、もし植野が本当に「何を考えているかわからない」相手を好きになれるのであれば、硝子と和解する可能性はまだ残っているのかもしれません。
sinさん、
そういえば、猫カフェでは「好き」という気持ちについて率直に語っていましたが、それこそが植野が猫カフェでバイトしている理由かもしれませんね。
猫といっしょにいれば、「好き」という気持ちに対しても素直に向かうことができる、そういうことなのかもしれません。
ジョーさん、
大丈夫でしょう(笑)。
植野はあくまでも将也のことは「好き」なので、もし病室にいったらきっと橋に行くときの前みたいにモジモジする植野を見られるんじゃないかと思います。
バイト先でも、しょっちゅう目が痒くなる、と言って眼鏡でガードしてますし。
要するに、
猫が大好きだけど積極的に触れ合おうとするとむず痒くなるから、眼鏡・マスク等が必須で本当の顔は見せられない、
という事ですね。
将也に対する態度と全く同じ(笑)
硝子と植野が聲の形のダブルヒロインだという
意見もよく聞きますが個人的にいえば植野は一貫してヒロイン・硝子のアンチテーゼですね。
容姿も、ちょっとウェーブがかかっている硝子に対し、植野はサラサラの黒髪ロングヘア、ちょっとぽっちゃりの硝子にスレンダーな植野、フェミニンなフレアスカートが似合う硝子に対し、自慢のおみ足をこれでもかとアピールするホットパンツ、グラマーな硝子に対し・・・、これ以上書くと上野にぼこられるのでもうやめます(笑)
性格ももういわずもがな、でしょう。
ところが恋愛感情に対しては2人とも同じスタンス
だった。硝子が白なら、植野は黒。しかしこと「恋愛」というカテゴリーには2人とも「グレー」だった訳で(笑)
これじゃあラブコメにはなりませんね、どう転んでも。
もし植野が「私は誰が何と言おうとアンタが好きなの!」なんてイケイケで将也にアプローチし続けてたら、さすがの硝子も黙ってないんじゃないかなぁ?個人的に硝子はかなりやきもち焼きっぽいし。
・・・っていう展開は、もう望めないんでしょうね。
なんにせよ、植野は「よく動く」「動かしやすい」キャラであることは間違いありませんね。
実際、硝子が動かない代わりに動いたり、内面を代弁したり(かなりメチャクチャですが)、動かすために叱咤激励?したり(ものすごくメチャクチャですが)するキャラとして植野がいるのは物語的には間違いのないところです。
その一方で、将也に対してあまりうまく動かれると石田-硝子の軸がぶれてしまうので、将也に対しては動きにくい設定が必要で、それで「好きという感情に対しては素直に行動できない」ということになっているのだと思います。