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2014年06月06日

第39話で回収された佐原の伏線とは?

第39話の話題を続けたいと思います。

第39話は非常にショッキングな内容ですが、同時に、物語としてはいろいろな伏線を回収したり新たに提示したりしている、非常に「忙しい」回でもあります。

そんななかで今回、佐原について注目してみたいと思います。
佐原は、今回とばっちりのような形で川井、植野、そして将也からも暴言を投げつけられ、かわいそうとしか言い様のない状況でしたが、この修羅場で、実はかなりの伏線が回収されています


(第39話10ページ)

それは一言で言えば、読者が漠然と抱いていた佐原への違和感の正体が明らかになった、ということです。一般的な意味で言えば伏線とも呼べないような伏線ですが、今回きっちりと回収されました。

まず、「違和感」のその1は、植野との和解と友情です。
26話で、植野は高校の服飾デザインのコンクール事件をきっかけに、佐原と「仲良くなれた」と言いました。
それと対応するように、第25話では「怖いかどうか乗ってから決めることにした」という佐原の発言がありました。
これまでの物語では、この2つの発言をベースに、シンプルに「佐原と植野は仲良くなった」という扱いがされてきましたが、その割に植野の佐原に対する発言はいまだに上から目線だし、佐原にしてもそんな簡単に怖さが消えるものなのか、といった「違和感」がありました。

この39話で、やはり植野は佐原を対等というよりは見下した目で見ていたこと(植野の語った「仲良くなれた」という物語は、植野フィルタにより都合よく歪められた部分があったこと)、佐原は「怖い」という感情を残しながらも「大人の対応」でそれを乗り越え友達関係を構築していたことが明らかになりました。
これまで描かれてきた二人の関係に対する「違和感」(それは、まさに植野が発した「友達ごっこ」という言葉がもっともぴったりくるでしょう)が伏線回収されたといえます。

もう1つの「違和感」は、小中学時代と高校になってからの佐原のキャラのあまりの変わり具合に対するものです。

植野グループからの、佐原へのいじめがそれほど熾烈だったり長期にわたっていたような描写はありません。
にも関わらず(かなりあっという間に)不登校になり、それが中学校まで続いていた、ということからすると、佐原はメンタル的に強くなく、ダメージを長く引っ張るキャラクターとして描かれています。

ところが、高校生で将也が再会した佐原は、後輩に慕われる頼もしい先輩となり、さばさばとして姉御風さえ吹かせている雰囲気です。トラウマの源であるはずの植野との関係修復に踏み込む勇気も兼ね備えていました。

あれ、これってキャラとして矛盾してるんじゃないの?という議論(違和感)はずっとあったわけですが、今回、川井と植野から追い込まれ、さらには将也からトラウマをえぐる決定的な一言を投げ込まれ、ついに佐原の深層に隠れていた「小学校時代の佐原」と同じ素顔があらわにされました。


(第39話12ページ)


(第1巻93ページ、第2話)

小学校のときとまったく同じ表情で、まったく同じ相手(硝子)に対してほとんど同じセリフをはきながら、同じように去っていく佐原。
やはり佐原は、(キャラ崩壊などではなく)小学校のときと同じ、あの佐原だった。
でも、その「弱さ」を必死に克服して、ほとんど以前の面影がなくなるくらいに「成長」した、それが高校生になった佐原だったわけです。

そう考えると、もう1つの違和感という名の伏線である、「佐原のハイヒール」の意味もわかってきます。
背がものすごく伸びた佐原が、なぜさらにその背の高さを強調するハイヒールのブーツをいつもはいているのか、というのもずっと議論されてきたことですが、これはやはり、自分の弱さを「克服」し強くなるための「道具」の1つであって、伸びた背をさらに強調することで、ある意味その部分から「誰にも負けない強さ」を得ようとしている、少し悪い言い方をすると、佐原の強がりの象徴だった、ということになります。

これらの佐原の問題は、いじめ加害者であった将也、植野、川井の問題とは違い、誰かから責められる類いのものではありません。
でもやはり、佐原自身にとっては乗り越えなければならない課題であることは間違いありません。

高校生になった佐原は、伸びた背をうまく自信の源にして「弱さ」を克服してきたといえますが、こんどは逆に、自分の「弱さ」を改めて直視し、その「弱さ」も受け入れて大人になっていかなければならない段階に入ってきたのだと思います。

この39話で、佐原に関するさまざまな「違和感」という名の伏線が回収されましたが、こんどは、このあと佐原がどう変わるか、ハイヒールは脱ぐのか、植野との関係は、そういったさまざまな伏線が新たに張られました

このあとも、佐原の成長に目が離せません。
ここ最近、たまに硝子や結絃とからむ以外は空気なキャラになってきていましたが、ここへきてまた物語的に「活躍」できる余地が生まれてきたように思います。
posted by sora at 21:34 | Comment(7) | TrackBack(0) | 第5巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拒絶モードに入った石田君の餌食にされてしまった佐原さんでしたね。身長という目に見える成長がいかに脆かったかをさらけ出してしまいました。
全体としては逃げ癖を指摘された直後にあえなく逃げてしまった形になりましたが、大声で自分の気持ちを叫ぶことができるようになった?ところに彼女の見えない成長もあったのかなと思います。
Posted by ジョー at 2014年06月06日 22:07
ジョーさん、

コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりだと思います。
そして、少し前で、硝子から「どうしたの?」と聞かれて(小学校時代は筆談ノートで、今回は手話で)、やはり説明せずにそのまま逃げてしまった形になっているので、小学校時代の「弱かった佐原」を完全にトレースして再現させていることにも気づきます。

こういう対比構図を次々とうまく出してくるところに大今先生の才能を感じます。

今回、硝子にはやはり言えなかったけれども、植野と川井には「言えた」、そこに成長があるとすれば、この後、硝子と再会したときにはどんなやりとりがあるのか、今から楽しみです。
Posted by sora at 2014年06月07日 09:57
確かに39話では佐原の「伏線回収」も印象的でした。思えば、佐原探しの15
話の段階で佐原のその後について、グレてレディースになった、トラウマを呼び起こされる硝子と石田との対面は
拒否する、などなどありそうな話から
荒唐無稽なものまで様々な予想が立てられましたが、あまりに出来過ぎな高校生佐原に拍子抜けさせられました。
本当にこれだけなのか?この作者がこんなに「甘い」人なのか?と思ってたら忘れた頃にひっくり返してくれましたね。
でも、やっぱり、個人的に感情移入するのは永束くん。川井の「きゃっ、汚い、触らないで」はモテない暗い学生時代を送ったすべての男性読者のトラウマをえぐってくれたのではないでしょうか(笑)
Posted by レッドバロン at 2014年06月08日 20:17
レッドバロンさん、

コメントありがとうございます。

佐原については、基本的にはとばっちりだと思いますし、あれだけの場面で「逃げる」のは、別に弱いとかそういうレベルじゃなくて誰でもそうだろう、とも思うんですよね。

でもやはり、「小中の弱かった佐原はどこに隠れていたのか」という意味で、伏線回収になったと思います。

次に永束君が出てくるのはいつなんでしょうね。
もう映画撮影は完全につぶれてしまうんでしょうか。
映画撮影がつぶれたら、また硝子が「自分のせいだ」と自分を責める展開になりそうで辛いところですが。

Posted by sora at 2014年06月08日 20:24
私なりに佐原の現在のスタイルについて補足させて下さい

女子高というところは、端的に言ってしまうと、男組が少なからず存在します
宝塚に憧れる女性がいなくならないのと理由はほぼ同じです

筆者さんの言うように「強さを強調するアイテム」としてのハイヒールもその通りだと思いますが
「そういうキャラ」を演じる、またはそれに依ることで太陽学園での地位を獲得したのではないかと思います

そしてその地位を得たことで、植野も無視出来ない存在になり表面上和解した、のだと思います
(西宮いじめを肯定している植野にとって西宮側に立った人間ですし、好意を寄せていた石田に対してさえ真摯な態度で謝罪はしていないので、佐原に対しても正式な和解は出来ていないでしょう)
作中で佐原を探しに行った時、佐原を知る関係者はいずれも後輩、学年が違うのにも関わらず知られていることが伺えます
Posted by 風呂爺 at 2014年06月13日 00:51
高校生佐原は女子高でモテる先輩のステレオタイプ
そのものらしいですからね(高身長・ショートヘア・ボーイッシュ)

で、仲良しになればボディタッチやら連れションやら
ボディタッチは当たり前、疑似恋愛じみた関係に発展することもあるようです(もっとも、卒業すればきれいさっぱり忘れて、「ノーマル」に戻るようですが)

そういえば、佐原も17話で硝子にしっかりバストタッチしてましたね(笑)
もしや、このマンガのラストは石田と硝子が結ばれて・・ではなく佐原と硝子ラストになるのではないか?かなり妖しいムードを振りまいているし・・と
ひそかに危惧する今日このごろです(笑)。

話のソースは自らも女子高出身のコラムニスト・漫画家の辛酸なめ子氏の著作「女子高育ち」(ちくまプリマー新書)より。

http://www.amazon.co.jp/%E5%A5%B3%E5%AD%90%E6%A0%A1%E8%82%B2%E3%81%A1-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%BE%9B%E9%85%B8-%E3%81%AA%E3%82%81%E5%AD%90/dp/4480688587
Posted by レッド・バロン at 2014年06月13日 19:40
風呂爺さん、レッド・バロンさん、

コメントありがとうございます。
そうなんですよね、おそらく高校の佐原というのは、

・女子高に入った
・急に背が伸びた
・中性的な外見

といったあたりがうまく「はまって」、うまい具合にカースト上位に自動的にあがれて人気が出て、それで自信をつけることができた、そういうキャラとして描かれているんだと思います。

このあたりも、隠れ設定っぽいですけどさすが女性の作者だなあと感じるところですね。
Posted by sora at 2014年06月14日 14:57
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