その結論にいたった状況証拠は前のエントリのとおりですが、もう1つ、この仮説を補強するネタを書きたいと思います。
まず第一に、このコマの硝子の笑顔です。

ここで、将也も結絃もこの笑顔に驚いています。(第2巻184~188ページ、第14話)
将也「西宮 あんな風に笑うんだ 初めて見た…
(中略)でも あの笑顔を見てたら いつか忘れてしまうんじゃないか?」
結絃「…この、硝子の- 笑顔を見てたら 忘れてしまうんじゃないだろうか?」
そして、二人ともが「過去の嫌な思い出を忘れてしまいそうな笑顔」と表現しています。
特に、毎日を硝子と過ごしている結絃にさえ、「見たことがないような笑顔」として映っていることは注目に値します。
これはつまり、硝子にとっても「これまでに経験したことがないような感情が表れた笑顔」であり、「過去の嫌な思い出を忘れたことを表す笑顔」であることを表している、と言えるでしょう。
つまり、硝子はこの瞬間に、将也との過去の辛かったことをやすやすと乗り越え、将也に対する明確な好意(たぶんそれはほぼ恋愛感情)をもつにいたった。
だからこそ、あの笑顔が、ほんとうに特別な、結絃でさえ見たことがなく、そこにいた、過去に対してさまざまな思惑のある誰もが、その過去を忘れてしまいそうになるような笑顔になったのだ、と思います。
それと比較すると、その前の週に、橋で「おかしいね」とか言って照れ隠しに鯉のえさのパンを見せ合うシーンなどで見せる笑顔は非常にぎこちなく、好意そのものというよりは「好意の芽生える兆し」を表しているように見えます。
(ついでに、ここで「鯉にえさをやることで恋が育つ」というのは、きっと大今先生得意の暗喩なのでしょうね。)
そう考えて改めて読んでみると、実はかなり明確に、この2巻の巻末で(改めて読むと非常に長い尺を贅沢に使ったエピソードで)「好きになった瞬間」が克明に描かれているように見えてくるから不思議ですね。
そして、結絃もそれに気づいたからこそ、その直後の橋での将也との出会いで、「恋する少女」の表情になっている硝子を、橋の下から温かく見守っていたのでしょうね。
それに対して、メアドが聞きたい聞きたいという「しょーもないレベル」の会話に必死で、硝子の表情の変化にまったく気づかない(だから第15話の将也目線の硝子の顔が結絃から見えているものとまったく違う)将也の鈍感なこと(笑)。
さて、ではなぜあの「ういろうを持っていって特別の笑顔を返した瞬間」に好意が芽生えたのか、というなぞが残っていますが、それについては次のエントリで。
ラベル:第14話
そうすると、第3巻の第20話『理由』から第21話『友だちごっこ』にかけて硝子が花屋でガーデンピックを選んでいる様子が描かれていますが、その理由・動機も見直さなければならなくなりますね。
いうまでもなく、硝子は将也と再会する時までは、友だち付き合いがほとんどなかったので、将也からもらった猫ポーチは、おそらく硝子にとっては「初めての(家族以外からの)プレゼント」だったと思われます。
それだけでも十分嬉しかった思われますが、まして、それが好意を寄せている異性からのプレゼントであれば。
というわけで、「単にお礼をしよう」という動機でなく「この機会にもっと親密になりたい」動機で一生懸命、選んでいたことになります。
となれば、その直後の植野と将也の修羅場を目の当たりにした後、将也に「またね」を返さなかった理由も一層ハッキリしてきますね。
さらなる理由は次回考察されるでしょうが
おそらく僕も「同じこと考えてた」です(笑)。
でも…
「西宮 あんな風に笑うんだ」
じゃなくて、将也、君が笑顔を与えたんだよ~
と言いたくなります!この朴念仁!
コメントありがとうございます。
ぽてとさんのおっしゃってるポイントは、この後のエントリで考察する予定だった部分です(笑)。
猫ポーチのお返しだけでなく、佐原探しに強引に同行したときやそのときの結絃とのやりとり、硝子からの初メールとかも全部「見直し」が必要ですね。
このういろうのチョイスがおそらく西宮母によるものだろうということは私も同意です。(これもエントリにするかもしれません。)
ういろうが出てきて硝子もとまどってるみたいですからね(笑)。
そして、「あの笑顔」、実は将也のおかげでできた笑顔なんだ、ということ、それに対する将也の鈍感さ、ここは感動するポイントじゃなくてコミックを叩きつけるポイントだったのかもしれません(笑)。
・将也が結絃を保護し、その後も面倒を見てくれた
・将也が硝子の捜索に協力してくれた
事に対するお礼として硝子に持たせたと思っていました。
でも、この一連のコメント内での「ういろうが出てきて硝子もとまどってる」でハッとして、改めて第2巻の後半を読み直して、「ういろう」に込められたもう一つの意味に気がつきました。
そういうことだったのですね!
当事者には敢えて伝えないで、関係者の間で交わす、これもまた一つの『聲の形』。
一体、何通りの『聲の形』を用意しているのでしょうか?
私はういろうが入っていることを硝子は知らなかったんじゃないかと思っています。
でもぽてとさんがおっしゃってる「もう1つの意味」というのはちょっと分からなかったですね。
(西宮母から将也への和解のメッセージ、といったところでしょうか。)