
いったい、結絃の「用事」って何だったのでしょうか?
そしてまた、なぜ結絃はその「用事」を終わらせることなく帰ろうとしたのでしょうか?
これは実は簡単です。
来訪時、結絃が持っているものをよく見てみましょう。第3巻146ページです。

結絃が手提げの紙バッグを持っているのが分かります。
そしてこれは、よくみると、前話(第21話)で硝子が「猫ポーチ」のお返しとして将也のために買ってきたプレゼントであることに気づきます。
将也は、せっかく硝子がプレゼントを持ってきた日の橋に、再会してから初めて行かなかったのがこの日だったわけです。
つまり、結絃の「用事」とは、硝子から託されたお返しのプレゼントを、将也に渡すことだった、ということになります。
こんな「用事」をわざわざ結絃が自分から買って出てやるとは到底考えられない(次の週に橋で渡せばいいわけですから)ので、硝子が結絃に頼んで持っていってもらったということになるでしょうね。
でも、なぜ硝子はそんなことをしたのでしょうか?
そしてなぜ、結絃は実際にはプレゼントを渡さずに帰ろうとしたのでしょうか?
硝子は、前の月曜日、植野と将也との「修羅場」に遭遇して、しかも翌日に将也が橋に初めてこなかったことで、もう将也は自分からは離れていってしまうかもしれない、と考えたのではないでしょうか。(そしてそういう状態になったことで初めて自分の中の将也への気持ちに気づいて、翌週の「うきぃ」につながったともいえますが)
だから、それならお返しだけ渡して、その後橋に来なくなって終わりなら仕方ない、という気持ちで、プレゼントを結絃に託したのではないかと推理できます。
一方、結絃は、この時点で植野が将也のことを好きだということを知っています。
さらに、硝子から話を聞いているかどうかは分かりませんが、もしかすると月曜日に「植野と再会した」みたいなことくらいは結絃に話したかもしれません。
いずれにせよ、結絃は、将也をめぐる硝子と植野の三角関係を察して、それが将也が橋に来ず、また硝子がプレゼントを自分に託した理由なのだろうと考えたのではないでしょうか。
そこで結絃は、将也に植野のことについて聞きました。
ここで、もし将也が植野のことを好き、もしくはつきあっていると答えたなら、結絃はプレゼントを渡して帰ったと思います。
でも、将也は「友だち以下」とまで言って否定しました。
一方で結絃は、将也が猫ポーチを硝子にプレゼントしようとしているときのそぶりから、将也は無意識のうちに硝子に惹かれていることに気づいており、さらに橋での「ニッコォ!」で、硝子も将也に好意を持っていることにも気づいています。
こういった状況を総合的に勘案して、結絃はあえてプレゼントを渡さず、そのまま持ち帰って、硝子自身が橋で渡すように促すことに決めたんだと思います。
実際には、そのあとで植野が登場して、結絃は将也と植野の関係をより深く知ることになるわけですけどね。
ラベル:第22話