考えてみると、最初の再会のときに、最後に硝子が「またね」とやってくれたからこそ、将也は「また会っていいのかも」と思い、火曜日ごとに手話サークルに通った(そのたびに結絃に邪魔されましたが)わけです。
そして、第3巻70ページ、第18話では、硝子からの「小学時代のクラスメートで自分が会いたい人はいないのか」という問いかけに、将也のトラウマスイッチが入ってしまってどなりつけられてしまった後ですら、硝子は「またね」とやって、結絃から「”またね”じゃねーって ねーちゃん!」と怒られています。(ここで将也が「やさしい」とか思ってるところが妙な味わいをかもし出していますが(笑))
そんな硝子が、唯一、ふだんと違ったリアクションをとったのが、まさに第21話、植野と将也のやりとりを目の前で見せつけられた後です。
補聴器を奪われ、何も聞こえない状態で激しく何かを言う植野、顔面蒼白の将也。
植野が去った後、硝子は将也に、いったいどんな話をしていたのかを聞きますが、将也はごまかして答えようとしない。
ここで硝子にしては珍しく、強い口調で(実際には手話ですが)将也に話してくれと迫るのですが、それでも答えず、去っていく将也に対して…
将也が「また」と言って「またね」の手話をして見せたにもかかわらず、硝子はここで初めて、「またね」を返さず、ただ愛想笑いを浮かべただけで見送ったのです(第3巻132~134ページ、第21話)。
将也も明らかに状況の異様さを察知していて、「またね」が返ってこなかったことにショックを受けていることが分かります。
なぜ硝子は「またね」を返さなかったのでしょうか?
簡単にいえば、植野と何を話していたか知りたかったのに教えてくれなかったからがっかりした、ということなんでしょうが、たぶんもう少し深いところに理由はあるでしょう。
こちらのカレンダーを見れば分かるとおり、この「事件」は、第18話で将也が「会いたいクラスメートはいない!」と激高した日から1週間たっていません。
会いたいクラスメートがいないはずだった将也が、目の前でかつてのクラスメートの植野と痴話げんかっぽいことをして、修羅場っぽくなっている。
(恐らく、硝子は植野が将也のことをかつて好きだったことも気づいていたでしょう。)
そして、将也に何が起こったのか、何を話したのかを聞いても、何も話してくれない。
これはいよいよ何かありそうだ。
硝子は、将也と植野はつきあっていて、もしかしたらそれを自分が邪魔しているのかもしれない、と感じたのではないでしょうか。
だから、将也の「またね」に対して、「またね」と返さず、愛想笑いだけを返したのではないでしょうか。
そして、この事件こそが、恐らく硝子自身の将也への想いが恋愛感情であることを、硝子が自覚するきっかけになったんじゃないかと思います。
そしてうきぃへ。
第21話語りはまだ続きます。
ラベル:第21話
納得しかありません。