さて、今回はこの第21話をとりあげたいと思います。
将也の自転車を転倒させてまで、強引に西宮と再会をはたした植野が、将也をdisりながら笑っているのですが、なぜかだんだん泣き笑いになっていく、単行本130ページ~131ページの場面です。

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このあと、立ち去った植野は泣き笑いどころか思いっきり泣きじゃくっていたところを将也に目撃されるわけですが。
なぜ、ここで笑っていたのが泣き顔になっていったのか、ちょっと考えてみます。
まず、植野は将也のことが好きだった、というのが前提にありますね。
そして、何らかのきっかけで(ここが実はいまだに物語の中で謎ですが)その想いが再び盛り上がって、猫耳での出会いを演出したり、猫ポーチに「ずっと好きでした」という手紙を入れたり、さらには川井を通じてメアドを渡そうとしたり、あげくにそれらがことごとく失敗しても、直接学校に乗り込んで自転車の後ろに乗っかる、と、猛烈なアプローチをしかけてきたという場面なわけです。
ところが、想いをこめた肝心の猫ポーチは、手紙が間違って永束に渡ったどころか、本体?は自分が嫌いだった硝子に将也がプレゼントしていた、という事実を知らされます。
ここで植野は、将也と硝子が親しい関係にある、ということを察するわけですね。
そして、無理やり自転車を止めさせて硝子のもとに(したたた!と)走り、小学校のころの「硝子いじめの場面」を再現し、さらにはその場をとりつくろおうとする将也を嘲笑することで、二人の関係を(もしあるのだとすれば)台無しにしようと試みました。
その結果がこの130~131ページになります。
結果的に、植野は将也と硝子の関係が思っていた以上に深いことを悟り、再起不能なくらいのダメージを受けることになっています。
1.将也が手話で硝子と会話していること。
将也が手話を勉強する動機なんて、硝子以外には考えられない。
しかも、手話を勉強するには恐らく何年もかかる。それだけの努力を、それだけの長い期間、硝子のためだけにしていたことになる。
硝子も将也に手話で話しかけており、二人の間で手話での会話が当たり前になっていることも窺わせる。
2.将也が植野とのことを「さっき偶然会ってさ」とごまかしている。
将也は硝子に対して、植野とのことを「さっき偶然会ってさ」と説明しているが、実際には、植野ははっきり意識的に会いにきているわけですから、この説明にはかなりごまかしがある。
ごまかす理由は、「硝子に植野とのことを誤解されたくない」ということしか考えられない。
対照的に、猫ポーチが硝子の手にある理由については、将也は「自分があげたんだ」と明言しており、硝子との親しい関係を隠そうともしていない。
この非対称性は、将也の、硝子と植野に対する明確な意識の違いを表しているとしか思えない。
この2つの残酷な現実をつきつけられ、「この場」を笑い飛ばそうとした植野は、逆に「最初から自分が負けている」ということに叩きのめされてしまいます。
それで、笑いがだんだん泣きに変わっていき、その場にいられなくなって去っていくことになるわけですね。
それにしてもこの場面、植野が「両目開き」→「片目開き」→「両目閉じ」に変わっていくのも面白い表現ですよね。
第21話の話も、もう少し続けようと思います。
ラベル:第21話
仮に将也の手に普通に渡ってて中身を確認せずに手紙入りのまま西宮さんに渡ってたら・・・・どうなるんでしょうね?
コメントありがとうございます。
もしそうなっていたら、当然硝子は将也からのメッセージだと思うはずですし、この時点で既に硝子は将也のことが好きだったことも分かっているので(別に考察してます)、きっと大変なことになっていたでしょうね。
こういうifで、ショートストーリーとかもかけそうですよね。(^^)