2014年04月11日

伝説の第23話・硝子はなぜ突っ走ったのか

さて、「聲の形」前半最大の山場となった第23話についての話を続けてみます。

そもそも、あの場面で硝子はなぜあんな大告白をしたのでしょうか?
彼女は最初から、あの日そういった行為に出るつもりだったのでしょうか?

私は、YesでもありNoでもあると思っています。

ただ、確実に言えることは、硝子はあの日、「もしかしたら自分の気持ちを伝えることになるかもしれない」とは思っていたのだ、と思います。
あの日、硝子は「ポニーテール」や「説明しないと男子高校生である将也には分からないようなプレゼント」、「手話ではなく声で話す決心」等、会話が続きそうなネタをいろいろ仕込んで橋にやって来ました。
そういったもので話題をつなぎ、お互いが相手に対して考えていることなども十分に伝えあうことができたら、そのときは、将也に対する自分の正直な気持ちを伝える、、、

硝子の想定していた「シナリオ」は、恐らくこんな感じだったんじゃないかと思います。

まあ、結局いろいろ考えすぎて「お腹が痛くなって」先に帰ってしまったわけですが。

そして、その後の展開を硝子視点で考えてみるに、

1. 疑惑?を抱いていた植野の件について将也から率直なメールが届き、また「友達ごっこじゃないよな」というメッセージから将也の自分へのポジティブな思いが感じられた。

2. その直後、偶然?将也と再会。もしかするとここでも「運命」的なものを感じたかもしれません。

3. 一生懸命「声」で話そうとする自分に、「変だけど、それでいい」と言ってくれた。

4. さあ、ここまで「舞台」が揃ったんだからいよいよいろいろな話を・・・と思ったら、将也はせっかく仕込んできたさまざまなネタをオールスルーして、会話もろくにせず帰ってしまおうとした。プレゼントも効果なし。

5. この盛り上がった気持ち、いま伝えるしかない!という衝動。

6.うきぃ




こんな感じなんじゃないかな?と私は考えています。
こうやってみるとつくづく将也はヘタレな男ですね(笑)。
硝子の気持ちをここまで盛り上げておきながら、肝心なところでは踏み込めずに腰が引けてしまう。

もちろん、なぜそこまでヘタレなのかというのはちゃんと描写されていて、それはまさに硝子に対する過去の自分の行為への罪の意識、それが将也をしてただの友達という「意識」から先に踏み込むことを許さないわけです。

まあ、外から見ればもう完全にベタぼれメロメロなのはバレバレで、気づいていないのは本人だけ、周りはみんな「ニーヤ」なわけですが。



第23話についての話はまだ続きますよ。
ラベル:第23話
posted by sora at 23:11| Comment(3) | TrackBack(0) | 第3巻 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今になって振り返ってみると、硝子にとっては結構苦しいシーンだったのかもしれませんね。
仲良くなれたつもりでいてもやっぱり石田は音のある世界の住人で、しかもそこには植野がいる。
このままでは石田がどこかに行ってしまうような気がしたんでしょうね。
だから、汚い発音しかできないけれど、声で話さなければならないと思った。
石田と同じ、音のある世界で生きるために。

ふにゃふにゃの発音で話してるのを聞かれる事って、多分硝子にとってはとても怖いことだったと思うんです。
それも好きな男の子に気持ち悪いと思われたら、なんかもう生きていけませんよね。
耳を晒して補聴器の音量をギンギンに上げ、ほとんど捨て身の勇気で挑んだ結果が「うん(不気味な発音だよ)」だったわけで、硝子の表情も完全にお通夜でした。

その後石田は硝子を簡単に慰めただけで何を言ったらいいか分からず逃げ出してしまいました。
引き止めるための手段ももう告白くらいしか残されていなくて、これも玉砕覚悟で叫んでみたけど全然伝わらず……
この「うきぃ」は殆ど「行かないで」「捨てないで」だったわけで、「盛り上がった気持ち」と表現することには若干の抵抗を覚えます。

ただ、硝子は全然気づいていないけれど、手話は二人の間で当たり前のように通じてしまっているんですよね。
本当は、そのことにもっと感動してもいいんじゃないかと、私はそう思います。
Posted by 白えんぴつ at 2014年08月12日 23:31
白えんぴつさん、

コメントありがとうございます。

硝子は実はけっこう「肉声」にこだわっているようにも思えますね。

4巻番外編での結絃への呼びかけもそうですし、合唱コンクールも、あえて空気を無視して飛び込んだ印象があります(佐原編でカラオケにも行ってましたし)。
そういうなかにこの「うきぃ」会を位置づけてみると、確かにおっしゃるとおり、これもまた「あきらめていたものにもう一度挑戦した(でも失敗した)」という場面だったのかもしれませんね。

実際、これのあとは硝子はすっかり引っ込んでしまって「あなたのことがもっと知りたい」というそぶりすらなくしてしまっていますから。
Posted by sora at 2014年08月13日 21:26
 西宮硝子が告白をする日の前に、片方の耳が機能をなさくなっているという厳しい事があったんですね。
 だから、今だという勢いで言ってしまったのでしょう。

 勢いだからこそ、その後は髪を下ろし、その後に続く「すれ違い」が始まる。
 
 壮大な伏せんですわ。
Posted by 尾張富士 at 2020年03月15日 23:37
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