特にそれがよく分かるシーンが、第2巻78ページ、第9話で手話サークルを去ろうとする将也に硝子が追いついたときのシーンですね。

他にも、佐原を最初に探しに行くために電車で待ち合わせしたとき(第3巻・第15話)にも出しています。
また、他のどのシーンよりも決定的に「耳を出して」いるのは、言うまでもなく第3巻・第23話でのポニーテイルです。

これらのシーンでなぜ耳を出しているのか、ということを考える前に、「なぜ普段は耳を隠しているのか?」ということから考えたほうがいいかもしれません。
自然に考えれば、恐らく「補聴器が見えないように」ということなのだと思います。
できれば見えないに越したことはない、といった程度の意識なんだろうとは思いますが、それは少し大げさにいえば、やはり「負い目」のような気持ちがゼロではないということだと言えるのではないでしょうか。
だからこそ逆に、硝子が「あえて」耳を出すという行為には、そういった、自身の障害に対するネガティブな気持ちを乗り越えて、将也の気持ちに近づこうという思いが(もしかすると無意識のうちに)現れている、と考えるのが自然なのではないでしょうか。
まあ、もしかすると、聴者である将也と話をするために、補聴器の設定を切り替えているだけ、みたいな可能性もありますが(笑)、それでも少なくとも「ポニーテール」はそうじゃないですよね。
また、第23話でポニーテールになった硝子が、その後また元の髪型に戻ったことは、いったん極限まで盛り上がった硝子の「想い」は、伝わらなかったことでいったん小康状態に戻った、ということを表しているんだろうな、と思います。