2014年12月14日

第53話、夢の中の服装問題を改めて考える

※このエントリは、第53話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

第53話の前半の「夢」のシーンのなかで、3ページめ以降の「高校生将也」が登場するシーンを読み解くにあたっては、それぞれのキャラクターの「服装」がヒントになると思われます。

4ページでの2コマめ、橋で泣いている硝子を将也が夢で見る場面ですが、硝子の服が「いま本当に硝子が着ている服(将也は見たことがない)」であることから、超常的な力によって将也が橋の上にいる硝子を「遠視(透視)」したと考えざるを得ない、ということについては既に別のエントリで触れました。



問題は、このときの将也の服装と背景です。

将也の服装は、「制服の冬服」です
転落したときに着ていた私服でも、5月以降夏休み前までずっと着ていた夏服でもありません。
ですのでこの将也の服装は「夢の中完結の服装」だと考えるべきで、そうすると1ページ前の3ページの3コマめに映っている「冬服の将也」がこのコマで戻ってきている、と考えるのが適切だと思われます。


第53話、3ページ。

次に背景ですが、橋を「透視」しているコマの、将也よりも右側は真っ白で、将也より左は夜の闇の黒に塗りつぶされています。
つまり、将也を境にして、左と右で別の世界が描かれている、ということだと考えられます。

「橋で泣いている硝子」は「リアル(目覚めたあとの)世界」の映像です
それに対して、「冬服の将也」は「将也の見ている夢」の映像です

つまり、このコマでは、「夢の中にいる冬服姿の将也が、夢の中にいるままで、リアル世界の硝子の姿を透視した」ということを表現しているのだ、と言えるのではないでしょうか。

そして、これは繰り返しになりますが、「夢」のレイヤーにいる高校生の(冬服の)将也は「夢を見た」といって小学生のころのありえない生活を見ています。「夢」のなかで「夢」を見ているわけですから、この小学生将也が登場しているレイヤーが「夢中夢」となります
さらにその小学生将也は「幸せな気分で眠りにつく」といって寝てしまいますが、これは「夢中夢中夢」というさらに多層化された「夢のレイヤー」であり、全体として複雑な「多重夢構造」を形成しています。

以下、このレイヤーを改めて整理してみます。

1)リアル世界のレイヤー:橋で泣く硝子がいる。

2)レベル1の夢レイヤー:病室で眠るリアル将也が見る夢の世界。制服冬服姿の将也がいる。

3)レベル2の夢レイヤー:レベル1の夢の中の将也が見る夢(夢中夢)の世界。小学生の頃の将也らがいる。

4)レベル3の夢レイヤー:レベル2の夢の中の将也が「幸せな気分で眠りにつく」といって眠ったあとのまどろみ(夢中夢中夢)の世界。どうやらこのレベルに長くいるとそのまま死んでしまうらしい。「黄泉の世界」。


第53話は、上記の「レベル2の夢レイヤー」の映像(小学生将也のありえない夢)から始まります。
ただし、ここで「夢を見た」というモノローグを語っているのは、「レベル1の夢レイヤー」にいる将也です。

そして、3ページの1コマめで眠ってしまったレベル2の将也は、「レベル3の夢レイヤー」=「黄泉の世界」に沈んで死にかけますが、誰かに手を引っ張られてハッとして(ここで引っ張ったのは誰か、という謎は別エントリで考察していますが、島田や硝子ともつながりがある形での「鯉」ではないかと私は読んでいます)、2段階アップで「レベル1」まで戻ってきて一命をとりとめます。

そして、「レベル1」の将也が「本当の俺たちは ドコへ行くんだろう」「本当のみんなは」などと答えのでない問いで悩んでいるうちにまた意識が遠のいて、ふたたび「レベル3」まで落ちてしまいそうになり「死ぬんだろうか」と弱音を吐きます。

でもここで「いや 死んじゃダメだ!」と最後の気力を振り絞って「レベル1」に戻ってきたとき(4ページ)、その勢いで?さらに「レベル1」を超えて「リアル世界」との境界まで覚醒し、(超常的な力が働いて)「リアル世界」の橋で泣いている硝子を「透視」します

そのあと、その硝子の映像は途切れますが、その硝子に声を叫ぼうとした将也は、ようやく目覚め、「リアル世界」に戻ってきます。

第53話の前半、将也が目覚めるまでの夢のシーンでは、将也はこんな風に多層化された夢の世界をさまよい、ところどころで死の淵にたちながらもなんとか生還して目覚めた、という構成になっているのだと思われます。
ラベル:第53話
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第53話の超難問、「夢」の終わりをどう読み解くか?(4)

※このエントリは、第53話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第53話の難解な「3ページめ」の読み解き、このエントリが最後になります。
残るは5)と6)、

5)4)の登場人物が小さくなり、真っ黒な背景が画面全体を覆っていく。
6)真っ黒な背景に白抜き文字で「死ぬんだろうか」



第53話、3ページ。

ですが、ここまで読み解きを進めてきた後では、割と簡単に思われます。

5a)この5)のコマはどういう意味か。
6a)この6)のコマはどういう意味か。


5)は、4)の続きであると同時に、6)に続く橋渡しをしています。
つまり、3)と4)から、「現実の俺は、中学でも高校でも、そして硝子と出会ってからも、結局いつも上手くいかなかった」という思いから、

5)だんだん気力が薄れ気味になり、イメージが薄くなり、
6)「死の闇」がどんどん大きくなっていって、真っ暗になったときに、「俺は死ぬんだろうか」とふと思った。


そういうシーンである、と素直に読み解くのがいいんじゃないか、そう思われます。

ちなみに、6)については、主語が「自分(将也)」なのか「本当のみんな(4のコマ)」なのか、という問題がありますが、すでに4)で考察のとおり、ここは主語が切り替わって、「自分が」このまま死んでしまうんだろうか、という意味でとるのが適切だろうと思います。


さて、これで1)から6)まで、すべてのコマの読み解きが完了しましたが、全体をまとめる前に、この場面が「夢」という点において、とても複雑な多層構造になっていることを指摘しておきたいと思います。

まず、第53話1ページから続く小学生将也の場面について、モノローグを語っている将也は「夢を見た」と言っているので、「モノローグ将也」に対して「小学生将也」は「夢の中の存在」です

そして、「モノローグ将也」は、実は目覚めているわけではなく、昏睡している将也の夢の中で語っているわけですから、「リアル世界」に対して「モノローグ将也」は「夢の中の存在」です

さらに、3ページの冒頭、1)のコマで、「小学生将也」は「眠りについて」いて、どうやら2)の「手を引っ張られる」シーンは、その「眠りについた」夢の中の場面であるように見えます。
つまり、「小学生将也」に対して、「手を引っ張られた将也」はさらに「夢の中の存在」です

そして、「手を引っ張られた将也」は、そのまま手を引っ張られなければ、どうやら死んでいたようです。

つまり、将也が手を引っ張られた『夢のレイヤー』は、死の世界につながるレイヤーだった、ということになるわけです。

つまり、こういうことになります。

[リアル世界]→夢→[モノローグ将也]→夢→[小学生将也]→夢→[手を引っ張られた将也]=[黄泉の世界]


以上をふまえて、第53話3ページの読み解きを改めて整理しておくと、

1)「夢中夢」の小学生将也がさらに「眠りにつく」。

2)するとそこはすでに黄泉の世界。死の寸前までいった将也だったが、硝子の願いのこもった涙を受け取った鯉がそこに現れ、将也を引き戻す。

3)引き戻された将也は、「何もかも上手くいくと思っていた小学生将也」が「夢」であったことに気づき、実際には硝子と会うまで、孤立の続くひどい人生だったことを思い出す。

4)さらに硝子と会ってからも、いろいろあったけれども結局上手くいかなかったと回想する。

5)そんなことを思い出していたら少し気力が萎えてしまい、だんだん意識が黒く塗りつぶされてきた。

6)すっかり意識が黒く塗りつぶされた暗黒の世界に(また黄泉の世界に近づいている)。将也はふと「自分は死ぬんだろうか」と弱音を吐く。


こういった感じになるのではないか、と思います。

これが正解、というわけではありませんが、ばらばらの場面が集まっただけにも見える、非常に難解な第53話の「第3ページ」の読み方の1つのヒントになればと思います。
ラベル:第53話
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第53話の超難問、「夢」の終わりをどう読み解くか?(3)

※このエントリは、第53話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、超難解な第53話の3ページ目の読み解きの続きです。今度は3コマめ、4コマめです。

3)「本当の俺たちは ドコへ行くんだろう」のモノローグと、教室に座る冬服姿の将也を窓の外から俯瞰した描写。
4)「本当のみんなは」のモノローグと、真っ黒な背景、硝子を含む高校編の全登場人物が去っていく後ろ姿の描写。



第53話、3ページ。

それぞれのコマについて、まずは、

3a)これはいつの映像なのか?
4a)これはいつの映像なのか?


が考えなければならないポイントでしょう。

この3)の映像ですが、冬服です
これは、このあとの4)のコマで、みんなが着ているのが夏服であるのと対照的で、3)のコマと4)のコマの間で時間が経過していることに気づきます。

そこで改めて3)ですが、将也がこれまで冬服で自席に座っている場面は、

ア)1巻の見開きで描かれた、クラス全員の顔に×印がつけられた印象的なページ。(第5話)
イ)2巻で永束と友達になった初日、永束が将也を映画に誘うシーン。(第9話)
ウ)2巻で、バカッターへの投稿が晒され、停学になってしまう日の朝。(第10話)


この3場面しかありません。ウ)の次の登校日、停学明けには既に夏服になっています。
また、ウ)では永束はタヌキ寝入りをしていて、将也は自転車から転倒してボロボロですから、ちょっとこの3)のイメージと合いません。
一方、ア)のオリジナルの場面では、クラス全員に×印がついていることから、ア)ではない、と考えられそうですが、将也は第43話で転落前に「クラスメイトとしっかり向き合う」と誓っていることから、いまア)と同じシーンを夢に見た場合、×印は消えていると考えられるので、×がないことを根拠にア)の可能性を消すことはできません。

ということで、この場面はア)もしくはイ)あたりの時期を描いていると考えられますが、時期ははっきり特定できません。
そもそも、3)では全員の机の上に何も乗っておらずきれいですが、ア)でもイ)でも各自の机の上には筆箱などが必ず置いてあるので、厳密にはこの3)の場面はア)でもイ)でもありません。

というわけで、3)についてはここまでで一旦保留しておいて、先に4)を片付けようと思います。

4)は3)とは一転して、高校になってから再会したすべてのメンバーが勢ぞろいです。
はっきり見えない人もいますが、右から順に、

島田・広瀬・永束・川井・石田母・硝子・西宮母・植野・真柴・佐原・結絃

は確認できます。(石田母と西宮母は硝子と重なる位置で前のほうに、結絃はモノローグの下にいますね。)

ちなみに、この映像の雰囲気は、第5巻の第37話で、真柴の発言に疑心暗鬼になって、みんなが将也の過去のいじめを知って去っていくシーンによく似ています。


第5巻102ページ、第37話。

違うのは、「去っていくメンバー」に、硝子や結絃、石田母や西宮母まで加わっていることです。
「全員が去っていく」ように見えるシーンというのは、実際には「自分が去っていく」シーンの裏返しでもあります

私には、この4)のシーンは、第37話で心配していた崩壊が、第38話から第39話の橋崩壊事件までで「現実のもの」となり、さらに第40話から第42話に至っての「硝子の自殺」によって硝子や西宮家のみんなも去り、さらに第43話で自分が転落してしまったことによって、家族を含むすべての「みんな」が去る(=実際には自分が死んで消えてしまう)、という展開を1枚のコマで示しているシーンだと思われます。

つまり言い換えると、この4)のシーンは、硝子と再会後にいろいろ頑張ったことが、結局最後にはすべて「上手くいかず」失敗してしまった、という将也の思いを描いているのではないだろうか、と思うのです。

これは、2ページのモノローグで、「夢の中の俺は なぜかこのまま 何もかも上手くいくと思ってた 中学でも 高校でも」と言っていることともうまく対応します。

「夢の中では何もかも上手くいくと思ってた」けれども、「本当のみんな」とは「上手くいかなかった」、ということです。

そう考えると、3)のコマが何を意味しているかも、おぼろげながら見えてくるように思います。
つまり、3)のコマは、硝子と再会してから始まる、激動の時期の「直前」の将也を描いているのだ、と考えられるのです。

つまり、前のページで、「夢の中」(実際には夢中夢ですが)の小学生将也は、中学でも高校でも何もかもうまくいくと思っていたけれども、

3)中学から高校3年(硝子と会う前)は孤立してまったく上手くいかなかった。
4)硝子と会ってから、いろんなことがあって頑張ったけれども、やはり結局上手くいかなかった。


ということで、上手くいくと思っていた「夢」に対して、上手くいかなかった「現実」を提示しているのが、3)と4)のコマだ、という整理がつけられるんじゃないか、と思います。

あと、残っている疑問としては、

3b)「俺たち」の「たち」って誰のことだろう?
4b)「みんな」って誰のことだろう?


3c)「本当の俺たち」の「本当の」ってどういう意味だろう?
4c)「本当のみんな」の「本当の」ってどういう意味だろう?


4d)「本当のみんなは」の文章はこのあとどう続くのか?

というのがあるでしょう。

このうち、3c)、4c)の「本当の」が、前のページの「夢では」に対応しているのは明らかで、どちらも「夢とは違う現実の」と言い換えて理解すればそれでいいように思います。

次に4b)については、「将也本人以外の、将也の周囲にいる全員。別の言い方をすれば、4)のコマに映っている人たち」で問題ないでしょう。

やや難しいのが3b)の「俺たち」ですが、これは4b)と対応関係があることと、3)が中学~高校(硝子に会うまで)、4)が高校(硝子に再会後)という関係があることをふまえると、「小学校のときに仲間だった『俺たち』」という意味にとらえればいいのかな、と思います。

将也が「俺たち」という仲間意識を持てた時代は、恐らく小学校時代にしかありません。
ですから、3b)の「俺たち」というのは「既に失われてしまった小学校時代の仲間たちと俺」、4b)の「みんな」というのは「自分以外の、いま現にそこにいるみんな」という風に理解するのが、いちばん妥当であるように思われます。

最後に4d)ですが、3)のコマの「ドコへ行くんだろう」が省略されているのか、6)の「死ぬんだろうか」に続いているのかの2択でしょう。

ここは、常識的に考えて、「ドコへ行くんだろう」が省略されているとしか考えられません。
「みんな」を全員「死ぬんだろうか」といきなり考えるというのは唐突すぎますし、意味がわからなくなってしまうので。
posted by sora at 08:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする