2014年12月03日

タイムスキップ連発、第61話の「時間考証」を試みる(3)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

このエントリでは、タイムスキップによって、時間軸の異なる13のシーンに分かれている第61話を、カレンダーにマッピングしています。
ここまで、前エントリで示した1)から13)のシーンのうち、1)から6)について、日付を確定させました。

次に7)から10)ですが、ここで私は1つの仮説をおきたいと思います。

それは、

7)と8)、そして9)と10)は2コマずつ、それぞれ同じ日なのではないか?

ということです。

7)と8)のコマ、9)と10)のコマでそれぞれ気づくのは、この組み合わせだとそれぞれ「同じ登場人物のカブりがない」ということです。
ですから、同じ日の違う場面を2コマずつセットで描いている、と考えられそうなのですね。

そう考えると、7)と8)のコマというのは、

硝子はヘアメイクイシダのお店スペースを閉店後の夜に貸してもらって、結絃の髪をカットした。
そのとき石田家には西宮母も来ていて、ダイニングで酒盛り発生。バイトか学校から帰ってきた将也がそれを発見して唖然。


という、一連のシーンではないかと想像するのです。

同様に、9)と10)については、

太陽女子メンバーでクリスマス会が開かれ、将也・硝子・結絃(もしくは結絃のみ)も招待される。カメラ係の結絃のカメラに向かって佐原がVサインをするシーンが9)で、クリスマス会のあと、思い出の「メチャクチャいいパン」を買ったあと、結絃のための参考書や、硝子のための上京の資料になる本を買うために書店に立ち寄る3人。

という、一連のシーンだと想像します。

そして、クリスマス会は12月だと思われますから、

7)11月か12月。
8)7)と同じ日。
9)12月。
10)9)と同じ日。



第61話、15ページ。7)から10)までに該当するコマです。

ということになりますね。(今回も、残念ながらこれ以上は細かくわかりません。)

さて、残りは11)から13)になりますが、ここは順当に、

11)3月。


第61話、15ページ。11)に該当するコマです。

12)3月末。
進路が「学校」なら、上京が4月初頭ということも考えられますが、お店ですから、4月1日から働くことになるでしょうから、上京は3月でないとおかしいと思います。


第61話、16ページ。12)に該当するコマ。

13)12)の翌々年の1月。
成人式は、「その年度に20歳になる人が、その年度の1月の式に参加する」もののようですので、「翌年」ではなく、「翌々年」というのが正しいようです。


第61話、18ページ。13)に該当するコマです。

のようになる、と思います。

…これで、ようやく第61話のすべてのシーンを、カレンダー上にマッピングすることができました。

1)〜3):10月下旬
4)〜6):11月上旬
7)〜10):11月下旬〜12月
11)〜12):年が明けて3月
13):2年後の1月


連載当初から作成を続けていた「聲の形カレンダー」ですが、なんとか最後まで一定の精度で完成させることができそうな見通しが立ってきました。

というわけで、「聲の形カレンダー」も、最終更新をかけたいと思います。
タグ:第61話
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第61話、将也の「読み取りミス」の理由をメタに考える

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話では、植野の話によって、硝子の志望が美容師である、という将也の誤解が解消されました。


第61話、5ページ。

この誤解は、第59話で硝子が将也に示した「理容師を目指している」という手話を、将也が「美容師」と読み取りミスをしたことによって起こったわけですが、では、なぜ将也はこの場面で読み取りミスをすることになったのでしょうか?

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第59話、5ページ。

これは、物語の展開上そうせざるを得なかったという、メタの理由が大きかったんだろうと思います。

作者が将也と硝子の進路というテーマで、盛り込みたかった展開というのは、恐らく次のようなものでしょう。

1)硝子に上京させ、それをめぐって将也に葛藤が生まれる。
2)硝子上京をきっかけに、将也は進路を真面目に考え、実家の店を次ぐことを決意する。
3)硝子と将也の進路を最終的に一致させることで、エンディングで人生を一緒に歩むことを描く。
4)ただし、進路の一致がお互いへの依存の結果だと映るようには描きたくない。


ところがこれ、1)と2)の時点で既にねじれていることがわかります。

1)硝子の上京、を将也に伝えようとすれば、当然硝子が理容師志望だということを伝えなければなりませんが、それを伝えてしまうと、2)で実家を継ぐ選択をしたときには既に硝子の理容師志望を知っていることになり、「硝子の後追い」になって4)の狙いから外れることになります。

だからといって、完全にばらばらに将也と硝子が進路の話をする前から理容師を目指すことを決めていたら、2)の「硝子の上京話をきっかけに、将也がそれまで真剣に考えたことがなかった自分の進路について考える」という展開になりません(上京を知った時には進路が決まっているため)。

だとすると、大変奇妙な形として、

1)硝子の上京話は知っているけれども、硝子の進路は知らない
2)硝子の上京話を聞いてから、将也は進路を真剣に考え、「理容師」という道を選ぶ
3)その後で、将也も硝子も理容師志望だったことを初めて知る


という展開を無理にでも作らなければならないことになるわけです。
そのために採用されたのが、「手話の読み取りミス」という展開だったのですね。

1)の時点では、「上京する」という情報だけ正しく得て、「進路は理容師」のほうは手話誤読によって知らない設定にして、2)が終わったあとで、今回のように植野の話によって「実は進路は理容師」という情報が初めて与えられる、という形になったわけです。

そういう意味では、さらに遡って第55話で、硝子がヘアメイクイシダの店内をみて興奮しているとき、結絃が言った「さすが理容科」というせりふを、将也がききとれずに「いおーか?」と言っているのも、今回の展開につなげるための必然的な伏線だったことになります。


第55話、15ページ。
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2014年12月04日

第61話、どんどん「侵入度」が深くなる植野

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話では、「いきなり将也の布団の中にいる植野」というのが描かれました。


第61話、2ページ。

普通なら、少年誌で「黒髪ロングの美少女がいきなり自分のふとんで寝ている」というのは、かなりきわどいシーンに展開しそうなのですが(実際植野もそういう展開を狙った雰囲気もありますし)、そこはこの「聲の形」、どちらかというとホラーの展開になって、将也が「おかーさーん」と叫ぶ、という展開に。(考えてみると、植野も物語の中でいいように遊ばれています(笑))

ところで、この植野ですが、高校編での再会以降、将也の自宅などでいきなり登場するときの「場所」が、だんだん深いところに侵入していっているのが笑えます。

最初は、3巻の硝子との修羅場のあと、自宅を出たところに立っていて、そのまま玄関先まで入ってきました。(侵入レベル1:玄関先


第3巻153ページ、第22話。

次は、第5巻で、映画の話をしようと映画メンバーが将也の自宅に集まったところ、植野がダイニングにいてマリアと遊んでいました。(侵入レベル2:ダイニング


第5巻10ページ、第33話。

その次をどれと見るかは微妙ですが、私は、第6巻で将也の病室に籠城した場面を採りたいと思います。
植野回をみると、植野は将也の病室に一人で籠城し、ベッド脇で将也にキスするなどやりたい放題やっていました。(侵入レベル3:ベッド脇


第6巻138ページ、第50話。

そして今回、第61話でついに植野の侵入レベルはピークに到達しました。将也が自室に上がると、部屋の布団の中に植野がいたのです。(侵入レベル4:布団の中

すごいですね(笑)。
これまでは結絃が「同じ部屋で寝る」というところまで到達していて、おおむね侵入レベル3あたりまできていて侵入度トップでしたが、今回植野が逆転し、とうとう布団の中まで制覇してしまいました。

ちなみに硝子はまだ「侵入レベル2」どまりなのでまだまだですね。(笑)
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第61話、植野によって明かされた島田の心情とは?(1)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

第61話の前半では、植野の語りによって、植野視点からの島田らの心境が明かされました。

それによって、これまで謎だった「学級裁判後、中学時代にいたる島田の将也に対する心情」がある程度明らかになりました

今回の植野の語りの、小中学校時代の島田についての部分を抜き出してみましょう。


第61話、6ページ。

植野「あいつらさ…小学生ん時 ちゃんと…あんたのこと好きだったんだよ? わかってたっしょ?
   それがなんか…… なんか違うわーってなっちゃったんだろうね
    仲良かったってこと 無かったことにしたかったんだと思う…」


この植野の語りから分かることは、島田(と広瀬)は、

1)もともとは将也のことが好きだった
2)しかし、その後その気持ちが冷めていった
3)最終的には、仲が良かったことすら否定したいほど嫌いになった


という風に、将也への評価や感情が変わっていった、ということです。
これを、第1巻の描写と合わせて考えると、島田の将也への感情が、いつごろどんな風に変わっていったかを推測することができます。

1)まったく曇りなく「好きだった」というのは、島田や広瀬が将也の家にしばしば遊びに来ていた「第42回度胸試し」からデラックス事件の頃までだったのではないかと思います。
「第41回」のとき、石田母から度胸試しのことを聞かれた際も、島田ははっきりと「僕らも楽しくて将也君と一緒にいるので」と答えていることからも、このころは確かに「好きだったし、一緒にいて楽しかった」ことは間違いないでしょう。


第1巻17ページ、第1話。

2)でもその後、島田は塾通いを将也との遊びよりも優先させるようになり、広瀬もそれに合わせて将也と若干距離をおくようになりました。
そのきっかけになったのは「デラックス事件」でしょう。
デラックス事件で、将也が「げんき君」から暴行を受けたあとの島田と広瀬は、明らかにそれまでとは態度が異なり、将也のスタイルに「ついていけない」といった表情をあらわにしています。
このあたりから、将也と島田らとのあいだにはすきま風が吹き始めたのだろうと思います。


第1巻41ページ、第1話。

次に、将也と島田らとの間にさらに距離を作ったのは、恐らく「硝子いじめ」だったのだろうと思います。
将也の認識がどうであれ、学級裁判に至るまでの間、硝子いじめを「主導」していたのは間違いなく将也でした。
合唱コンクール失敗についての黒板への落書きから始まり、水をかけたりノートに落書きをしたりといったいたずらに進み、ついには補聴器を奪って投げ捨て、耳を引っ張って負傷させるまでにいたりました。
(実際には、この頃から、硝子の筆談ノートには硝子を咎めるような書き込みが増え、徐々に硝子は将也のいじめとは無関係にクラスで孤立していったのですが、そのことは島田は知らなかったでしょう)

このあたりまできて、さすがに島田は「やりすぎだ」と感じるようになっていったと思います
実際、硝子の耳を負傷されたまさにそのときに、島田は「ゲェ ショーヤあ お前やりすぎ」と言っていることからも、それは分かります。


第1巻106ページ、第2話。
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第61話、植野によって明かされた島田の心情とは?(2)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、硝子の耳を負傷させたことで、将也は担任の竹内から叱られますが、そのあと島田らと合流した将也は「(硝子には)謝らない」と島田に語ります。
それに対して島田は、「お前が謝るところを見たいのに」と返しています


第1巻108ページ、第2話。

ここでも島田は、やんわりと将也のいじめに対してそろそろやめたほうがいいと進言していることに気づきます。

でも、将也の暴走は止まらなかったわけです。
負傷させられた側の硝子が「ごめんなさい」とまで伝えて和解しようとしているにも関わらずノートを川に捨てて拒絶し、その後も繰り返し補聴器を壊し続けた将也を見て、島田はデラックス事件にもまして「こいつの暴走にはもうついていけない」と感じたことでしょう。

このあと、あの「学級裁判」事件が起こるわけですが、学級裁判より前の段階で、すでに島田の気持ちは将也から完全に離れてしまっていたのだろうと思います。

3)そして、将也と島田らとの溝を決定的にしたのが、学級裁判での将也の態度でした。
島田からすれば、硝子へのいじめ(特に学級裁判でも問題視された補聴器の破壊)について、自分は何度も止めていたのに、一切聞き耳を持たず一人で暴走していたのが将也だったのに、糾弾された将也は自分の責任を顧みず、あたかもすべての責任を周りに押し付けて逃げようとするような態度を取りました。


第1巻124ページ、第3話。

恐らく将也は「自分だけが悪いわけではない」ということを主張していたのでしょうが、周囲からは「自分だけは悪くない」と主張しているように見えたと思います。
この態度をみて、島田は将也のことを、憎むべき、軽蔑すべき最低の人間だ、というレッテルを貼ったのではないでしょうか。

改めてこの学級裁判の場面をみると、校長がしゃべっているとき、島田はひとり微笑みを浮かべていることに気づきます。
恐らく島田はここでしっかり将也が断罪され、将也も罪を認めて反省して硝子いじめも止まる、そういう展開を望んでいたのではないかと思います。
ところが、実際の将也はそれとは遠く、無責任で反省しない「醜態」を晒してしまったわけです。

このときの態度を自分たちへの裏切りと感じ、「許せない」と憤った島田が将也を池に突き落とそうと仲間を誘う場面は、植野回で描かれました。


第6巻134ページ、第50話。

そして、学級裁判以後の島田の執拗な将也いじめについては、今回植野があえて語らなかった、1つの誤解がもとになっていると、私は考えています。
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第61話、植野によって明かされた島田の心情とは?(3)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

島田が将也から離れ、逆に将也をいじめる側に回ったのは、学級裁判での将也の態度に愛想がつき、軽蔑すべき裏切り者だと感じるようになったからだと考えられます。

ただそれにしても、その後、小学校卒業まで延々といじめが続き、さらに中学に入ってまで、将也を孤立させ続ける島田からの執拗な将也いじめが続いたのはなぜなのでしょうか?

ここについて、植野がわずかに語っているのは、


第61話、6ページ。

植野「仲良かったってこと 無かったことにしたかったんだと思う…」

ということだけです。
つまり、中学に入ったとき、島田や広瀬は、将也がかつて親友だったことを周囲に知られたくないほど嫌っていた、ということになります。
だからこそ将也が中2のとき、限定盤CDの話題で島田らの輪に入ろうとしたとき、島田は完全拒絶して「もはやなんの縁もない、寄ってくるな」という態度で応じたのだろうと思います。

そこまで島田が嫌った理由は、実は今回植野が語らなかった1つの事実があるのではないか、と私は考えています。

それは、

植野が硝子転校まで続けた硝子いじめについて、島田は将也が犯人だと思っていた。(今も思っている)

ということです。
ここまでで見たとおり、島田は将也の硝子いじめを、途中からははっきり否定的に見ていたと思います。
そして、その行為ははっきりと学級裁判で断罪されました。

にもかかわらず、将也は硝子いじめを続け、硝子を転校に追い込んだのだ、と島田には映っていたに違いないだろうと思っているのです。
実際にやっていたのは植野だったわけですが、植野がその後島田グループからハブられず、逆に将也は徹底的にいじめられているところからしても、島田は明らかに誤解しています

だからこそ、島田は中学に入った時に「女子をいじめて転校させた」という噂(島田にとっては事実)を流し、将也と仲が良かった事実すら否定しようという動きを続けていたのだろう、と思うわけです。


第1巻171ページ、第5話。ここで島田が流している「噂」って、ぶっちゃけ正しくないですよね。でもそれこそが、島田が「誤解」していた証拠ではないでしょうか

いずれにしても、今回殊勝に真実を語っているように見える植野ですが、必ずしも「すべて」を語っているわけではありません。
その辺りについても、エントリを分けて書いてみたいと思います。
タグ:第61話 第05話
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当ブログのアクセス件数を公開します!

さて、「聲の形」の連載も終了し、当ブログのエントリも、単行本発売とかの特別なイベントを除けば、あとは過去のボツエントリを細々と掲載するのみとなりました。

実際、アクセス件数を見ても、最終話がマガジンに掲載されて以降はゆるやかに減少を続けていますので、このブログもそろそろ収束が近づいていることを感じています。

そこで、当ブログ開設から、先月11月までの月別のブログアクセス数を公開しておくことにしました。
もし何かのテーマでブログ作りを考えてらっしゃる方がいらっしゃったら、このくらいのブログを作るとどの程度のアクセス数になるのかの参考にしていただければと思います。

4月 15,916
5月 43,939
6月 130,672
7月 275,429
8月 451,163
9月 479,341
10月 530,673
11月 429,319


11月末までの総アクセス数は、235万6000件あまりとなっています。

当ブログは、2014年4月4日に開設しています
当初は、古い話のコネタを1日1エントリ程度拾う細々としたブログでしたが、6月初頭の「橋崩壊事件」、第39話からは連載の最新話に対してリアルタイムに考察する内容に切り替え、それ以降、アクセス数もぐっと伸びてきました。

そして8月以降は毎日のアクセス数が平均で15,000件クラスになり、それが最終話までほぼ安定して続きました。そして、最終話が発表されて以降は緩やかに減少を続けて、現在に至っています。

ちなみに、私は今までに全部で10以上のブログを開設してきていますが、今回の「聲の形ブログ」がその中でも最もアクセス数の多いブログとなりました。
お越しくださった皆さんには、感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました!

(なお、ボツエントリはまだまだある(笑)ので、ブログの更新は今しばらく続ける予定です。)
posted by sora at 08:43| Comment(6) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする

2014年12月05日

第61話、植野が伝えたことと隠したこと(1)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話では、植野が将也の自宅におしかけて、これまで話せなかったことを話すという展開がありました。


第61話、7ページ。

植野とすれば、上京も決まり、悔いが残らないように伝えたくても伝えられなかったことを伝えよう、と思ったのだろうと思います。

とはいえ、そこはやはり人間ですから、植野は「すべて」を話したわけではありません。
ある意味「神の視点」をもっている読者から見ると、今回、植野がちゃんと伝えたことと、やはり隠したままだったことがあることに気づきます。

まず、今回、植野が伝えたことは、

1)植野は高校卒業後上京すること。
2)転落した将也を救出したのは島田らだったこと。
3)小学生時代、島田らはもともと将也のことが好きだったが途中からは嫌いになったこと。
4)植野自身、将也へのいじめに加担したこと。
5)植野自身、硝子へのいじめを行ったこと。
6)今でも硝子のことが好きになれないこと。


といったあたりでしょうか。(硝子が理容師志望というのは植野の話題じゃないので除外しました)

では、一方、このシーンで語られなかったことには、どんなことがあるでしょうか?

7)将也の転落後、病院の前で硝子、佐原、西宮母に暴行を加えたこと。
8)将也昏睡中、病室に籠城して硝子らを排除していたこと。
9)将也昏睡中、意識のない将也にキスなどをしていたこと。



第6巻138ページ、第50話。

ざっと考えると、これらの「将也が昏睡中におこったできごと」が思い当たります。
まあ、これらについては、実は硝子は9)以外は全部知っているわけですから、なんとなれば硝子が話せばいいとも言えますし、暴力を肯定するつもりはまったくありませんが、将也に対する強い感情が暴走した結果である、ともいえますし、これらを秘密にすることが、現時点で将也を不利にすることでもない、とはいえます。
また、9)はもともと「墓場まで持っていく」タイプの秘密でしょうから、語られなかったことも自然です。

でも、これだけでしょうか?
私は、今回の文脈のなかで、本来なら植野は語るべきだったのに、語らなかったのではないか?と思っていることが1つあります。
タグ:第61話 第50話
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第61話、植野が伝えたことと隠したこと(2)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話で植野が「語らなかった」秘密についてですが、今回の文脈の中で、あえて植野が話さなかったのではないか、と私が考えずにはいられないものが1つあります。

それは、

10)島田が将也を中学に入ってもいじめるほど嫌うようになったのは、植野が最後まで続けた硝子いじめを将也の犯行と誤解していたから

という、当ブログでずっととりあげている点です。

植野は、かつての仲間関係の崩壊後も、島田と将也の和解をずっと願っていたことは間違いありません。
ならば、島田がなぜ将也をそこまで嫌い続けるのか、ということをやんわりと聞くシーンも何度もあったに違いないでしょう。
「学級裁判で裏切った」ということだけが理由なら、それ以降、完全に牙が抜けて大人しくなった将也を、そこまで断罪し続けることには違和感があるのです。
逆に、島田がその程度で将也をそこまで嫌うなら、「硝子が転校するまでいじめを続けた」植野を嫌わないことが不自然になります

つまり、島田は少なくとも、後期の硝子いじめが植野の仕業だったことは知らないと考えるのが自然です


第6巻137ページ、第50話。

そして、「誰がいじめてるか分からないけれども、学級裁判後も硝子へのいじめが続いていて(むしろエスカレートして)、結局硝子は転校に追いやられた」という状況は、島田をして「将也が続けていたに違いない」と推測させるに十分だったでしょう。

島田が中学に入って「将也が女子をいじめて転校させた」という噂を流し、将也と友達であった過去を消したいとまで考えた理由はそれしかない、と思うのです。


第1巻171ページ、第5話。

だとすれば、です。
植野は、島田がそういう誤解をして、それを最大の理由として将也いじめを続けていることを知らなかったはずはないわけですね。

今回、植野が「語らなかった」最大の秘密は、おそらくこれじゃないかと思っています。

ただ、植野は実際にはこの秘密に将也自身が気づくための「ヒント」は出しているといえますね。
それは、前エントリで整理した「語られた秘密」のうち、

5)植野自身、硝子へのいじめを行ったこと。

です。
ここで植野は「上グツ 汚したり」という硝子いじめの内容を語っています。


第61話、7ページ。

この「上靴を汚される」という硝子いじめを、将也は学級裁判後に目撃しているはずです(第1巻がすべて「将也視点」であると考えて)。

ならば、将也は、今回初めて得た5)の情報を駆使して、

・硝子は自分がいじめをやめた後もいじめられていた。
・そのいじめは植野がやっていた。
・その後、硝子は転校した。
・中学に入って島田に流された噂は「自分が硝子をいじめで転校させた」というものだった。
・でも実際に「転校させるまでいじめを続けた」のは自分ではなく、どうやら植野だったようだ。
・島田は、植野の硝子いじめを自分がやっていたと誤解して、それで一層自分のことを憎んでいたのかもしれない。


という「推理」を、「将也が」働かせることも、不可能ではないわけですね。
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第61話、植野が伝えたことと隠したこと(3)

※このエントリは、第61話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第61話で、植野が語ったことと語らなかったことを考えていますが、ここまでで触れたこと以外にもう1点、植野が明らかに「語ろうとして語れなかったこと」があります

それは、

「知らないこと」の3つめ。

です。


第61話、9ページ。

いったい植野は何を語ろうとしていたのでしょうか?
これはもう、考察するまでもなく、

11)植野が将也のことを好きだということ。

これしか考えられません。

そもそも、植野が今回将也の家にわざわざ押しかけて「話したかったこと」は何だったのか、ということを考えなければいけません。

それは何かといえば、恐らく、

・島田の救出劇のことを伝えて、島田との和解の可能性を改めて探りたい。
・小学校のころに将也・硝子いじめをやってしまったこと、今も硝子が嫌いなことを素直に告白して謝罪したい。
・そのうえで、自分が将也のことを好きだということをちゃんと伝えたい。


おそらく、このあたりだったんじゃないかと推測します。

この中でも、植野が特に伝えたかったのはやはり「好きだという気持ち」だったと思うんですね。

というのも、植野は「あんたこそなーんも知らないのね」の前のコマ、「次 2つめ!」のコマ、どちらも顔を真っ赤にして照れて、続きをしゃべるのを逡巡しています。


第61話、5ページ。

でも、実際に「次の話題」をしゃべるときには、照れが消えているんですね。

つまりこれは、植野は上記のどちらのタイミングでも、本当は「実はアタシはあんたのことが好き」というのを伝えようとして、でも照れて伝えられなくて別の話題でごまかした、ということを示しているのではないか、と思うのです。
そして結局、「2つめ」の島田ネタで将也の優しいことばに泣き出してしまって、将也に泣き顔を見せられなくて、本当は一番伝えたかった「3つめ」を伝えられないまま走り去ってしまった、のだろうと思うのです。
(もちろんそれだけでなく、優しいことばを受けて、改めて「いまの将也」に惚れ直してしまって、むしろ別れにつながってしまうような「告白」をするのをやめてしまった、ということもあると思います。)

ちなみに、実は先の7)から9)を話すつもりだったのでは?という仮説は、最後に走って去っていくときに「自分で考えろ」と言っているところから、将也が「自分で考え」ても思い当たるはずのない7)〜9)が「3つめ」であることはありえないため、否定されます
タグ:第61話
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第60話から、真柴と川井の関係進展を考える

※このエントリは、第60話連載時に書いたものです。そのため、その後の連載の内容と齟齬があったり考察に変化がある場合があることをご了承ください。

さて、第60話の影の主役?といえば、なんといっても真柴と川井でしょう。
第60話前半のランチシーンでの「恋愛バトル」は、プロレスの様相を呈してものすごく面白い展開になっていました。


第60話、7ページ。

このやりとりを見ると、端的にいって真柴と川井との関係は「進展」しているように見えます。
それは、恋愛関係になっている、ということではなく、「相手の腹を探り合っているクラスメート」という関係から、相手に関する恋愛感情(とその受け止め方)も含めて、何でも普通に話せる親密な友達になっている、というニュアンスです。
川井は、かつてのような一応恋愛感情を隠しながら「アプローチ」する段階から、あからさまに恋愛感情を真柴に示しつつアプローチする段階に進んでいますし(真柴のことを「君」と呼ぶシーンもあります)、真柴は真柴でそれを当たり前に受け止めて軽口を叩くような状態になっています。

この変化は、どのようにして起こったのでしょうか?
おそらくそこには「川井の心境の変化」があり、その結果として川井がいくつかの行動を起こしたのだろうと推測されます。

橋崩壊事件や千羽鶴事件を通じて、川井のアイデンティティは揺らいだはずです。
将也の橋での暴言やクラスメイト(溝端さん?)のLINEもどきでのメッセージなどから、川井は、自分では自分のことを「かわいい」と思っていて周囲もそう受け止めていると思っていたけれども、実際にはそう考え、振舞っている自分のことを「気持ち悪い」と思われている部分もあるのかもしれない、と気づいたのだと思います。

一方で、その後の映画再開から映画完成という経験は、川井にとっても達成感のあるプラスのものになっただろうと思います。
川井の脚本にしたがってメンバーが演じ、真柴だけでなく、永束や硝子といった他の映画メンバーとも親密になり、「アイデンティティが揺らいだ後の自分」が受け入れられた実感があったのではないかと思います。

それらの経験から、川井はどう自分を変えたのでしょうか?

恐らく、川井は、より「ありのままに生きる」ことを決意したのではないか、と思います。
具体的には、少し無理していた新しい髪型をやめて元に戻し、意中の真柴には自分の恋愛感情を伝えた(告白した)のではないか、と思います。
それまでは、「かわいくて優等生な自分」という自己像を維持するために無理していたことをやめてしまったんだろう、と思うんですね。

その意識は、第60話でも「これが 私」というせりふにはっきりと現れています。


第60話、9ページ。

かっこ悪くても、それが自分なんだからそのままで生きればいい、そういういい意味での開き直りがここには感じられ、肩の力の抜けた新しい川井の生き方が描かれていると感じます。
タグ:第60話
posted by sora at 07:07| Comment(3) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

「このマンガがすごい!2015」で聲の形が1位獲得!

乗るしかない、このビッグウェーブに(笑)。

「このマンガがすごい!2015 オトコ編」の第1位に、「聲の形」が選出されました!



セブンネットショッピングがフライングで表紙を出してしまって判明したようです。
Amazonとかは表紙が塗りつぶされてまだわからなくなっています。





それにしても、ついに来ましたね!
もともと下馬評も高く、本命視されていたとはいえ、実際に受賞となると感慨深いものがあります。
こんな難しく、一般受けしないであろうテーマで、数ある作品を振り切って1位を獲得した「作品の力」は、やはり素晴らしいものがあると思います。

これで、コミックスの売上もさらに伸びるでしょうし、アニメ化についても弾みがついてスポンサーの獲得も容易になるのではないか(=予算が増えて作り込みが深くなる)と期待せずにはいられません。

コミックス最終巻も発売まであと2週間足らずとなりましたし、この12月は、コミックス最終巻と「このマン」1位で、聲の形でもう一度盛り上がることができますね!(^^)


posted by sora at 21:40| Comment(8) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする