当ブログでは、いわゆる発売日前の「フライングのネタバレ」に関する話題は扱いません。フライングのネタバレとなるコメントはご遠慮ください。ご協力よろしくお願いします。(発売日後のネタバレはOKです。)

おすすめエントリ(最初はこちらからどうぞ)

2014年11月13日

第61話、リフレインがてんこ盛り(3)

さて、第61話に盛り込まれたさまざまな「リフレイン構造」ですが、ざっと読むと、

・植野の過去の告白=佐原カラオケ回での将也の過去の告白
・橋での「同じこと考えてた」=第2巻での「同じこと考えてた」


の2つがそれに該当することに気づきますが、私はもう1つ、今回、リフレイン構造が盛り込まれているように感じています。

それは、

硝子との別れ

のシーンです。
硝子との別れ、ということですから、これは当然、第1巻、小学校時代に硝子が水門小を去っていったところと対応するリフレイン、ということになります。

ここは、第61話だけで終わらない、もう少しスケールの大きなリフレインになっています。
第61話(および高校編)の展開を整理すると、

1)将也と硝子が4月に再会する。
2)第23話で硝子が将也に告白するも、伝わらない。
3)植野の行動(猫ポーチを将也に渡す)がきっかけになって埋め込まれた、ガーデンピックという伏線。
4)将也昏睡後の橋での奇跡などのイベントにより、2人の心は深く通い合った。
5)3)の伏線はずっと回収されず、再会から1年たたずに、別れが訪れる。
6)硝子が去っていくのを、しっかりと見送る将也。

第61話、16ページ。

7)硝子と別れた後に初めて回収される、3)の伏線。
8)3)の伏線が回収され、満足する将也。

第61話、17ページ。


といったあたりになるでしょうか。
そして小学校時代のほうを同じようにまとめると、

1)将也と硝子が4月に出会う。
2)第2話〜第3話で硝子が将也に「友達になろう」と伝えるも、伝わらない。
3)植野らの行動(将也の机に落書き)がきっかけになって埋め込まれた、「硝子の落書き消し」という伏線。
4)取っ組み合いのケンカなどのイベントにより、2人の心は少し通い合った。
5)3)の伏線はずっと回収されず(将也は気づかず)、再会から1年たたずに、別れが訪れる。
6)硝子はケンカから1か月後「黙って消えた」。

第1巻165ページ、第4話。

7)硝子が消えた後に初めて回収される(将也が気づく)、3)の伏線。
8)3)の伏線が回収され(将也が硝子の落書き消しを知り)、自分の愚かさを知り後悔する将也。

第1巻168ページ、第4話。


こうやってみると、実はガーデンピックはリフレイン構造上、小学校時代の「硝子の落書き消し」と対応しているらしい、ということに気づきます。
だから、ガーデンピックも「別れのタイミングまで回収されない伏線」になっていたんですね。

こちらのリフレインも、6)と8)の違いが際立つことで、小学校時代と高校編の違いが鮮やかに描かれていて感動的です

誰にも見送られずに寂しく消えていった小学校時代の硝子と、仲間たちに見送られ、惜しまれて去っていく高校編での硝子。
硝子が去っていったあと、後悔の念にとらわれた小学校時代の将也と、硝子が去っていったあと、納得と満足の表情を浮かべる高校編での将也。


第61話は、このように3つものリフレイン構造がたった1話に盛り込まれた、非常に凝った構成の話になっています。
タグ:第61話 第04話
posted by sora at 07:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第61話、リフレインがてんこ盛り(2)

第61話には非常にたくさんの「リフレイン構造」が盛り込まれています。
1つめは「植野の過去の告白」が、第3巻の佐原カラオケ回の「将也の過去の告白」に対応している、というリフレインでした。

そして2つめは、将也と硝子の橋での会話です。
第61話のこの場面は、第2巻で結絃の妨害にもめげず、永束の応援もあって、将也と硝子が2度目の再会を果たしたときの場面のリフレインになっています
(第54話の「橋の上の奇跡」のシーンでも、将也が「俺も同じこと考えてた」と言っていますので、リフレイン要素がありますが、シーンごとの対応がいまいち弱いので、今回は2巻のリフレインとして扱います)

第61話のシーンを整理すると、

1)将也が先に橋に到着。
2)そこに硝子があとからやってきて、橋で合流。
3)将也が、(進路について)照れながら率直な思いを話す。
4)硝子はそれに対して、「私も同じこと考えてた」と返す。


第61話、13ページ。

5)鯉へのエサやりのパンが、照れている二人の会話をつなぐアイテムとして登場。
6)それをカメラのファインダー越しに眺める結絃。
7)2人の手話の会話を訳す結絃。
8)2人の様子を見つめながら「頑張れ 2人とも」とつぶやく結絃。



第61話、14ページ。

といった展開になっています。
これを第2巻での2度目の再会シーンに対応させて整理すると、

1)将也が手話サークルで会えないことを嘆きながら橋に向かう。
2)追いかけてきた硝子と、橋で合流。
3)将也が、(ここ2週間で考えていたことについて)照れながら率直な思いを話す。
4)硝子はそれに対して、「私も同じこと考えてた」と返す。


第2巻84ページ、第9話。

5)鯉へのエサやりのパンが、照れている二人の会話をつなぐアイテムとして登場。
6)それをカメラのファインダー越しに眺める結絃。
7)2人の手話の会話を永束のために訳す結絃。
8)2人の様子を見つめながら「わざわざ あいつとつるまなくても 幸せになれるのに バカだなあ ねーちゃんは」とつぶやく結絃。



第2巻85ページ、第9話。

となります。
こちらのリフレインがとても感動的なのは、

最後の8)のつぶやきのニュアンスがまったく前回と逆になっている。

ということで、リフレイン構造のなかに「違い」をうまく取り入れることで、「変化」を際立たせているところです。

第2巻のときには、結絃にとっての将也は「突然降って湧いたかつての憎むべき敵」でした。
おそらく結絃は、硝子がいじめを受けて「死にたい」と漏らしたときの相手が将也だったことも知っていたでしょう。
だから、結絃にとっての将也は「こいつだけは絶対にねーちゃんに寄せ付けてはいけない最低なヤツ」だったはずです。

それが、いまや状況はまったく変わりました。
結絃にとっても将也は「誰よりも信頼できて頼ることができる、兄のような存在」になり、結絃は将也のおかげで不登校を解消し、自分のための未来を踏み出せるまでになりました。

そして硝子にとっても、文字通りの命の恩人、それは単に飛び降りを救ったというだけでなく、「いまこの世界に、障害をもったありのままの自分が生きていくこと」に初めて積極的な意味を持たせてくれた存在になりました。

そして2人は、事実上将来を約束しています。
そんな2人がこれから社会に出ていくために挑戦しようとしている、それを見た結絃が、「2人とも頑張れ(オレも頑張る)」と応援している。

リフレイン構造が「かつて」との共通点と相違点を際立たせる事で感動的なシーンを演出している、本当にいい場面だと思います。
posted by sora at 07:17 | Comment(4) | TrackBack(0) | 第7巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第61話、リフレインがてんこ盛り(1)

さて、第61話の大きな特徴は、さまざまな場面が、これまでのシーンのリフレインになっている、ということです。
ここでは、エンディングに向けて、読者にメタのレベルでも懐かしさを感じさせる、幾重にも重ねられた第61話のリフレインを見てみたいと思います。

まず、前半の場面で、公園で植野が将也に昔話をするシーン

これは明らかに、第3巻の佐原カラオケ回のあと、将也が佐原に、過去の硝子いじめの件を告白したシーンのリフレインになっています

第61話のシーンは、

1)話をするために公園に場所を移して、
2)植野と将也が1対1で話をした。
3)話題は、植野がやっていた、小学校時代の将也へのいじめの話など。
4)植野は、いつかこの話をしなければならないと思っていた。
5)植野の話に、将也は理解を示した。
6)この会話によって植野と将也は「和解」し、信頼関係が一段深まった。



第61話、7ページ。

という展開になっていますが、これを佐原カラオケ回の将也の告白と対応させてみると、

1)話をするために公園に場所を移して、
2)将也と佐原が1対1で話をした。
3)話題は、将也がやっていた、小学校時代の硝子へのいじめの話。
4)将也は、いつかこの話をしなければならないと思っていた。
5)将也の話に、佐原は理解を示した。
6)この会話によって将也と佐原は理解を深め、信頼関係が一段深まった。



第3巻60ページ、第17話。

となり、きれいにリフレイン構造が作られていることが分かります。

第3巻のこの場面で、将也がかつて硝子をいじめていたことを告白していなければ、将也は佐原に対してずっとそれを隠し続けることになっていました。
それは将也にとっても心苦しいことだったでしょうし、佐原からすれば、そのことがどこかのタイミングでバレたとき、「騙された」と感じて将也の味方ではいられなくなったかもしれません。
その後の展開を考えると、その「バレ」は橋崩壊の時に訪れていたと思いますから、もし将也が「告白」していなければ、橋崩壊後、佐原ははっきりと将也に対してNOをつきつけていたかもしれませんね。

同じような意味で、今回、植野が過去について正直に語ったことは、タイミング的には遅すぎましたが、植野にとっては心の重荷をおろすための、とても大切なことだったのだろうと思います。

一方で、どちらのリフレインについても、「より心の広い人間にある意味甘えて、自分の醜い部分をあえて聞かせる」という、ちょっとずるい構造がある点についても共通しているところも見逃せません。
そして、将也は、第3巻のときは「甘えて聞かせる側」だったのが、第61話では「甘えられて聞かせられる側」になったわけで、そこに、このリフレイン構造に組み込まれて描かれた「将也の成長」があるのだと思います。
タグ:第61話 第17話
posted by sora at 07:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする