2014年11月10日

第60話、将也に突きつけられた「守るという名の依存」からの卒業

第60話では、さまざまな登場人物の「未来」へ向けた課題や挑戦が描かれていますが、なかでも興味深く感じたものの1つが、将也の、

「守る」という名の依存

についての課題
についてでした。

今回、将也の母親に対する思いが初めて明かされました。
将也は、母子家庭で、家の中に男性が自分しかいないということを意識して、お店で働いている母親の身に危険が迫っていないかをいつも意識していた、というのです。
そして、そういう思いで母親を、家族を「見守ってきた」将也は、地元を離れるということは「考えてもいなかったこと」だったわけです。

ところが今回、将也は、そんな風に「ずっと見守っていくつもりだった」母親から、あっさりと、硝子と一緒に東京に行けばどうかとはっぱをかけられ、とまどいます


第60話、2ページ。

もちろん、将也の「母親を守りたい」という気持ちに偽りがあるとは思いませんが、でも、「守りたい」という気持ちの一方で、そうやって自分が誰かを守る立場でいることで、自分の居場所を確保して安心する気持ちがあったことも否定できないのではないでしょうか。

そう考えると、この「将也と母親」の関係は、「将也と硝子」の関係にも似ていることに気づきます。
将也はこれまで、「硝子のために命を消耗する」「何があっても硝子を守る」と誓い、実際にそのように行動してきました。


第5巻179ページ、第42話。

ところがここへきて、硝子が将来の夢を前向きに考えるようになり、東京に行きたいと聞かされた途端、取り乱して硝子を怒らせてしまいました。
これで分かるとおり、将也は、硝子との関係においても、これまで「守るという名の依存」に甘えていた部分があったことは否定できないわけです。

将也は、母親のことも硝子のことも「自分が守らなければならない」と思っていたけれども、実はそういう意識によって守っていたのはある意味自分自身だったのですね。

そしていま、そういう「守るという名の依存」から卒業すべきときが来ている、と思います。
将也は、誰を言い訳にもせず、一人で、自分自身の未来について選択をしなければなりません。
第60話はまさに、その課題が将也にはっきりとつきつけられたところで終わりました。
第61話では、その課題への答えがきっと示されるのだと思っています。

※ついでにいうと、硝子に関して、将也とほぼ同じ課題をつきつけられているのが結絃です。
 昨日~今日の別のエントリで、その点について触れました。
 ですから、この2人が硝子のことについて語るとき、以心伝心になるのは当然といえば当然ですね。

タグ:第60話
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第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(5)

硝子の夢の実現のために自分が足かせになりたくないと願う結絃は、これまた硝子が取り計らってくれた「写真コンクール」の入賞をきっかけに長く続いた不登校生活にピリオドをうち、登校を再開することになりました。


第60話、15ページ。

でも、これだけでは硝子の心配のタネはまだ解消していません。
硝子が安心して東京に出ていくためには、結絃は中学卒業後の進路を決める、つまりどこかの高校に合格する必要があります

ところが、さすがに不登校が長く続いたせいで、結絃の現在の学力は悲惨な状態です。
恐らく登校初日だと思われますが、第60話で、結絃は英語の小テストで100点満点中わずか4点というひどい点を取ってしまいました。


第60話、12ページ。

こんなひどい点数、硝子には見せられません。
1回くらいは証拠隠滅できるかもしれませんが、こんな点数を続けていたのでは、そのうち硝子や家族にもバレ、硝子は心配して上京を諦めてしまうでしょう。

結絃は、とにかく自分の至らなさが理由で、せっかく人生を前向きに生きようとしている硝子がまたそれを諦めるようなことだけは避けたいと強く強く願っているはずです。
ですから、将也のところにやってきて、家庭教師をお願いしたのです。
不登校は解消できた、あとは授業に追いついてどこか高校(太陽女子を選ぶ可能性がぐっと高まりましたが)に合格して、硝子が心残りなく上京を選択して夢をおいかけられるようにしたい、絶対に自分が硝子の夢の足かせになりたくない、結絃は心からそう願ったからこそ、これまでとは打って変わって真剣に勉強を始めたのだと思います

結絃の、硝子からの「卒業」がどのように描かれるのか、ずっと興味を持っていましたが、今回、「硝子を笑って夢に向かって送り出せる自分になる」という「使命感」によってそれが描かれた、という印象を持っています
そして、その「卒業」が成功すれば、物理的にも硝子は遠くにいき、結絃は新しい生活を新しい仲間と新しい環境の中で始めることになり、それによって結絃はようやく「自分のために、自分の人生を生きる」ことを始められるようになるんだろうな、と思います。
タグ:第60話
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第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(4)

誰よりも姉である硝子の幸せを願っている結絃は、硝子が母親のすすめに反対してまで、将来への具体的な夢(東京で理容師の修業をする)を目指そうとするほど前向きになったことを嬉しく思ったことでしょう。

ところが、硝子がその夢を実現するには、大きな障害が1つあることに、結絃は気づいてしまいます。

他ならない、結絃自身です。

結絃は現在不登校が続いており、そんな状態で中3の秋を迎えてしまいました。
このままいくと高校に進学することもできず、将来の具体的なビジョンがまったく見えないままただ中学を卒業してしまうことになりかねません。
そんな状況になってしまったら、優しい硝子は結絃のことを心配して、状況をとりやめて地元に残り、結絃の面倒をみることを選択するに違いありません。


第60話、15ページ。

結絃としては、自分のために硝子が夢を諦めるなんていう展開だけは絶対避けたいはずです。
かつて「硝子を守る」ために結絃が選択した不登校が、ここへきて「硝子の未来の夢を邪魔する」結果になりつつあることは、皮肉だとしか言えません

そのためには、まずは学校に行かないと。

ただ、第59話でも描かれたとおり、長く不登校を続けた結絃は、登校再開のきっかけもなく、仮に登校したとしても不登校期間が長すぎて授業についていけないという問題がありました。

でも、その問題に解決の糸口をつけてくれたのも、やはり硝子でした。


第60話、15ページ。

硝子がすすめて西宮母が(結絃に無断で)応募した写真コンクールで、結絃の写真が優秀賞をとったのです。
これがきっかけになって、結絃は登校を再開することができました。クラスメートからも歓迎され、登校再開は成功しました。

またもや、かつては守っているつもりだった硝子に、結絃は助けられることになったわけです。

しかも、この硝子のはからいには、結絃にとっては別の意味で重みがあったでしょう。
なぜならこれは、以前の絶望した硝子が「自殺する前の最後の結絃への思いやり」として行ったことだったからです。


第5巻168ページ、第41話。

自分が死を選ぶことを決めたあとですら結絃の将来のことを考えていた硝子の優しさを思えば、結絃はこの写真コンクールの入賞をきっかけに、(硝子のためにも)必ず登校再開を成功させたい、という強い思いをもったに違いありません。
タグ:第60話 第41話
posted by sora at 07:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする