2014年11月07日

第60話、最後のあおりで気になるタイムスキップ(2)

さて、前のエントリで、もし第61話で「タイムスキップ」があるなら、第61話でクリスマスの頃に進路も決まり告白も終わるクライマックス、第62話はさらに時が進んで卒業と別れが描かれるのではないか、と予想しました。

…ただ、これだと最後の方はほんとに平凡なクリシェの連続になってしまいますね。

私は、大今先生はもしかすると、最後に最大級の「リフレイン」を入れてくるんじゃないかと予想しているのです。

それは、

高校編全体が、小学生編全体のリフレインになる。

という構造です。
もう少し具体的にいうと、

第2巻から第7巻が、第1巻のリフレインになる。

ということですね。

第1巻、つまり小学生編から高校編へのつなぎまでの物語の構造を抽出すると、

1)将也と硝子が4月に出会い、
2)合唱コンクールとか学級裁判とかいろいろあって、将也も硝子も上がったり下がったり。
3)最後にちょっと心が通い合って、
4)出会って1年たたずに別れが訪れる。
5)そして数年後に再会。



第2巻20ページ、第6話。

という形になっています。これを第2巻以降の高校編にもあてはめて、

1)将也と硝子が4月に出会い、
2)映画制作とか橋崩壊事件とかいろいろあって、将也も硝子も上がったり下がったり。
3)最後に心が通い合って、
4)出会って1年たたずに別れが訪れる。
5)そして数年後に再会。


という展開で、第62話までを描ききるんじゃないか、と想像するわけです。

その場合、すでに第60話までで1)から3)までは描かれたといえるので、残る第61話と第62話で、上記4)と5)の部分が描かれることになります。

ただ、こちらの予想でも、4)については、前エントリで予想した第61話と第62話の予想の前半までと大きくは違わないでしょう。

違ってくるのは、「エンディングの予想」になります。
「リフレイン」をきれいにまとめるなら、ラストの舞台は平和な石田家ではなく、あの「橋」しかありえません。

大学を卒業し、新米教師になった将也は、東京での修業を終えて戻ってきた硝子が、かつて毎週火曜日に集まっていた「橋」にいると聞かされ、大急ぎで橋に向かう。
橋の手前、手話サークルの入っていた福祉会館を見上げて、「やっと硝子に会える」とつぶやいて、第5話の「60とかに…」の伏線を回収。
橋にたどりつくと、懐かしい硝子の後ろ姿が。
そして将也は、第1巻ラストと同じように「西宮っ!」と叫び、硝子はその気配に振り向く。

ここからは、第2巻冒頭の第6話のリフレイン。
将也は、硝子への思いを語ったあと、手話で「俺と…お前… 一緒になれるか?」と硝子に尋ねる。
その問いかけに、握手を返す硝子でエンディング。



第2巻22ページ、第6話。

…こんな感じでしょうか。
これまで、これでもかというくらい繰り返し「リフレイン」の構造を見せつけてきた大今先生なので、最後の最後で、これ以上の規模はないという超弩級のリフレイン(実は高校編はぜんぶリフレインでした!)を、こんな風に繰り出してくる可能性も少なくないと思うのです。
posted by sora at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

第60話、遂に硝子の皆勤賞が途絶える?

第60話は、硝子がほとんど登場しない回になりました。
実はこれは非常に珍しいことで、「硝子の頭部」が1コマも登場しない回というのは、実は連載60回のなかで、今回が初めてなのです。

「聲の形」は、一定の視点縛りがありつつも、それほど密接に接点があるとはいえない将也と硝子のドラマをそれぞれ描いている作品なのですが、実はほとんどすべての回で将也・硝子の両方が少なくとも1コマは登場していて、この2人についてはほぼ毎回「皆勤賞」と言える状態だったりします

明らかに将也・硝子が登場していない回もたくさんあるはずなのに本当に?と思われるかもしれませんが、そういうときは必ず誰かの回想シーンとかの中に登場して、「皆勤賞」を続けています
そういう視点で単行本を読み直してみると、「あ、こんなところに!」という、ウォーリーをさがせ状態になってとても面白いので、ぜひ一度試してみることをおすすめします。

さて、では実際に硝子、それに加えて将也についても、毎回登場の皆勤賞がどんな状況になっているのか、現時点までのところをまとめておきたいと思います。

まず将也ですが、残念ながら既に「皆勤賞」は途絶えています
ただ、登場しなかった唯一の回は本編ではなく、第1巻および第4巻に収録された番外編でだけですので、番外編を例外とみるなら、まだ第60話にいたるまで、「本編」皆勤賞を続けています。

将也が物語から消えた第6巻で、将也の皆勤賞には黄信号が灯りました。
でも、微妙なところにちょっとだけ顔を出すことで、何とか皆勤賞が維持されました。

第44話では、結絃が石田母に見せたデジイチの動画で、液晶画面に後姿がちょっとだけ映ることで皆勤継続。


第6巻29ページ、第44話。

第48話の「川井回」では、川井が思い出したひどい回想シーンで落書きみたいな顔が描かれることで、辛うじて皆勤が維持されました。


第6巻102ページ、第48話。

一方、硝子については、将也の孤独が描かれた第5巻でピンチが訪れていますが、ここも将也がさまざまなポイントで硝子のことを思い出すことで、なんとか皆勤賞が守られました。

まず第33話では、硝子を排除して映画を作ろうとする植野ラインのメンバーの話し合いの際、将也が「そういえば西宮は入れないのかな」と考えて硝子のことを思い出したコマでぎりぎり登場しています。
また、第38話では、川井に過去を暴露されてボロボロになって逃げていくシーンで、小学校のころのクラスメートを思い出しているとき、辛うじて硝子の後姿がちょっとだけ映りこんでいて、それで皆勤が維持されました。


第5巻112ページ、第38話。

そして第60話です。
実は第60話でも、硝子の「皆勤」はぎりぎり維持されているんですよね。
将也が結絃に勉強を教えているとき、仲間の進路の話を思い出して、硝子の「手話をしている手」を思い出しています。


第60話、14ページ。

第60話で、「硝子」が登場しているのはこのシーンだけなので、最初にも書いたとおり、「硝子の頭部」の皆勤賞は第60話で途絶えてしまったことになりますが(これまではすべて頭部が映っていました)、「硝子」の皆勤賞ということでは、まだ60話でも維持されていると言えます。

このまま、最終回まで、硝子はパーフェクト皆勤賞、将也は番外編を除いた本編皆勤賞を達成するでしょうか?
あと2話、ラストのクライマックスですから2人が登場しないというのは考えにくく、おそらくこのまま皆勤賞が達成される可能性が高そうですね。
posted by sora at 07:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

聲の形の最終回到来が完全確定?ファンブックが出る?

今朝は、マガジン編集の方のこの一連のツイートが話題になっていました。











ここから分かることは、

1)いま最終話のネームがちょうど確定したところ。

→やはり次次回、第62話で完結することが確定しました。
→いまネームがあがるタイミングということは、カラーページもあるだろうことも考えると、スケジュール的に第1巻のころのような「大幅増ページ」もなさそう(数ページ程度の増はあるかもしれませんが)。

2)深読み系のインタビューが掲載される。

→「このマン」ですかね? 深読み系だとすると一般誌とかじゃなくて専門誌とかであることは間違いないでしょうし、ロングインタビューになっていることでしょう。いずれにしても楽しみです。
→下記3)に関連して、聲の形だけを取り扱ったファンブック・解説本的なものが出るのかもしれません。だったらなおさら楽しみですね。

3)ファンブックが出るかも?

→「あまたの漫画賞や解説本が…」というつぶやきからは、もしかすると聲の形の解説本が出て、そこの2)のインタビュー記事が掲載される、ということなのかもしれません。
→解説本、ファンブックのようなものが出るなら、2つの読み切り版や連載時に掲載されたカラーイラストの原画集、ロングインタビューにキャラクター解説、手話解説、聖地巡礼記事なども期待できますね!期待してしまいます。
タグ:第62話
posted by sora at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | その他・一般 | 更新情報をチェックする

2014年11月08日

第60話、コネタの宝庫!の1コマめ

さて、このブログでは、毎週火曜日に、その週の連載でネタとして使い切らなかったコネタをまとめて「小ネタ集」としてエントリにしていますが、第60話はあらゆるところにどこまでコネタを盛り込めるかに挑んだ「コネタ実験話」とでもいうべき様相を呈しています。

ですので、今回に限っては火曜日に残り物扱いでコネタを書くのはもったいない気がしますので、コネタだけのエントリも書いてみたいと思います。

というわけで、第60話1ページの1コマめです。
このページだけで、数え切れないほどのコネタが盛り込まれて楽しくなってきます。

1)将也が読んでるのは「恋の形」

将也の腰の辺りに転がっている本、よくみると「恋の形」という名前がついています(笑)。


第60話、1ページ。

マガジンコミックスのロゴが入っていますし、将也が読んでいるのが「第5巻」で、横に4冊同じコミックスが積みあがっていて、「下から」2番目が第2巻になっている、ということは、1巻から順に読んでいって第5巻まで読んでいる(それ以後の巻が周囲に見当たらないということは第5巻が最新or最終巻)、ということが分かります。

第5巻の表紙には制服姿の女子高生?らしきキャラクターと、大写しの男性キャラの横顔が写っており、著者は「今井きよし」となっていて、微妙に「大今良時」のアナグラムっぽくなっていますね(でも合っていませんが)。
このコミックス、年度の最初に所有物を全部売った将也が自分で買ったとはちょっと考えにくいので、姉から借りて読んでいると考えるのが自然かもしれませんね。
それにしても、こんな本を読む気になった将也の心境の変化とはいかに。


2)デスメタルランもある

こちらはきれいに積み上がっていて、読まれている気配がまったくないですが、コマの片隅に本が積み上げてあって、一番上の本の表紙をよく見ると「宇宙服を着たネコ」が登場しています。


第60話、1ページ。

となるとこの本は、聲の形の世界で大人気らしいまんが、「デスメタルラン」シリーズということで間違いないでしょう
冊数などから推理するに、これは第46話で永束が見舞いで持ってきてくれたものなのではないかと思います。


第6巻59ページ、第46話。


3)いつ買った?東京治安マップ

「恋の形」と一緒に読んでいたと思われる本がもう1冊、将也の体の近くに転がっています。


第60話、1ページ。

「東京治安マップ」「よくわかる」というロゴが見えます
自分で「東京は危険な所だから」と言ったこともあって、東京の治安がどうなっているのか、調べてみようと思ってかったのでしょうか。

こんな本が将也の自宅にもともとあるとは考えにくいので、この本はあの橋での言い争いがあった後、自宅に帰る前に本屋に寄って買って帰ってきたのだろうと思います。
こういったところにも、将也の生真面目さが現れていますね。

ついでにいうと、こちらの本を買いに書店に行ったということは、もしかすると、先ほどの「恋の形」も、自分で買ったのかもしれません。


4)「ちゅき」のイラストの入った教科書

さて、本のネタが続いていますが、このコマのなかには、将也が勉強していると思われる教科書が何冊か描かれています。(よくみると数学の教科書もあります)

コマの左下、将也からみて右側に転がっているのが、英和辞典と英語の教科書と思われる「CLOWN III」ですが、


第60話、1ページ。

表紙のイラストが月です

月といえば第23話、硝子の渾身の「好き」という告白を、将也が「月」と聞き間違えた、あの「月」を思い出さずにはいられません。
折りしも1つ前の第59話は、硝子の懇親の「理容師」という手話を、将也が「美容師」と読み間違えたということで、第23話のリフレインのようになっていましたから、ここで「ちゅき」のイラストの入った教科書が描かれているのも、それらと無関係とは思われません


5)こっそりマリア登場

コマの右下、東京治安マップの下あたりに、何かあります。


第60話、1ページ。

これはたぶんマリアの足(靴下)ですね
いつもマリアは将也の近く、屋根裏部屋で寝ているので、今回も将也のすぐ隣で一緒に寝ているのでしょう。

それにしてもいつも思うのですが、石田家の屋根裏部屋に上るには、かなり急なはしごを登らないといけないはずなのですが、小さなマリアはいつも自分で上り下りしているのでしょうか?
親の目線でいうと、かなり危なくて心配ですね(笑)。


6)将也が飲んでいるのはサムトリー?の「冷桃」

最後はコネタ中のコネタですが、ゴロゴロしている将也のすぐ脇にあるペットボトル、「冷桃」というロゴが見て取れます。


第60話、1ページ。

そしてこのコマではありませんが、あとの3コマめと併せてみると、このペットボトルのメーカー名として「SUMT???」というのが見えます。
ロゴの感じからして、サントリーをもじった「サムトリー(SUMTORY)」というメーカーのようですね。
posted by sora at 07:48| Comment(4) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

第60話、今度はゼリーを3個持っていく将也

第60話はコネタの宝庫なのですが、そのなかでも結絃がらみで盛り込まれている2件のコネタが実に面白いです。
こちらのエントリはそのうちの1件目。

学校から帰り、結絃が部屋に遊びに来ていると聞かされた将也は、母親に「冷蔵庫のゼリー出してあげて」と言われて、ゼリーを持って部屋に向かいます。



そしてこのときよく見ると、将也はゼリーを3個持っていっているんですよね。

思い起こしてみると、結絃が将也の部屋にまで上がりこんだのは3回目です。
1回目は硝子にバカッター事件をとがめられて家出をしたとき、このときは2人で同じ部屋で寝ています(まだこのときは男だと思われていたんですよね)。
2回目は遊園地回のあと、観覧車の中を盗撮した「ゴクヒ映像」を2人で見たときでした。

そしてこの「2回目」のとき、やはり将也は母親に促されて、冷蔵庫の饅頭を2つ持って部屋に上がっています。


第4巻73ページ、第27話。

ところが、この2つの饅頭を、食いしん坊の結絃に両方とも食べられてしまうんですよね。
結絃が帰った後、自分の分の饅頭を食べようとした将也は、すでに饅頭が両方ともなくなっていることにそのとき初めて気づきました。

そこで今回は、結絃が今回もゼリーを2個は食べてしまうだろうと予想して、最初から結絃のぶんを2個確保して、ゼリーを3個持っていった、ということだと思われます。

前回の「饅頭ぜんぶ食べられてしまった事件」も、わかる人にだけわかるようにしか描かれておらず、深く読み込んでいる人専用のマニアックなネタだったのですが、今回、さらにそのマニアックなネタにかぶせて新しいネタを展開させているのは渋いですね。

ちなみに、さらに今回は「持っていったのが3個」というだけでなく、

スプーンは1個だけ。

というコネタまで盛り込まれています。


第60話、11ページ。

これは、将也の方はゼリーをスプーンで食べずに容器から直接流し込んでワイルドに食べるつもり、ということを表しているのでしょうね。(さすがに、3個とも結絃にあげて自分は0個、とは考えにくいので)

ついでにいうと、持っていっている3個のゼリーはいずれもフルーツゼリーらしく、それぞれ入っていると思われる果物が違います。
上から2番目は間違いなくみかんのようですが、その上は桃でしょうか。
タグ:第60話 第27話
posted by sora at 08:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

第60話、結絃の小テストの行方は?

さて、第60話にふんだんに盛り込まれたコネタですが、結絃に関するコネタとして、「饅頭リベンジでゼリーは3個」というものに加えてもう1つ、

4点の小テストの取り扱い

というのがあります。

今回、結絃は久しぶりに学校に行き、そこで英語の小テストを受けたようですが、その点数は100点満点中4点という悲惨なものでした。
そしてその結果を、部屋にやってきた将也に見せるのですが、その後は…。


第60話、13ページ。

小テストをくちゃくちゃに丸めて、そのまま部屋の中に捨てています(笑)。

そしてその後のコマでも、丸められた小テストがそのまま将也の部屋の床に転がっているのが写っています。


第60話、14ページ。

この、「気に食わない紙はくちゃくちゃに丸めてその辺に投げ捨てる」という結絃の動作は、以前にも見たことがありますね。

そうです、葬式回のときの祖母からの手紙です。

徹底して嫌っていた母親のことを、慕っていた祖母が評価するような手紙の文面を見て、どうしてもその内容をその場で受け入れたくなかった結絃は、手紙を朗読していた(させられていた)将也の手から手紙を奪い、やはりくちゃくちゃに丸めてその辺に投げ捨てていなくなりました。


第4巻162ページ、第31話。

ただ、結絃は、このときも今回もそうですが、丸めた紙を投げ捨てるときに遠投せずにその辺に転がすだけなので、このときも将也がそれを拾って西宮母に手渡すことができました。

今回も、結絃が帰った後、将也は床に転がった小テストを発見するのでしょう。
それを将也がどう「処分」するのかは、ちょっとわかりませんが…。
タグ:第60話 第31話
posted by sora at 08:19| Comment(3) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

2014年11月09日

第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(1)

さて、第60話でちょっと驚いたのは、結絃が急に登校しはじめて、さらに真面目に勉強を頑張って授業に追いつこうとしていることです
つい1話前の第59話では「大丈夫 諦めてる オレもばばーも」と言って登校・勉強する気がないようなそぶりだったのに、なぜ結絃は急に態度を変えたのでしょうか?

私は、ここには結絃の大きな「気づき」と価値観の転換があったと感じています。

結絃が登場した第2巻から、硝子が自殺を決行したあたりまで、結絃はずっと「硝子の保護者」を自認し、障害者である硝子を自分がいじめや辛いことから守っているんだ、硝子は自分がいなければだめなんだ、と考えていました。

そういった考えが端的に現れていたのが、たとえば第4巻のガムシロ回です。
泣いていた結絃が強がって「退屈だ」と言っているところに、将也が「(退屈なら)ねーちゃんがいるだろ」と言ったとき、結絃は、


第4巻138ページ、第30話。

結絃「ねーちゃんは だめだめだよ オレがおもりしてやんねーと」

と返しています。硝子のことを「オレがおもり」する対象と認識していることが分かります。
さらに、硝子が自殺を決行してしまって、将也が眠る病院で石田母に会ったときも、結絃は、


第6巻29ページ、第44話。

結絃「オレのカントクフユキトドキです ごめんなさい」

と言って土下座して謝罪しています。

考えてみると、そもそも結絃が髪を短く切って男性的に振舞うようになったのは、第1巻番外編のあの日、石田母が硝子の意を汲んでボブカットにした髪を西宮母がさらに短く切ろうとしたとき、それに抗議する意味も込めて結絃が自分で自分の髪を切ったときからでした。

さらに遡ると、硝子が水門小に転校してくる前、第二小の時代には、硝子はデラックス一味に石を投げられたり補聴器を捨てられたりしていじめられており、結絃はそんな硝子を守ろうと、必死にいじめっ子に立ち向かっていました。

つまり、結絃は小学校低学年の頃からずっと、障害がゆえにいじめられ弱い立場におかれていた硝子を「守る」ために行動し、硝子の保護者のように振舞っていた、ということになります。
髪を短く切って男性的に振舞ってきたところからは、西宮家に存在しない「父親的役割」を担おうという「使命感」も持っていたんだろうと推測されます。

でも、そんな結絃の意識と使命感(そしていくばくかのプライド)は、まさに先ほどの土下座騒動、「カントクフユキトドキ」と語った直後に起こったイベントで、ズタズタに引き裂かれることになります
posted by sora at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(2)

第2巻での登場時から、自殺決行後の病院で石田母に土下座するところまで、結絃は硝子に対して「自分がいなければ何もできない弱い存在」「だからオレが父親的役割を担って守ってやらなきゃいけないんだ」と、「硝子の保護者であること」にアイデンティティと使命感を持っていたと考えられます。

でも、そんな結絃の想いは、その土下座をしたのと同じ第44話の後半、硝子に対する植野の暴行騒動のなかで、決定的に否定されます。

植野は暴行の合間に、以前、遊園地回のあと硝子から送られた手紙を、嫌がらせの目的で朗読します。


第6巻34ページ、第44話。

私のせいで石を投げられてしまう妹のために
 みんなと同じようになりたくて 普通の子達と一緒にいたかった
 でも 同時に クラスのみんなに 迷惑がかかってしまった
 二つの気持ちの間で 葛藤するうちに
 作り笑いを続けることに 精一杯になってしまった」


そこには、硝子の結絃への思いと、その思いがゆえに硝子が追いつめられていった様子が書かれていました。

第51話の硝子回でも描かれましたが、硝子が水門小で「普通になりたい」と願った理由のかなりの部分は、「自分がもし障害者でなかったら当たり前に手に入ったはずの『当たり前の幸せな毎日』を、妹や家族に取り戻したい」という思いが占めていました

だからこそ硝子は無理をしてクラスメートの中に入っていこうとし、無理をして合唱コンクールに参加しようとしたわけですが、結果的にはそれがクラスメートの不興を買って、いじめられるようになってしまったわけです。

つまり、硝子が水門小で無理をしていっぱいいっぱいになり、あげくにいじめられるようになってしまったのは、硝子が障害者で弱いから、なんていう単純な(恐らく結絃が考えていたであろう)理由ではなく、それどころか実は、「妹である結絃が嫌な思いをしないように、今よりも幸せに生きられるように、障害者の妹だとバカにされないように」、そんな妹を思う気持ちがゆえにそういう結末を招いてしまった部分も少なからずあった、そういうことだったわけです。

硝子が植野に送った手紙を聞かされた結絃は、そのことを初めて知らされます。
それを聞いた結絃は、ショックだったことでしょう。

守っているつもりが、守られていた。

このとき、結絃のなかで「自分は硝子の保護者である」というアイデンティティは木っ端微塵に吹き飛んだだろうと思います。
それどころか「オレが、姉を『守る』なんて考えていたことはおこがましかった」と、これまでの自分を積極的に否定せざるを得ないところまで追い込まれただろうと思います。

だからこそ、そのあとの植野の硝子への暴行を、結絃は「(自分が)止めていいのか わからなかった」わけです。


第6巻48ページ、第45話。
posted by sora at 07:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする

第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(3)

結絃が硝子の自殺決行直後まで抱いていた、「硝子の保護者」、「自分が硝子を守る」というアイデンティティは、植野の手紙朗読で破壊されました。

そして一方、硝子は、ひとりで「壊れてしまったもの」を取り戻すために動き始めます。そこにはもう、結絃がついていくことはありませんでした。

結絃が不登校になった理由の1つに、「いつでも硝子のそばにいられるように」ということがあったと思われます
以前結絃は不登校の理由を「写真撮るためにブラブラしたいから」と言っていましたが、その写真自体が「硝子が自殺を考えないように」という死骸写真だったわけですから、本質的には「硝子を見守るために」不登校になった、と考えていいだろうと思います。


第4巻132ページ、第30話。

そうなると、結絃が「硝子をいつも見守る」必要も意味もなくなったことで、結絃にとって不登校を続ける大きな理由が1つなくなったことになります。

そんな風に、結絃にとっての姉である硝子の存在の意味が大きく変わっていくなかで、硝子自身も大きく変わっていきました。
ちょっと前まで自分からアクションを起こすことがなく、自分の意思を示すこともほとんどなかった硝子でしたが、将也復活から「橋の上での再会」以降は、別人のようになります。

そしてついに、母親からのすすめに異議までとなえて、「理容師の修業のために東京に出る」という、かつての硝子からは考えられないほど積極的かつチャレンジングな「将来の夢」が具体的に語られるまでになってきたわけです。

結絃は、嬉しかっただろうと思います。
家でぼーっとしているだけだった(さらには自己否定が極まって自殺までしようとした)硝子がここまで感情豊かになり、前向きに未来に挑戦しようとしていることに。


第59話、15ページ。

でも、そこで結絃ははたと気づいたはずです。

このままでは、自分のせいで硝子が夢を諦めることになってしまうかもしれない。

ということに。

※このエントリは明日に続きます。
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2014年11月10日

第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(4)

誰よりも姉である硝子の幸せを願っている結絃は、硝子が母親のすすめに反対してまで、将来への具体的な夢(東京で理容師の修業をする)を目指そうとするほど前向きになったことを嬉しく思ったことでしょう。

ところが、硝子がその夢を実現するには、大きな障害が1つあることに、結絃は気づいてしまいます。

他ならない、結絃自身です。

結絃は現在不登校が続いており、そんな状態で中3の秋を迎えてしまいました。
このままいくと高校に進学することもできず、将来の具体的なビジョンがまったく見えないままただ中学を卒業してしまうことになりかねません。
そんな状況になってしまったら、優しい硝子は結絃のことを心配して、状況をとりやめて地元に残り、結絃の面倒をみることを選択するに違いありません。


第60話、15ページ。

結絃としては、自分のために硝子が夢を諦めるなんていう展開だけは絶対避けたいはずです。
かつて「硝子を守る」ために結絃が選択した不登校が、ここへきて「硝子の未来の夢を邪魔する」結果になりつつあることは、皮肉だとしか言えません

そのためには、まずは学校に行かないと。

ただ、第59話でも描かれたとおり、長く不登校を続けた結絃は、登校再開のきっかけもなく、仮に登校したとしても不登校期間が長すぎて授業についていけないという問題がありました。

でも、その問題に解決の糸口をつけてくれたのも、やはり硝子でした。


第60話、15ページ。

硝子がすすめて西宮母が(結絃に無断で)応募した写真コンクールで、結絃の写真が優秀賞をとったのです。
これがきっかけになって、結絃は登校を再開することができました。クラスメートからも歓迎され、登校再開は成功しました。

またもや、かつては守っているつもりだった硝子に、結絃は助けられることになったわけです。

しかも、この硝子のはからいには、結絃にとっては別の意味で重みがあったでしょう。
なぜならこれは、以前の絶望した硝子が「自殺する前の最後の結絃への思いやり」として行ったことだったからです。


第5巻168ページ、第41話。

自分が死を選ぶことを決めたあとですら結絃の将来のことを考えていた硝子の優しさを思えば、結絃はこの写真コンクールの入賞をきっかけに、(硝子のためにも)必ず登校再開を成功させたい、という強い思いをもったに違いありません。
タグ:第60話 第41話
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第60話で描かれた、結絃の硝子からの卒業と使命感とは?(5)

硝子の夢の実現のために自分が足かせになりたくないと願う結絃は、これまた硝子が取り計らってくれた「写真コンクール」の入賞をきっかけに長く続いた不登校生活にピリオドをうち、登校を再開することになりました。


第60話、15ページ。

でも、これだけでは硝子の心配のタネはまだ解消していません。
硝子が安心して東京に出ていくためには、結絃は中学卒業後の進路を決める、つまりどこかの高校に合格する必要があります

ところが、さすがに不登校が長く続いたせいで、結絃の現在の学力は悲惨な状態です。
恐らく登校初日だと思われますが、第60話で、結絃は英語の小テストで100点満点中わずか4点というひどい点を取ってしまいました。


第60話、12ページ。

こんなひどい点数、硝子には見せられません。
1回くらいは証拠隠滅できるかもしれませんが、こんな点数を続けていたのでは、そのうち硝子や家族にもバレ、硝子は心配して上京を諦めてしまうでしょう。

結絃は、とにかく自分の至らなさが理由で、せっかく人生を前向きに生きようとしている硝子がまたそれを諦めるようなことだけは避けたいと強く強く願っているはずです。
ですから、将也のところにやってきて、家庭教師をお願いしたのです。
不登校は解消できた、あとは授業に追いついてどこか高校(太陽女子を選ぶ可能性がぐっと高まりましたが)に合格して、硝子が心残りなく上京を選択して夢をおいかけられるようにしたい、絶対に自分が硝子の夢の足かせになりたくない、結絃は心からそう願ったからこそ、これまでとは打って変わって真剣に勉強を始めたのだと思います

結絃の、硝子からの「卒業」がどのように描かれるのか、ずっと興味を持っていましたが、今回、「硝子を笑って夢に向かって送り出せる自分になる」という「使命感」によってそれが描かれた、という印象を持っています
そして、その「卒業」が成功すれば、物理的にも硝子は遠くにいき、結絃は新しい生活を新しい仲間と新しい環境の中で始めることになり、それによって結絃はようやく「自分のために、自分の人生を生きる」ことを始められるようになるんだろうな、と思います。
タグ:第60話
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第60話、将也に突きつけられた「守るという名の依存」からの卒業

第60話では、さまざまな登場人物の「未来」へ向けた課題や挑戦が描かれていますが、なかでも興味深く感じたものの1つが、将也の、

「守る」という名の依存

についての課題
についてでした。

今回、将也の母親に対する思いが初めて明かされました。
将也は、母子家庭で、家の中に男性が自分しかいないということを意識して、お店で働いている母親の身に危険が迫っていないかをいつも意識していた、というのです。
そして、そういう思いで母親を、家族を「見守ってきた」将也は、地元を離れるということは「考えてもいなかったこと」だったわけです。

ところが今回、将也は、そんな風に「ずっと見守っていくつもりだった」母親から、あっさりと、硝子と一緒に東京に行けばどうかとはっぱをかけられ、とまどいます


第60話、2ページ。

もちろん、将也の「母親を守りたい」という気持ちに偽りがあるとは思いませんが、でも、「守りたい」という気持ちの一方で、そうやって自分が誰かを守る立場でいることで、自分の居場所を確保して安心する気持ちがあったことも否定できないのではないでしょうか。

そう考えると、この「将也と母親」の関係は、「将也と硝子」の関係にも似ていることに気づきます。
将也はこれまで、「硝子のために命を消耗する」「何があっても硝子を守る」と誓い、実際にそのように行動してきました。


第5巻179ページ、第42話。

ところがここへきて、硝子が将来の夢を前向きに考えるようになり、東京に行きたいと聞かされた途端、取り乱して硝子を怒らせてしまいました。
これで分かるとおり、将也は、硝子との関係においても、これまで「守るという名の依存」に甘えていた部分があったことは否定できないわけです。

将也は、母親のことも硝子のことも「自分が守らなければならない」と思っていたけれども、実はそういう意識によって守っていたのはある意味自分自身だったのですね。

そしていま、そういう「守るという名の依存」から卒業すべきときが来ている、と思います。
将也は、誰を言い訳にもせず、一人で、自分自身の未来について選択をしなければなりません。
第60話はまさに、その課題が将也にはっきりとつきつけられたところで終わりました。
第61話では、その課題への答えがきっと示されるのだと思っています。

※ついでにいうと、硝子に関して、将也とほぼ同じ課題をつきつけられているのが結絃です。
 昨日~今日の別のエントリで、その点について触れました。
 ですから、この2人が硝子のことについて語るとき、以心伝心になるのは当然といえば当然ですね。

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posted by sora at 07:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 第7巻 | 更新情報をチェックする