当ブログでは、いわゆる発売日前の「フライングのネタバレ」に関する話題は扱いません。フライングのネタバレとなるコメントはご遠慮ください。ご協力よろしくお願いします。(発売日後のネタバレはOKです。)

おすすめエントリ(最初はこちらからどうぞ)

2014年11月01日

第59話、「将也の約束」はまだ達成なかば(1)

第59話は、将也にとってはなかなか厳しい回となりました。
将也自身がまだ気づいていないようですが、将也が硝子の上京を感情的に反対してしまう理由として将也が語っているすべての理由は嘘で、本心では「硝子に自分のそばから離れて欲しくない」という感情、平たく言えば恋愛感情とかそこからくる独占欲が理由であることは明らかです。
無意識のうちに、将也は自分に(さらには硝子に)嘘をついていることになっていますね。

さて、これから将也は硝子の上京志望について、どういう選択と行動をとるのでしょうか?

「硝子が無謀なことを言うから」断固として反対するのでしょうか?

それとも、

「硝子がどうしても上京するというから」自分も進路を何とかみつくろって一緒に上京するのでしょうか?

これだとどちらも、自分の本当の気持ちに直接向き合わずに、硝子を言い訳にして硝子への独占欲のようなものを正当化してしまうことになります。

「硝子を言い訳にして」…?!

どこかで見たことばですね。


第6巻13ページ、第43話。

そうです、これですね。
第59話を読んで、こんな風にこの先の展開を予想してみると、あることに気づきます。

それは、

将也が第43話で転落前に誓った約束の遂行は、まだ途中までしか終わっていなかった!

ということです。

「橋の上の奇跡」で硝子と本音を語り合い、文化祭でバッテンを外したことで、将也の転落前の「約束」は、ひととおり実行されたのかな、という印象をもっていたのですが、第59話でまたも将也はヘタレてしまいました。
また同時に、今回のヘタレ具合によって、将也はまだ硝子への恋心をはっきり自覚しておらず、また硝子に伝えるべきことばとしても伝えられていなかったんだ、ということを改めて確認させられました。

それによって、「第43話でのもろもろの約束」は、すでに(第59話の段階で)すべてクリアされたということではなく、「まだクリア途中のものである」ということが分かってきました

言い換えると、第7巻における将也は、第43話で誓った約束を、ラストに向かって1つ1つ守って実現していき、ラストで全クリアとなるのではないでしょうか。
そういう意味では、やはり「聲の形」とは、他の誰でもない(硝子ですらない)、「将也の」物語なんだと改めて思います。
タグ:第59話 第43話
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第59話、「将也の約束」はまだ達成なかば(2)

さて、第7巻がラストに向けて、「将也が第43話で誓った約束」を1つ1つ守って実行していくのだとすると、まずはその約束がどんなものであったのかを改めて確認する必要があるでしょう。

第43話を振り返ってみると、転落前に将也が誓った約束は、大きく次のようなことでした。

1)嫌なことから逃げたりしません

2)西宮を言い訳にしません


第6巻13ページ、第43話。

3)みんなの顔 ちゃんと見ます

4)みんなの声も ちゃんと聞きます


そして、約束とはちょっと違いますが、転落中の将也が硝子に対して思ったこと、伝えたかったこともいくつか描かれていました。

5)ごめんな西宮 今さら遅いけど

6)俺のこと どう思ってるか 聞いておけばよかった

7)ちなみに 俺はさ


これらを順にみていきたいと思います。

このなかで、現時点(第59話)ですでにクリアされたと評価できるものは、3)、4)、5)くらい、少し大目に見て1)が追加されるくらいでしょうか

5)については、「橋の上の奇跡」のときにはっきりと硝子に謝ることができました。


第54話、5ページ。

このときの将也はかっこよかったですね。

3)と4)については、文化祭回で、最初に学校に着いたときはヘタレてしまいましたが、その後映画メンバーと順に話し、その後クラスメートともちゃんと見てちゃんと聞いて、ネガティブな声からも逃げることなく、バッテンを外すことができました。


第57話、16〜17ページ。

このときの将也もかっこよかったですね。

そして1)については、上記3)、4)とも関連しますが、文化祭回で映画のあと「逃げ」てしまった後、しっかりみんなの前に出てバッテンを外すことができたこと、さらには第58話での島田との再会などを通じて、いちおう、自分にとって嫌なことがあっても逃げない気持ちを手に入れた、とは言えるんじゃないだろうか、と思います。

そうなると問題なのは、残っている2)、6)、7)ということになります。
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第59話、「将也の約束」はまだ達成なかば(3)

さて、第43話で将也が誓った「約束」の、第59話まででの達成の進捗をみると、このようになります。

1)嫌なことから逃げたりしません
2)西宮を言い訳にしません
3)みんなの顔 ちゃんと見ます
4)みんなの声も ちゃんと聞きます
5)ごめんな西宮 今さら遅いけど
6)俺のこと どう思ってるか 聞いておけばよかった
7)ちなみに 俺はさ


まだ残っているのは、2)、6)、7)ですね。
そして今回、第59話で問題となったのは、このうち2)であることは明らかです。

硝子を東京にひとりで行かせたくない、という想いは、硝子への恋愛感情、独占欲から出ていることは明らかなのに、将也は無意識のうちにその「正しい理由」を封印して、東京は怖いところだとか親が心配するとか心にもないことを言って、「硝子の選択が間違っている」という結論に強引に持っていこうとしました。

これは端的に、「西宮を言い訳にしている」状態だと言えます。
なぜなら、「自分の感情」こそが本当の原因なのに、「硝子の思慮の浅はかさ」が原因だと思い込んで、自分の主張を歪んだ形で正当化しているからです。

ですから、この第59話というのは「バッテン外し」(ちゃんと見る、ちゃんと聞く)における第56話のようなものだ、と思いたいところです。
つまり、将也が直面する課題が「提示」された(でも解決されていない)回なのだ、ということです。

そして、第56話で提示された「バッテン外し」の問題が、続く第57話で将也が課題を乗り越えて成功したように、今回、将也の「西宮を言い訳にして自分を正当化してしまう」という課題についても、それを乗り越え問題が解決される展開が、残る3話のなかで描かれることを予想し、また期待したいと思います。
「バッテン外し」のときは、硝子、永束、真柴をはじめとする映画メンバーが、「逃げてしまう将也」を追いかけて、「課題」の達成をサポートしてくれましたが、今回はたぶん全部自分ひとりでやらないといけません(もしかすると結絃、石田母が手伝ってくれそうな雰囲気もありますが、逆に「自分でやれ」と突き放している雰囲気もあります)。それだけ、難易度は上がっているでしょう。

そして、この課題をクリアするためには、将也は、まず「自分の本当の気持ち」に気づかなければならない、のでしょう。

硝子と橋で再会したときに、あれだけかっこよく硝子への「愛(と言ってしまっていい内容だったでしょう)」を語ることができた将也が、今回、自分のなかにある(恋愛感情ゆえの)独占欲のような感情に気づくことができなかったことは、ちょっと意外でした。
将也は、「みんなの声を聞く」ことに続いて「自分の率直な(汚いところもある)感情に向き合う」ことをやらなければならない段階にきているのだろうと思います。
そして、そんな自分の感情を受け止めることができて初めて、2)の「西宮を言い訳にしない」という課題がクリアされるのではないかと思います。
タグ:第43話 第59話
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第59話、「将也の約束」はまだ達成なかば(4)

さて、第43話で将也が誓った様々な約束のなかで、第59話で提示された「西宮を言い訳にしない」が、残り3話で解決されるという展開を予想しているわけですが、実際には3話丸ごと使われてしまうと困る部分がありますね。

なぜなら、

6)俺のこと どう思ってるか 聞いておけばよかった


第6巻17ページ、第43話。

7)ちなみに 俺はさ


第6巻17ページ、第43話。

この2つの「約束(というか、転落中に硝子とちゃんと話しておけばよかったと後悔した内容)」がまだクリアされていないからです。

要は、将也と硝子、お互いが相手への恋愛感情を率直に伝え合う、ということです。

個人的には、橋の上での「生きるのを手伝ってほしい」が、もはや告白どころかプロポーズに匹敵するくらいの破壊力のあるメッセージだったので、それを共有した2人にはもはや告白なんていうセレモニーは不要かと思っていました。
でも、第59話を見る限り、いまだ自分の気持ちに気づいていないかもしれない将也の天然ボケ(笑)を解消するためには、やはりちゃんと告白というイベントをこなす必要があるようです。

恐らくですが、残り3話は、将也が硝子の進路の希望を受け止めて、自分自身の進路もはっきりさせて、そのうえで硝子との間に「告白イベント」が発生する、といった流れになる(そしてそれ以外には大きなイベントは発生しない)のではないでしょうか。
そう考えると、配分のバランスとしては、

第60話:将也が引き続き硝子の進路についてどう受け止めればいいか模索する話。
そのなかで、自分の進路についても意識し始める。

第61話:将也が、自分の進路にも決着をつけ、同時に、硝子の進路についても「硝子を言い訳にせずに」しっかり話し合って、受け止める。
そして、「告白」があるとしたら、このタイミングでしょう。

第62話:大団円。将也と硝子の関係だけでなく、植野・佐原の進路や将也と植野の関係の決着、未来への展望などが描かれて完結。


といった感じになるのではないか、と予想します。
つまり、2)も6)も7)も、解決されるのは「第61話」になるのではないか、というのが、このエントリでのピンポイントな予想ということになります。

では、オーラスの第62話では何が描かれるのでしょうか?
このエントリの文脈で語るなら、それは、

将也がすべての約束を果たしたあとの世界

ではないか、と思います。

そして、第43話で約束したようなことがすべてできていなかった、第1巻で硝子と出会う直前の将也が描いていた絶望的な「未来予想図」と、第7巻ラストで描かれる、硝子と出会ったことによって描き変えられた「未来予想図」がきれいに対照されることになるのではないではないかと予想しています。
タグ:第59話 第43話
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2014年11月02日

第59話は第23話のリフレインになっている?(1)

第59話では、硝子の進路をめぐって、久しぶりに将也と硝子の言い争いが展開されましたが、ここで不思議なのが、言い争いに発展する前、進路のことを話すか話さないか迷っているときの硝子が、異様なまでに照れていることです。


第59話、8ページ。

これだけ見ると、まるで将也に告白しているかのようですが、この表情にはどういう意味があるのでしょうか?
私は、これは、素直にこう読むのがいいと思います。

これは、硝子にとっては事実上の告白に近かった。

と。

そう考えると、硝子のこの表情に非常に近い表情が見られたシーンを思い出します。


第3巻182ページ、第23話。

これですね。
あの「うきぃ回」、第23話で将也に告白している最中の表情にそっくりです。

やはり、硝子にとって「考えている進路を将也に伝えること」が、「将也に告白すること」に非常に近かった、ということを示しています。

硝子が進路を伝えることが、なぜ「告白」に非常に近いのか、という点についてはエントリを分けて考察したいと思いますが、簡単にいえば、

1)もともと理容師を目指すきっかけが小学校の頃の「憧れの理容師」との出会いだった
2)その「憧れの理容師」が石田母だということを硝子は第55話で知った
3)東京で修業して資格もとって一人前になりたい(いずれは石田母のもとで働けるかも)。


という思いが硝子の中にあるのだと想像します。
つまり、この夢のゴールが「将也」につながっているので、硝子にしてみれば、この話をするのは「逆プロポーズ」に近くなってしまい、ものすごく照れくさい、ということなんだろうと思います。

さて、このように、第59話の「進路の夢」が硝子にとって「恋愛感情」に近しいものとみると、1つ気づくことがあります。

それは、

第59話は第23話のリフレインになっている!

ということです。

第23話とは、あの3巻巻末の「うきぃ回」です。

次のエントリで、第59話と第23話、どのエピソードがどのエピソードと対応してリフレイン構造を形成しているのか、具体的に見ていきたいと思います。
タグ:第59話 第23話
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第59話は第23話のリフレインになっている?(2)

さて、第59話が第23話のリフレインになっているとするなら、それはどういう構造をしているといえるでしょうか?

そういう目で第23話の「構造、構成」を考えてみると、

1)硝子は、将也に初めて恋心を伝えようとした。
2)ところが、将也が痛恨の聞き取りミスをした。
3)そのミスもあって、硝子の伝えたかったことは半分も伝わらなかった。
4)もちろん、硝子の恋心も将也に届かなかった。
5)硝子は将也のリアクションに愕然とし、がっかりして帰った。


第3巻184ページ、第23話。

6)硝子の告白の背景には、佐原と植野との再会のドラマがあった。


といったように整理できると思います。

それと対照させて考えると、第59話はこんな風になります。

1)硝子は、将也に初めて進路の夢を伝えようとした。
2)ところが、将也が痛恨の手話の読み取りミスをした。
3)その聞き取りミスもあって、硝子の伝えたかったことは半分も伝わらなかった。
4)もちろん、硝子の進路の夢に込めたもう一つの気持ち(恋心?)も将也に届かなかった。
5)硝子は将也のリアクションに愕然とし、がっかりして帰った。


第59話、14ページ。

6)硝子の告白の背景には、佐原と植野の活躍、上京のドラマがあった。


実際、非常によく似ていることが分かります。
そして、前エントリでも見たとおり、硝子が見せている表情も、第23話と第59話で共通している部分があるわけですね。

さて、リフレイン構造には、「共通点」と「相違点」があって、この2つがうまく組み合わされることで「面白い物語」が生まれてくるわけですが、ここではまず、このリフレイン構造の「共通点」を見てみたいと思います。

第23話でも第59話でも、硝子は一大決心をして、将也にとても大切なことを伝えようとします。その「大切なこと」が、第23話では「将也への恋心」であり、第59話では「進路と将来の夢」でした。
ところが、その渾身のメッセージはいずれも将也にうまく伝わらず、硝子はがっかりしてその場を去っていきます。

そして、それぞれ少し時間を巻き戻して、その「告白」にいたった経緯を考えると、「佐原と植野」が、将也と硝子の行動に影響を与えたことがその原因になっている、という共通点もあります。

第23話の恋心の告白は、将也が硝子と「佐原」を再会させ、その流れで「植野」との再会というドラマが生まれ、植野・硝子・将也での修羅場となり、平穏な「いいお友達」だった将也と硝子との関係に動揺が生じたことが大きな原因となっています。

一方、第59話の進路の告白は、将也と硝子が「佐原と植野」の活躍を見、さらにコンクールの結果を見るために上京するのを見送ったことが、将也が「そういえば西宮は進路は?」と問いかけるきっかけになっていることを考えると、やはり佐原と植野がらみのイベントが、その後の流れを生む大きな原因になっていると言えると思います。

そして、最大の「共通点」は、言うまでもありませんが、

・どちらのエピソードも、将也と硝子のディスコミュニケーションを描いている。

ということ
です。
恋心とか将来の夢とか、本来はほのぼのとした前向きな話題に限って、残酷なディスコミュニケーションを描いてくるというのは、ある意味この作品全体を貫く作風ともいえるものですね。

そういえば、第23話では同じくディスコミュニケーションの象徴のような存在として、プレゼントのプランターピックという重要アイテムが登場しましたが、今回、第59話では、はそれにぴったり対応するような「アイテム」はなさそうですね。

ところで、今回のリフレイン構造で興味深いのは、実は上記の「共通点」よりも、「相違点」のほうにあります
非常に美しく構成された、今回のリフレイン構造の「相違点」について、次のエントリでじっくりと考察してみたいと思います。
タグ:第59話 第23話
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第59話は第23話のリフレインになっている?(3)

音楽のフーガとかでもそうですが、リフレイン構造には「共通点」と「相違点」があり、この2つがうまく組み合わされることによって美しい音楽が生まれます。

同じように、この第23話と第59話のリフレイン構造についても、ある1つの「相違点」がうまく盛り込まれていて、実にきれいな構成の妙を示していることに気づきます。

第23話で、硝子のメッセージがなぜ伝わらなかったのかといえば、「将也が聞き取りミスをしたから」でした。
なぜ聞き取りミスをしたのかといえば、「硝子が口話で伝えようとしたから」でした。
硝子は障害のために、口話がうまくありません。だから、硝子の口話を将也は聞き取れず、硝子の渾身のメッセージはうまく伝わりませんでした。

一方、第59話で、硝子のメッセージがなぜ伝わらなかったのかといえば、「将也が手話の読み取りミスをしたから」でした。
将也は硝子の「理容師になりたい」という手話を誤読して、「美容師になりたい」と読み取ってしまいました。「美容師」だと、石田母とは違う仕事になってしまいますから、将也も「じゃあうちと同じだ」という風に理解ができず、そこから誤解が広がっていってしまって会話が破綻してしまいました。
このように、なぜ読み取りミスをしたのかといえば、「将也が手話にそこまで習熟していなかったから」でした。
将也は手話については、独学で勉強したとは思えないくらい習熟していますが、それでも「第二言語」であってネイティブではありませんから、一定の確率で誤読が生じるでしょう
「理容師・美容師」というのは、どうやら将也にとってあまり関心のない領域のようですから、詳しく知らなかったようだ、ということが第59話の将也のリアクションで示されています(自宅の仕事ではありますが…)
そんなわけで、硝子の手話を将也は正しく読み取れず、硝子の渾身のメッセージは、やはりうまく伝わりませんでした。(まあ、今回「伝わらなかった」理由は、もちろんそれだけではありませんが…)

つまり、第23話と第59話のリフレイン構造では、数多くの「共通点」と同時に、

第23話では、硝子はメッセージを伝えるために「口話を」選択したが、「硝子の」障害のために将也に正しく伝わらなかった。


第3巻183ページ、第23話。

第59話では、硝子はメッセージを伝えるために「手話を」選択したが、「将也の」手話読解力が完璧ではないために将也に正しく伝わらなかった。

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第59話、9ページ。

という、非常に対照的で興味深い「相違点」が盛り込まれているわけです。

第23話も第59話も、恋愛とか進路といった前向きな話題を使って、将也と硝子のコミュニケーションの断絶を描くという意味では、見た目よりも残酷な構造が内包されていると思いますが、そのコミュニケーションの断絶が本質的に「硝子の障害ゆえに」発生している、ということを、第23話では「硝子の側の問題」として、第59話では「将也の側の問題」として描かれており、実に巧妙なリフレイン構造だと感嘆せずにはいられません。
タグ:第59話 第23話
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2014年11月03日

第59話、硝子はなぜ進路を語るのを照れていたのか?(1)

第59話後半の硝子と将也の会話で、将也から進路を聞かれた硝子は、顔を赤くして恥ずかしがり、照れながら「話したくない」と将也に告げます。
そして、それでも教えろと食い下がる将也に対して、顔をさらに真っ赤にして何度も逡巡たあと、ようやく「理容師」という手話が出てきました。
(なお、この硝子の手話を、将也は「美容師」と誤読してしまいますが、その点については別エントリで書いたので、ここは硝子視点で「理容師」のほうで考えていきます。)


第59話、8ページ。

でも、考えてみると不思議なことですよね。
「理容師になりたい」という夢を語ることが、そこまで恥ずかしいことだとは普通は考えられません

では、なぜ硝子は、理容師になりたいという夢を語ることを、そこまで恥ずかしがったのでしょうか?

まずは、これまでの経緯をふまえつつ、できるだけ前提を置かない形で素直に考えると、

1)硝子が目指している目標が、将也の母親の職業と同じだから。

というのが、硝子が照れている理由の一番の根っこにある、と考えられると思います。

第59話のやりとりで注目すべきなのは、「理容師」という単語を示すこと、それ自体を硝子がものすごく恥ずかしがったということです。
つまり、「理容師」という単語を出すだけで将也に伝わってしまうこと、そのことを硝子はまず恥ずかしがっていたと考えるべきだろうということです。
そうでなければ、理容師と伝えるときは平気で、理由を聞かれたら恥ずかしがる、といったように「恥ずかしがるタイミング」が違うはずです。

そう考えると、やはり石田母の職業との関係をまず考えるのがよさそうです。

硝子の夢が、自分の母親と同じ。
それを知った将也は、なぜ硝子が自分の母親と同じ仕事を目指しているのか、それは偶然なのかそうでないのかということに興味をもつだろうと硝子は考えるでしょう。
それを聞かれたら、硝子はさらに、小学校のときのヘアメイクイシダでの思い出から、理容師の憧れが芽生えて理容師を目指すようになったことを話すほかなくなります。


第55話、15ページ。

つまり、将也に対して自分の進路をはなすことは、そのまま「あなたのお母さんに憧れて理容師を目指している」ということを話すことになる、そのことを硝子はまず恥ずかしく思っていたんだ、ということが考えられるわけですね。

…ただ、それだけなのでしょうか?
硝子は、単に将也の母親に憧れて理容師を目指しているという話をするだけで、そこまで恥ずかしがるでしょうか?

たぶんそうではなく、

2)硝子の照れには「それ以上」のものが含まれていた。


と考えるほうがいいでしょう。
次のエントリで、その点について考えていきたいと思います。
タグ:第59話 第55話
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第59話、硝子はなぜ進路を語るのを照れていたのか?(2)

第59話で、硝子は将也に「理容師」という将来の夢を語ることを非常に恥ずかしがりましたが、それは単に「石田母に憧れて理髪師を目指している」という経緯を恥ずかしがっているだけとは思えません。

やはり、硝子にとっての進路の選択のなかに、表面的な内容以上の意味や思いが込められていた、と考えるほかないのではないでしょうか。

ここで考察にあたって考慮すべきポイントは、下記のようなことでしょう。

1)硝子は将也から「生きるのを手伝ってほしい」と言われて、それを心から承諾している。

2)将也の自宅が理髪店であり、石田母こそが自分が理容師を目指すきっかけになった憧れの理容師だったことを、硝子は将也昏睡中に気づき、将也退院後に石田宅を訪れて確信した。

3)石田母の経営するヘアメイクイシダは、石田母一人で切り盛りしている零細理髪店である。

4)硝子はいまの高校の理容科を卒業しただけではまだ理容師資格が取れていないようで、資格取得は卒業後、実務経験を積んだうえで取得という流れらしい。


第59話、10ページ。

5)硝子の理容科での成績は優秀で、硝子が尊敬する東京の先生から修業に来るよう誘われている。


1)と2)から導かれる「ロマンチックな」結論として、硝子が究極の夢として、ゆくゆくは将也と一緒になって、ヘアメイクイシダの跡継ぎになって頑張りたい、という気持ちを持っているのは自然なことだと思います。
(もちろんそれは、「そうなれたらいいなあ」と漠然と夢見ているということであって、いまの時点でそれを「自分の側が決める進路」として硝子が考えていたり「主張して」いるということではありません。)

ただ、ここで問題になってくるのが、3)と4)です。
硝子はまだ理容師資格を持っておらず、理容師として石田母を手伝うことができません。
さらに、石田母ひとりで回っている程度の規模のヘアメイクイシダにただ入ってきても、端的に「余剰労働力」になってしまうのが現実でしょう。リアルの世界でも、理髪店は1000円カットなどに市場を侵食され厳しい状況です。
さらに硝子は、そういった「厳しい状況」のなかでは、自身の障害が問題になってくる恐れがあるという自覚もあるかもしれません。硝子は、自分が(憧れの存在でもある)石田母にとっての足手まといになってしまうような事態だけは、絶対に避けたいと考えるに違いありません

硝子は、「夢」を実現するために、まだまだやらなければならないことがあるという自覚があるのではないかと思います。
タグ:第59話
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第59話、硝子はなぜ進路を語るのを照れていたのか?(3)

硝子は、自身が目指していた「理髪師」という将来の夢と、いまや誰よりも大切な存在となった将也の「生きるのを手伝う」という役割が交わる究極の未来の夢として、「理髪師として一人前になって、将也と互いに支え合って生きていく」ということを考えている可能性が高いと思います。

ただ、現時点での硝子を冷徹に評価するならば、その「夢」にたどり着くには、「一人前の理髪師になる」という前半の部分について、まだまだ頑張らなければならない段階に留まっていると言わざるを得ません。

その「至らない部分」を具体的に言うなら、

a)硝子はまだ理容師の資格を取れていない。

b)硝子には障害があり、お客との意思疎通等でハンディキャップがある。

c)ヘアメイクイシダは現状では理容師は1人いれば十分で、付加価値がつけられなければ硝子がもう1人追加で入る余地がない。


といった課題をクリアする必要があるわけです。

そして、これらの問題をクリアするためのカギとなっていそうなのが、先ほど並べたポイントの5番目である、

1)硝子は将也から「生きるのを手伝ってほしい」と言われて、それを心から承諾している。
2)将也の自宅が理髪店であり、石田母こそが自分が理容師を目指すきっかけになった憧れの理容師だったことを、硝子は将也昏睡中に気づき、将也退院後に石田宅を訪れて確信した。
3)石田母の経営するヘアメイクイシダは、石田母一人で切り盛りしている零細理髪店である。
4)硝子はいまの高校の理容科を卒業しただけではまだ理容師資格が取れていないようで、資格取得は卒業後、実務経験を積んだうえで取得という流れらしい。
5)硝子の理容科での成績は優秀で、硝子が尊敬する東京の先生から修業に来るよう誘われている。


ということになります。
これによって、

a)理容師の資格は取れます。
b)先生も聴覚障害者だということで、障害を持ちつつお店で働くためのノウハウを得ることができます。
c)特に優れた技術を身につけることで付加価値を生み、それによってお客様の数を増やしてヘアメイクイシダの「2人目の理容師」としての居場所を作り出せるかもしれません。


という風に、すべての課題の解決が見えてくるわけですね。

恐らく硝子は、このあたりまで考えて、「上京して理容師としての腕を磨く」ことを選ぼうとしているのだと思います。

だから、硝子の頭の中では、「将来、理容師になる」ということは「将来、将也と一緒になる」ということに限りなく近く、それを将也に告げることはほとんどプロポーズするようなものだと感じているのではないかと思います。

だからこそそれを語るときに真っ赤になったのでしょうし、それを頭ごなしに否定されて、ショックで怒って帰ってしまったのだと思います。


第59話、14ページ。
タグ:第59話
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第59話、硝子の手話を読み解く(未完成版)

さて、第59話では、第54話に続き、硝子の重要なメッセージが「手話のみ」で示されて、何を言っているのか手話を解読しないと分からない、という展開となっています。

そこで今回も、手話辞典をむりやり逆引きしながら(要は試行錯誤)、分かる範囲で調べてみました。

2ページ:お疲れさま〜!
(5コマめ「苦労」)

6ページ:うらやましいなあ。
(1コマめ「うらやましい」)


第59話、6ページ。

https://cgi2.nhk.or.jp/signlanguage/enquete.cgi?dno=675
うらやましい

9ページ:理容師になりたい。
(1コマめ「理容師」、ただし将也は「美容師」と誤読してます)

11ページ:どっちにしようか、迷ってます。
(2コマめは「分ける」?、3コマめは不明、4コマめは接尾辞で「です」。3コマめは両手がハサミなので、地元と東京、どちらで理容師を目指すか迷っているという意味で強引にとらえてみました。)


第59話、11ページ。

https://cgi2.nhk.or.jp/signlanguage/enquete.cgi?dno=7374
分ける

14ページ:もう、うっとうしいなあ! だから困ってるのに!
(3コマめ「わずらわしい」+「関係」または「だから」「だから」+「わずらわしい」)

※第62話と同時掲載された作者インタビューで「正解」が出ましたので修正しています。(11/19)


第59話、14ページ。

https://cgi2.nhk.or.jp/signlanguage/enquete.cgi?dno=1263
わずらわしい

今回は、11ページの3コマ連続の手話が猛烈に難しいです。
ここで「東京に行きたい」と言っているのか「どちらにするか迷っている(必ずしも東京に行きたいとは言ってない)のかで、だいぶニュアンスが違うと思うのですが、まだはっきりとは分からないですね(今回は「迷ってる」で訳していますが…)

あと、佐原が4ページで、将也が6ページで硝子の「うらやましい」のあとでやっている、両手をそれぞれL字型にする手話は「東京」ですね。

https://cgi2.nhk.or.jp/signlanguage/enquete.cgi?dno=6597
東京
タグ:第59話
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2014年11月04日

第59話、すでに距離感に差が出た映画メンバー

第59話は、第58話での「永束の映画」に続き、メンバーの将来の進路にもつながる「お披露目」の場面として、佐原がモデルとして登場するファッションショーが描かれました。
別に行った考察によると、このショーは第58話の映画選考会の1週間後の日曜日だと思われます。

そして今回もメンバーが集まって…と思ったら、すでに第58話とは様相が違います。


第59話、2ページ。

永束、真柴、川井の姿がありません。

映画という一大イベントが終わり、映画メンバーは「映画を撮るために集まる」という大義名分を失いました。
そして、後続のイベントとしての太陽女子のファッションショーには、上記の3人はやってこなかったことになります。

話の流れをみると、今回のイベントに「部外者」を呼んだのは佐原のようですから(植野は聞かされていなかった模様)、要は「佐原が呼ばなかった」ということのようです。
つまり、佐原からみて、硝子・結絃、そして将也という元々の「橋メンバー」と、それ以外の「映画だけ」メンバーとのあいだにはやはり距離感にかなりの差があるんだということです(今回、硝子と結絃だけでなく将也が呼ばれているということで、佐原は必ずしも男性を呼ぶ対象から除外したということでもないようです)。

そして次の火曜日、結局「橋」に戻ってきたのは、将也、硝子、結絃という、本当に最初のころのコアコアメンバーだけになってしまいました(佐原と植野はコンテストの結果を見るために上京中でした)。


第59話、6ページ。

みんな、やることがあるんですよね。

ちょっと切ないですが、高校のころの友人関係ってまあこんなものかな、とも思います。
学校の垣根を超えて集まったメンバーが、特定のことに夢中になって何かを完成させる、そこで強い絆ができあがったように見えるものの、目標を達成した後は潮が引くように距離ができてきて、「普通の友達」に戻っていく、そんなものなのかもしれません。

特に今回の映画メンバーは、結絃を除けばみな高3のあわただしい時期にあって、もう少ししたら進路もばらばらにみんな巣立っていきます(そして結絃も中3です)。
そんなごくわずかな期間に生まれた絆。
それは実際、目標(映画制作)達成とともにつながりが薄くなっていき、メンバーの高校卒業によってほとんど消えてしまうような儚いものかもしれませんが、それでも(凡庸な言い方ですが)青春の1ページとしてみんなの心に刻まれ、また、「たまには集まって昔話をする」といった、「細く長く続いていくつながり」に変わって、続いていくんじゃないかと思います。

それに、この「つながり」があったおかげで、メンバー全員が少しずつ成長し、そしてその成長は、その後の人生のすべてにポジティブな影響を与え続けるであろうことも見逃せないですね。

いろいろな偶然の積み重ねによって始まり、そしてメンバーが集まった映画制作が、メンバー全員にとって価値のある経験になっていたらいいな、と思います。
タグ:第59話
posted by sora at 07:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第7巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする