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2014年08月27日

第50話、植野の「過去のトラウマ」はなんだったのか?

第50話は植野視点回でしたが、これまで、6巻のそれぞれの視点回では各キャラをしばる「過去のトラウマ」がそれぞれ明かされてきました。

結絃:硝子の「死にたい」の手話
永束:友達がいないことへのコンプレックス
佐原:いつも逃げてしまう自分の弱さ
川井:優等生的生き方を「気持ち悪い」と否定されること
真柴:「変わっている」と言われることへの恐れ


そして、植野回でもやはり、植野を過去にしばりつけるトラウマが示されました。それは、

肝心なときに行動できず、見ているだけの自分

でした。

それは端的には、将也が島田からいじめを受けて孤立したのを守ることもできず、逆に消極的にいじめに参加までさせられたこと、中学になっても卒業までまともに声もかけられなかったことでしょう。
対照的に、自分も参加させられてしまった机の落書きを消して「みずから行動して将也を守る」ことを体現している硝子に激しく嫉妬し、転校させるまでいじめぬいたりもしたわけですが、その硝子への憎しみは、実はふがいない自分自身への憎しみの裏返しでもあったわけです。

そんなトラウマをかかえた植野は、高校編で将也と再開して以降は、必死に「行動しようと」します。
将也への告白を試みたり、かつての「はじめての共通体験」だった「硝子いじり」で将也の気を引こうとしたり、自宅におしかけて謝罪しようとしたり、遊園地で島田と引き合わせたり、永束の映画を乗っ取って「和解の場」にしようとしたり、さらに橋事件のときは、はっきり「見てるだけはもう嫌だから」と宣言してメンバーの仲の仲介を買って出たり。
それらがすべて失敗し、また「見てるだけ」に戻った(電話をかけるだけであきらめていた)ら、自殺しようとした硝子を将也が命がけで助け、そのせいで将也が大ケガをするという悪夢のような展開に。

そして、今回、また植野は病室にたてこもるという「行動」を選択したつもりだったわけですが、実はこれは「行動」であるようでいて、「見てるだけ」のほうだった、ということに、病室から追い払ってザマーミロと思っていたはずの硝子が実はまたもや「自分ができなかった行動」をしていて、植野がずっと目指していた人間関係の修復をどんどん進めていることによって気づかされます。
植野にしてみれば、運命に逆らっているようで、実は運命にもてあそばれているという、なんとも皮肉な展開です。

最後に、植野が島田との連絡を硝子に託すシーンを、この「トラウマ」という観点から、どうとらえるべきでしょうか。
「石田は西宮を助けた」、そして「島田達は石田を助けた」、そして「硝子は関係修復に走り回っている」、そんななかで結局自分は結果的に「見てるだけ」になってしまっている…。
ここで植野が「島田と橋メンバーをつなぐ」行動をとれば、その「行動する側」に入れたのに、やはりそれはできずに、硝子にその役割(=行動する)を託してしまったわけです。

私にはこの行動が、植野が、自分にかけられた「自分は結局はW見てるだけWの側でしか生きられないのかも」という、過去から続くトラウマ、「クソくらえ」と吐き捨てようとしていた「インガオーホー」を改めて直視し、それらが簡単に変われないもの、捨てられないものであることを悟り、それをとりあえずは受け入れて生きていくことを選択した、そういう心情を表しているように見えます。

それが、話末煽りの「誰もが変わらない。変われない。変わりたくない。それでも人は、前に進むことができる。」ということばにつながっているのではないでしょうか。
過去のトラウマは、「克服する」という選択肢だけがあるのではなく、「そんなに簡単に変われないこともあるんだ」と受け入れ、それでもそのままで前に進んでいく、そんな選択肢もある、ということを、第50話のラストシーンは表しているように思われます。
タグ:第50話
posted by sora at 08:57 | Comment(7) | TrackBack(0) | 第6巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

(コネタ)第50話、CDプレイヤーまで猫

第50話を読んで、偶然みつけてとても面白いなと思ったので、「火曜日」のコネタ集エントリを待たずに書いておこうと思います。

第50話、1ページの2コマ目にCDプレイヤーが登場します。
前話で石田母が託した音楽CDをかけるためのものだと思いますが、よくみると、

CDプレイヤーが猫の顔をしています(笑)。


第50話、1ページ。

と、いうことは、これはわざわざ植野が持ち込んだものということですね。

着信音もミャミャミャーオですし、どんだけ猫が好きなんだと(笑)。

でも、CDプレイヤーが持ち込み、となると、植野はある意味「特に躊躇なく」石田母から託されたCDをかけているということになりますから、仮にこのCDが島田との「因縁のCD」だったとして、そのことを植野は知らないということになりそうですね。

コネタではありますが、実は(CDプレイヤーの顔が猫になっている、ということが)微妙に伏線回収もしているという。(^^)
なかなか奥が深いです。
タグ:第50話
posted by sora at 08:22 | Comment(2) | TrackBack(0) | 第6巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第50話、明らかに矛盾に見える点と、矛盾を解く解釈とは?

さて、聲の形では、これまでもいくつか、矛盾と思われる点が出てきました。
ほとんどの矛盾っぽい点は、あとでしっかり回収されていて(その中の最たるものが、今回明らかになった「なぜ植野は事前に転落の詳細を知っていたのか?」問題でしょう)、作者の構成力の高さを示しているのですが、今回はどうでしょうか。

その矛盾(っぽい)点とは、

筆談ノートがなくなった後に、筆談ノートに書き込んでいる

ということです。


第50話、7ページ。

小学校時代の筆談ノートについては、以前イベントカレンダーでも考察しましたが、ポイントだけまとめるとこういう感じです。

5月頃:将也が「オンチなんだからうたってるフリしとけよ!」と書き込む
6〜9月:将也の西宮いじめ、将也が筆談ノートにウンチの落書き
9月13日:将也が硝子の耳をちぎる、硝子待ち伏せで「友達になろう」サイン、筆談ノート池ポチャ、帰宅後結絃に「死にたい」サイン
10月下旬:学級裁判、将也が池に落とされる、池に沈んだ筆談ノート発見、回収
10〜11月:将也へのいじめ、同時に硝子いじめが継続している描写あり
11月下旬:将也が硝子が机を拭いているのを発見、硝子と将也がとっくみあいのけんか
12月下旬:硝子、転校して消える


いずれにしてもポイントは、

1)筆談ノート池ポチャは、学級裁判よりもかなり前。(その間に補聴器をたくさん壊している)
2)硝子は筆談ノートを拾わなかったので、池ポチャ事件以降、硝子は筆談ノートを持っていない。
3)学級裁判の日に、筆談ノートは将也によって回収されてしまう。
4)将也の机に落書きされるようになったのは、学級裁判の日以降
5)植野が硝子の机消しを見かけるのは、4)以降しかありえない
6)植野の回想にある「筆談ノートへの悪口」は、5)以降


ということです。

ですから、硝子の机消しを見かけたあとで、硝子いじめをエスカレートさせた植野の行動の描写のなかに、「筆談ノートへの悪口」が含まれているのは、どうしても矛盾しているように見えるのです。

さらにいうなら、植野が「将也と楽しく硝子いじめをしていた頃」の回想として「補聴器を埋める」が登場しますが、実はこの時点ですでに1)よりも後なので、硝子の筆談ノートは既に池の中です。

時系列的に、明らかにおかしいように見えます。

もちろん、これが矛盾している、と考えられるのは、上記1)から6)が正しい、という前提をおくからです。
逆にいうと、この「正しい」という前提を一部崩せば、今回の描写の矛盾を解消することも可能です。

というわけで、以下で、矛盾が解消されるパターンをいくつか考えておきます。

上記1)から6)のうち、1)、3)、5)は間違いようがないので、あとは2)、4)、6)のいずれかが正しくない、という想定となります。

2)が間違い:硝子は「あの筆談ノート」を拾わなかったが、代わりに別の筆談ノートを持ってきていた。植野が「机消し目撃」以降落書きしていたのは、その新しい筆談ノート。

4)が間違い:実は将也の机への悪口は、学級裁判どころか筆談ノート池ポチャ事件より前から始まっていた。植野が硝子の机消しを目撃したのは、筆談ノート池ポチャ事件より前。

6)が間違い:植野の回想のうち、「筆談ノートへの落書き」だけは、池ポチャ事件より前にやっていたこと。昔のことなので記憶が混乱して、植野は机消し以降にやったいじめだったと勘違いしてしまった。


このうち、4)は相当無理があります。
先ほども書いたとおり、「補聴器埋めいじめ」の時点ですでに筆談ノートは池の中なので、今度は第50話の時系列が崩壊してしまいます。

あと、残るは2)と6)ですが、6)はさすがにちょっと物語としてありえないでしょう。わざわざ矛盾を生むような描写を「植野の記憶違い」という設定で盛り込む、というのはちょっと考えられません。

となると、残る可能性は2)ということになります。
実際、今回植野が悪口を書いている筆談ノートは水に浸かった形跡がなく、「ブス」の字もくっきりはっきりしています。
それに対して、将也が拾った筆談ノートの「ブス」は水に浸かってヨレヨレ(しかも繰り返しますが、そっちのほうが時系列的にずっと前)ですから、これらは別のもの、と考えることは可能です。
また、将也が拾った筆談ノートは、悪口も書かれている一方で硝子の書き込みもたくさんあって一応「やりとり」の形式になっていますが、今回登場したノートは真っ白で、そういう使い方すらされなくなったあとのもの、という風に見えます。

ということで、ここでは矛盾を解消するために、植野が第50話で書き込んでいる筆談ノートは、池ポチャのあとに別途用意された新しいもの、という仮説を採用しておきたいと思います。

でも、そう考えると、硝子の水門小時代の筆談ノートには、将也が拾った池ポチャ事件のものと、植野の悪口が書き込まれまくっている別の筆談ノート、2冊があったことになります。
そして、当然ですが、硝子の手元にあった「2冊め」は、忌まわしいいじめの象徴として転校後にすぐに捨てられたのでしょう。
(そして、「1冊目」に書き込まれた悪口についても将也は心当たりがなさそうなリアクションでしたから、将也は「筆談ノートへの悪口」については無罪だった、ということになります(ウンチは描いてましたが)。

※ちなみに、第1巻では、ノートではなく教科書に悪口が書かれていて、それならなんの矛盾もないのですが…。
タグ:第50話
posted by sora at 08:11 | Comment(5) | TrackBack(0) | 第6巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第50話、やはり最初にここには触れずには(笑)

第50話、前話のサブタイ煽りどおりの植野回でした。(これ、実は史上初めてで、とても珍しいことです。)

それはいいとして。

あちゃー、籠城して何やってるんだと言われていた植野ですが、しっかりやらかしてました


第50話、8ページ。

いつものノリで読み始めたら、いきなりびっくりですね。
各自視点回として、川井のとき以上の暴走っぷりが面白いです。
そしてある意味、「将也と硝子の純愛」みたいなものを求めて読んできた読者層を置いてきぼりで、大今先生自身も大暴走(笑)。

まあ、そういう展開もありうるかな、とは思っていましたが、ここまであからさまに(しかも回想シーンから戻ってくるたびに)描写するというのは、大今先生がこのシーンで読者にさまざまな「強い反応」を引き起こそうとはっきり意図してやっていることを感じます。

実際、この場面をどう受け止めるのがいいのか、個人的にもちょっと迷っています。

例えば、植野とその行為を「悪役」というメタ視点でとらえるのは分かりやすいかもしれませんが、それではこぼれ落ちるものがたくさんある気がします。

また、シンプルに「それほどまでに将也のことが好きなんだ」という風に捕らえるのも、微妙に的を外している気がするのです。
なぜなら、すぐ後に出てきているせりふが硝子への「ザマーみろ」だったりする点をみると、植野が「将也への好意」だと信じているものの何割かは、実は「硝子への嫉妬」で構成されている気もするからです。

まあ、少し現実的に考えると、将也は長く寝込んだままだから、お互い衛生的にまずそうだし、将也の口は臭いだろうな、みたいな冷静な想像もしてしまいますが(笑)、それを言い出したら何日も籠城してるというシチュエーションからして現実離れしているので、あまりそういう方面の細かいところは気にしないのがいいのかなと思います。

でも、こうなると、石田母の、


第49話、4ページ。

「好きにしなさい」のせりふは、まさに将也の小学校時代の石田姉への対応を彷彿とさせますし、かつての「デートごっこ」のときの結絃のこのせりふ、


第5巻140ページ、第40話。

結絃「そろそろ チューくらいはしていいんだぞ」

が、こんな風に回収されて、微妙に哀愁が漂っていますね。

まあ、なんというか、誰もが運命に翻弄されて、いくらあがいても抵抗しきれない、そういう業のようなものがずっと各キャラクターにまとわりついて離れないまんがだなあ、とつくづく思います。

今回、まとまりのないエントリになっていますが、第50話の冒頭での驚きを、とりあえずそのままエントリにしてみることにしました(笑)。

(追加でいうと、この最初のページ、衝撃度は高いですが、物語としての情報量はあまりないので、これ以降のエントリは、あえてこのシーンについてはあまり触れずに、今回、大量に回収された伏線等の話題について書きたいと思っています。)
posted by sora at 07:30 | Comment(17) | TrackBack(0) | 第6巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする